2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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透析患者に使える糖尿病用薬は?

腎不全に適した糖尿病薬

糖尿病患者は徐々に腎機能が落ちていく。
しかし、腎機能が落ちて、重篤な腎機能低下状態、透析が必要な状態になると、今まで使えていた糖尿病治療薬の中には使えない、禁忌とされる薬が出てくる。その点を注意しなければならない。

透析導入の原疾患の第一位は糖尿病性腎症です。
早期腎症期(CKDステージG1、G2に相当)では厳格な血糖コントロールによって糖尿病性腎症の発症・進展を防止できるので、HbA1c値6.9未満を目標にします。

一方、顕性腎症期後期以降(CKDステージG3以降に相当)は、腎機能が低下しているため、薬物治療による低血糖の危険性が高まります。
腎不全期(CKDステージG4,G5に相当)ではインスリン治療が原則となりますが、インスリンの半減期が長くなるため、低血糖に注意しなければなりません。

SU系:腎排池型の薬剤は、低血糖の危険性が高くなります。ステージG3で慎重投与、G4以降は禁忌です。

グリニド系:ナテグリニド(スターシス、ファスティック)はG4以降で禁忌ですが、レパグリニド(シュアポスト)は肝排泄型なので、すべてのステージで使用可能です。

ビグアナイド系:乳酸アシドーシス発症の危険が高くなります。G3以降は禁忌です。

α-グルコシダーゼ阻害薬:体内にほとんど吸収されないので、すべてのステージで使用可能です。だたし、ミグリトール(セイブル)は未変化体のまま吸収されるので、G4以降で慎重投与です。

DPP-4阻害薬:ビルダグリプチン(エクア)、アログリプチン(ネシーナ)は腎機能に応じて減量します。シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)は、G4以降で禁忌です。

GLP-1受容体作動薬:リラグルチド(ビクトーザ)はすべてのステージで使用可能ですが、エキセナチド(バイエッタ、ビデュリオン)は、G4以降で禁忌です。

分類商品名一般名(‐ステム)
SU剤SU剤(第一世代)デアメリンSグリクロピラミド
ジメリンアセトヘキサミド
SU剤(第二世代)オイグルコン/ダオニールグリベンクラミド
グリミクロン/グリミクロンHAグリクラジド
SU剤(第三世代)アマリールグリメピリド
速効型インスリン分泌促進薬スターシス/ファスティックナテグリニド(‐グリニド)
シュアポストレパグリニド(‐グリニド)
グルファストミチグリニドカルシウム水和物(‐グリニド)
ビグアナイド系グリコランメトホルミン塩酸塩
ジベトスブホルミン塩酸塩
メトグルコメトホルミン塩酸塩
テトラヒドロトリアジン系ツイミーグイメグリミン
αグルコシダーゼ阻害薬グルコバイアカルボース
ベイスンボグリボース
セイブルミグリトール
チアゾリジン誘導体アクトスピオグリタゾン塩酸塩
インクレチン関連薬DPP4阻害薬グラクティブ/ジャヌビアシタグリプチンリン酸塩水和物(‐グリプチン)
エクアビルダグリプチン(‐グリプチン)
ネシーナアログリプチン安息香酸塩(‐グリプチン)
トラゼンタリナグリプチン(‐グリプチン)
テネリアテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(‐グリプチン)
スイニーアナグリプチン(‐グリプチン)
オングリザサキサグリプチン水和物(‐グリプチン)
ザファテックトレラグリプチンコハク酸塩(‐グリプチン)
マリゼブオマリグリプチン(‐グリプチン)
チアゾリジン誘導体+ビグアナイド系メタクトピオグリタゾン塩酸塩+メトホルミン塩酸塩
チアゾリジン誘導体+SU剤ソニアスピオグリタゾン塩酸塩+グリメピリド
チアゾリジン誘導体+DPP4阻害薬リオベルピオグリタゾン塩酸塩+アログリプチン安息香酸塩
速効型インスリン分泌促進薬+αGIグルベスミチグリニドカルシウム水和物(‐グリニド)+ボグリボース
DPP4阻害薬+ビグアナイド系エクメットビルダグリプチン(‐グリプチン)+メトホルミン塩酸塩
イニシンクアログリプチン安息香酸塩(‐グリプチン)+メトホルミン塩酸塩
SGLT2阻害薬スーグライプラグリフロジンL-プロリン(‐フロジン)
フォシーガダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(‐フロジン)
ルセフィルセオグリフロジン水和物(‐フロジン)
デベルザ/アプルウェイトホグリフロジン水和物(‐フロジン)
カナグルカナグリフロジン水和物(‐フロジン)
ジャディアンスエンパグリフロジン(‐フロジン)
DPP4阻害薬+SGLT2阻害薬カナリアテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(‐グリプチン)+カナグリフロジン水和物(‐フロジン)

糖尿病性腎症で血糖値が下がる

糖尿病性腎症で腎不全に至ると、一時的に血糖値が下がる現象が見られるケースが少なくない。

インスリンの約40%は腎臓で分解されるため、腎不全ではインスリンの代謝や排泄が低下し、インスリンの血糖降下効果が長く続くようになるからである。
インスリン製剤が一時的に不要になることもある。

一方で、腎不全は代謝性アシドーシスや尿毒症性物質の蓄積など、インスリン抵抗性を増大させて血糖値を上昇させる要因も抱える。
さらに、糖尿病性腎症患者では神経障害も進行しており、消化管運動に異常が生じるため、食後の血糖値が一定しない。

加えて透析を始めると、透析液に血中のブドウ糖が拡散したり、血中のインスリンが透析膜に吸着されるなどの要因から、透析日と非透析日で血糖の日内変動パターンが変わる。
こうした理由から、糖尿病の透析患者では血糖値の変動が予測しづらい。

腎不全とSU剤

グリベンクラミドは添付文書の禁忌項目に「重篤な肝機能障害又は腎機能障害のある患者[低血糖を起こすおそれがある。]」と記載されている。
グリベンクラミドは肝臓で主な4-ハイドロキシグリベンクラミド(3-OH Glib)に代謝され、これらの活性代謝物も血糖降下作用をもつために、腎機能低下時では腎排泄率が低下し蓄積する。蓄積による遅延性の低血糖で死亡する危険性がある。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
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