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透析患者に使える糖尿病用薬は?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約2分27秒で読めます.
6,053 ビュー. カテゴリ:腎不全に適した糖尿病薬
糖尿病患者は徐々に腎機能が落ちていく。
しかし、腎機能が落ちて、重篤な腎機能低下状態、透析が必要な状態になると、今まで使えていた糖尿病治療薬の中には使えない、禁忌とされる薬が出てくる。その点を注意しなければならない。
透析導入の原疾患の第一位は糖尿病性腎症です。
早期腎症期(CKDステージG1、G2に相当)では厳格な血糖コントロールによって糖尿病性腎症の発症・進展を防止できるので、HbA1c値6.9未満を目標にします。
一方、顕性腎症期後期以降(CKDステージG3以降に相当)は、腎機能が低下しているため、薬物治療による低血糖の危険性が高まります。
腎不全期(CKDステージG4,G5に相当)ではインスリン治療が原則となりますが、インスリンの半減期が長くなるため、低血糖に注意しなければなりません。
SU系:腎排池型の薬剤は、低血糖の危険性が高くなります。ステージG3で慎重投与、G4以降は禁忌です。
グリニド系:ナテグリニド(スターシス、ファスティック)はG4以降で禁忌ですが、レパグリニド(シュアポスト)は肝排泄型なので、すべてのステージで使用可能です。
ビグアナイド系:乳酸アシドーシス発症の危険が高くなります。G3以降は禁忌です。
α-グルコシダーゼ阻害薬:体内にほとんど吸収されないので、すべてのステージで使用可能です。だたし、ミグリトール(セイブル)は未変化体のまま吸収されるので、G4以降で慎重投与です。
DPP-4阻害薬:ビルダグリプチン(エクア)、アログリプチン(ネシーナ)は腎機能に応じて減量します。シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)は、G4以降で禁忌です。
GLP-1受容体作動薬:リラグルチド(ビクトーザ)はすべてのステージで使用可能ですが、エキセナチド(バイエッタ、ビデュリオン)は、G4以降で禁忌です。
分類 | 商品名 | 一般名(‐ステム) | |
SU剤 | SU剤(第一世代) | デアメリンS | グリクロピラミド |
ジメリン | アセトヘキサミド | ||
SU剤(第二世代) | オイグルコン/ダオニール | グリベンクラミド | |
グリミクロン/グリミクロンHA | グリクラジド | ||
SU剤(第三世代) | アマリール | グリメピリド | |
速効型インスリン分泌促進薬 | スターシス/ファスティック | ナテグリニド(‐グリニド) | |
シュアポスト | レパグリニド(‐グリニド) | ||
グルファスト | ミチグリニドカルシウム水和物(‐グリニド) | ||
ビグアナイド系 | グリコラン | メトホルミン塩酸塩 | |
ジベトス | ブホルミン塩酸塩 | ||
メトグルコ | メトホルミン塩酸塩 | ||
テトラヒドロトリアジン系 | ツイミーグ | イメグリミン | |
αグルコシダーゼ阻害薬 | グルコバイ | アカルボース | |
ベイスン | ボグリボース | ||
セイブル | ミグリトール | ||
チアゾリジン誘導体 | アクトス | ピオグリタゾン塩酸塩 | |
インクレチン関連薬 | DPP4阻害薬 | グラクティブ/ジャヌビア | シタグリプチンリン酸塩水和物(‐グリプチン) |
エクア | ビルダグリプチン(‐グリプチン) | ||
ネシーナ | アログリプチン安息香酸塩(‐グリプチン) | ||
トラゼンタ | リナグリプチン(‐グリプチン) | ||
テネリア | テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(‐グリプチン) | ||
スイニー | アナグリプチン(‐グリプチン) | ||
オングリザ | サキサグリプチン水和物(‐グリプチン) | ||
ザファテック | トレラグリプチンコハク酸塩(‐グリプチン) | ||
マリゼブ | オマリグリプチン(‐グリプチン) | ||
チアゾリジン誘導体+ビグアナイド系 | メタクト | ピオグリタゾン塩酸塩+メトホルミン塩酸塩 | |
チアゾリジン誘導体+SU剤 | ソニアス | ピオグリタゾン塩酸塩+グリメピリド | |
チアゾリジン誘導体+DPP4阻害薬 | リオベル | ピオグリタゾン塩酸塩+アログリプチン安息香酸塩 | |
速効型インスリン分泌促進薬+αGI | グルベス | ミチグリニドカルシウム水和物(‐グリニド)+ボグリボース | |
DPP4阻害薬+ビグアナイド系 | エクメット | ビルダグリプチン(‐グリプチン)+メトホルミン塩酸塩 | |
イニシンク | アログリプチン安息香酸塩(‐グリプチン)+メトホルミン塩酸塩 | ||
SGLT2阻害薬 | スーグラ | イプラグリフロジンL-プロリン(‐フロジン) | |
フォシーガ | ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(‐フロジン) | ||
ルセフィ | ルセオグリフロジン水和物(‐フロジン) | ||
デベルザ/アプルウェイ | トホグリフロジン水和物(‐フロジン) | ||
カナグル | カナグリフロジン水和物(‐フロジン) | ||
ジャディアンス | エンパグリフロジン(‐フロジン) | ||
DPP4阻害薬+SGLT2阻害薬 | カナリア | テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(‐グリプチン)+カナグリフロジン水和物(‐フロジン) |
糖尿病性腎症で血糖値が下がる
糖尿病性腎症で腎不全に至ると、一時的に血糖値が下がる現象が見られるケースが少なくない。
インスリンの約40%は腎臓で分解されるため、腎不全ではインスリンの代謝や排泄が低下し、インスリンの血糖降下効果が長く続くようになるからである。
インスリン製剤が一時的に不要になることもある。
一方で、腎不全は代謝性アシドーシスや尿毒症性物質の蓄積など、インスリン抵抗性を増大させて血糖値を上昇させる要因も抱える。
さらに、糖尿病性腎症患者では神経障害も進行しており、消化管運動に異常が生じるため、食後の血糖値が一定しない。
加えて透析を始めると、透析液に血中のブドウ糖が拡散したり、血中のインスリンが透析膜に吸着されるなどの要因から、透析日と非透析日で血糖の日内変動パターンが変わる。
こうした理由から、糖尿病の透析患者では血糖値の変動が予測しづらい。
腎不全とSU剤
グリベンクラミドは添付文書の禁忌項目に「重篤な肝機能障害又は腎機能障害のある患者[低血糖を起こすおそれがある。]」と記載されている。
グリベンクラミドは肝臓で主な4-ハイドロキシグリベンクラミド(3-OH Glib)に代謝され、これらの活性代謝物も血糖降下作用をもつために、腎機能低下時では腎排泄率が低下し蓄積する。蓄積による遅延性の低血糖で死亡する危険性がある。
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