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炭カル錠は甲状腺機能低下症に禁忌?
公開. 更新. 投稿者:甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症.この記事は約4分32秒で読めます.
7,589 ビュー. カテゴリ:つくしAM散とチラーヂンは併用禁忌?
チラーヂンが処方されている患者に、つくしAM散が処方されていた場合は注意が必要です。
つくしAM散の禁忌には、甲状腺機能低下症があります。
甲状腺機能低下症又は副甲状腺機能亢進症の患者
〔血中カルシウム濃度の上昇により病態に悪影響を及ぼすおそれがある〕
つくしAM散に含まれている沈降炭酸カルシウムが甲状腺機能低下症において、高カルシウム血症を引き起こす恐れがあるのでNGらしい。
チラーヂンが処方されているということは、甲状腺機能低下症である可能性が高い。
同じ処方せん上での相互作用なら見抜けるかもしれませんが、胃腸薬は比較的安易に処方されがちな薬なので、違う医療機関から処方される可能性も高い。
沈降炭酸カルシウムって添加物としても様々な薬に含まれていますが、添加物程度の量であれば問題ないのだろう。
沈降炭酸カルシウムと甲状腺
炭カル錠(沈降炭酸カルシウム)の禁忌には、
甲状腺機能低下症又は副甲状腺機能亢進症の患者[症状を悪化させるおそれがある。]
と記載されている。
同じ沈降炭酸カルシウムを成分とするカルタン錠の禁忌には、
甲状腺機能低下症の患者〔カルシウムの利用が亢進し、症状を増悪するおそれがある。〕
と記載されている。
同じカルシウム製剤としてアスパラCA錠(アスパラギン酸カルシウム)の禁忌は、
1. 高カルシウム血症の患者〔高カルシウム血症を増悪させるおそれがある。〕
2. 腎結石のある患者〔腎結石を増強させるおそれがある。〕
3. 重篤な腎不全のある患者〔カルシウム排泄低下により、高カルシウム血症があらわれるおそれがある。〕
甲状腺機能低下症に関しての記載はない。
まず副甲状腺機能亢進症のほうから言えば、副甲状腺ホルモンの分泌が亢進されれば、血中カルシウム濃度が上昇するので、カルシウム製剤が禁忌となるのはわかります。
しかし炭カル錠以外のカルシウム製剤で副甲状腺機能亢進症が禁忌となっていないのは解せない。
次に甲状腺機能低下症について調べると、
甲状腺ホルモンは水や電解質の排泄を増加させ、カルシウムの代謝にも関係していることから、甲状腺ホルモンの分泌に異常のある患者に炭酸カルシウムを投与すると、高カルシウム血症を起こす恐れがある。
東大教授に学ぶ!現場で起きた ヒヤリ・ハット事例 – 薬学生ナビ – マイナビ2015
甲状腺ホルモンの分泌に異常のある患者に炭酸カルシウムを投与すると、高カルシウム血症を起こす恐れがあるとのこと。
甲状腺ホルモンの分泌に異常のある患者、というのは甲状腺機能低下症だけでなく甲状腺機能亢進症にも当てはまるのかな。
沈降炭酸カルシウムの禁忌に甲状腺機能低下症が記載されているのは、全ての甲状腺機能低下症、と言う意味ではなく、敢くまで甲状腺ホルモン製剤を飲まれている患者さんでは、と言う意味です。
そうした患者さんが同時に沈降炭酸カルシウムを服用すると、甲状腺ホルモンの吸収が阻害される可能性があるので、同時服用は避け、少なくとも4時間は、空けて内服することが推奨されます。
従って、本来は禁忌とするのは不適切で、禁忌は「高カルシウム血症」のみとして、甲状腺ホルモン製剤とは併用注意と記載し、「同時服用では効果が減弱する可能性があるので、少なくとも4時間は間隔を空けて服用すること」という記載が適切だと思います。
何故沈降炭酸カルシウムは甲状腺機能低下症で禁忌なのか?:六号通り診療所所長のブログ:So-netブログ
つまり、チラーヂンとつくしAM散の相互作用をみるときに、チラーヂンとカルシウムがキレート結合してチラーヂンの吸収が阻害されるという影響のほうが重要で、甲状腺機能低下症患者がつくしAM散で高カルシウム血症を起こす可能性は低い。
こういう話を聞くと、添付文書に書いてあることは嘘ばかりと言う医師の言い分もわかります。けれども、チラーヂンとつくしAM散の処方をみたら疑義照会せねばならないのが薬剤師の仕事。
牛乳200mLにもカルシウム200mgは入っている。カルシウムのことを注意するのであれば、そこまで注意しなきゃならない。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が低下して活動性が低下する病気です。
圧倒的に女性に多く(男女比は1対10以上)、40歳以後の女性では軽症なものも含めると全体の5%にみられます。
成人に起こり、症状がはっきり出ているものは粘液水腫、小児にみられる先天性のものはクレチン病とも呼ばれます。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの産生や分泌が低下し、易疲労感や便秘、嗄声、浮腫、体重増加などの症状を呈する疾患である。
甲状腺の疾患に起因する原発性と、各種ホルモンを産生する視床下部と下垂体の疾患に起因する二次性に分類され、患者数は原発性の方が多い。
原発性としては、外科的処置や放射線治療で甲状腺の機能が低下した医原性や、薬剤性もあるが、ほとんどは橋本病(慢性甲状腺炎)である。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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