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つくしAM散とチラーヂンSは併用禁忌?
公開. 更新. 投稿者:相互作用/薬物動態. タグ:チラーヂン. この記事は約3分0秒で読めます.
5,472 ビュー. カテゴリ:疾患併用禁忌
つくしAM散の禁忌には、
甲状腺機能低下症又は副甲状腺機能亢進症の患者
〔血中カルシウム濃度の上昇により病態に悪影響を及ぼすおそれがある〕
という記載があり、甲状腺機能低下症の患者には禁忌となっている。
つまり、チラーヂンS錠を服用している患者は甲状腺機能低下症である可能性が高く、つくしAM散の使用は禁忌と考えて良い。
対してチラーヂンS錠の添付文書には、併用注意の欄に、
コレスチラミン,コレスチミド,鉄剤,アルミニウム含有制酸剤,炭酸カルシウム,炭酸ランタン水和物,セベラマー塩酸塩
臨床症状・措置方法
同時投与により本剤の吸収が遅延又は減少することがあるので,併用する場合には本剤との投与間隔をできる限りあけるなど慎重に投与すること.
機序・危険因子
消化管内で本剤と結合し吸収を抑制すると考えられている.
という記載があるのみで、併用禁忌というわけではない。
ここらへんが疾患併用禁忌のわかりにくいところ。
カルシウム製剤でも、甲状腺機能低下症に禁忌なのは炭酸カルシウムだけで、L-アスパラギン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどは禁忌となっていない。
〔血中カルシウム濃度の上昇により病態に悪影響を及ぼすおそれがある〕という理由であれば、これらのカルシウム製剤も禁忌となっていておかしくないと思いますが。
つくしAM散には、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲルが配合されており、レボチロキシンとの併用により、レボチロキシンの血中濃度低下、作用の減弱が報告されている。
レボチロキシンと炭酸カルシウムの同時服用によって血中TSH濃度は基準値を超えて大幅に上昇するが、炭酸カルシウムの中止もしくは服用タイミングを変更するとTSHが低下することが報告されている。
レボチロキシンを朝空腹時、炭酸カルシウムを昼食後、夕食後に服用すると相互作用は回避できると考えられる。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が低下して活動性が低下する病気です。
圧倒的に女性に多く(男女比は1対10以上)、40歳以後の女性では軽症なものも含めると全体の5%にみられます。
成人に起こり、症状がはっきり出ているものは粘液水腫、小児にみられる先天性のものはクレチン病とも呼ばれます。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの産生や分泌が低下し、易疲労感や便秘、嗄声、浮腫、体重増加などの症状を呈する疾患である。
甲状腺の疾患に起因する原発性と、各種ホルモンを産生する視床下部と下垂体の疾患に起因する二次性に分類され、患者数は原発性の方が多い。
原発性としては、外科的処置や放射線治療で甲状腺の機能が低下した医原性や、薬剤性もあるが、ほとんどは橋本病(慢性甲状腺炎)である。
甲状腺ホルモン製剤の相互作用
・フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシンなどの肝チトクロームP450を誘導する薬剤はレボチロキシン(チラーヂンS)の胆汁排泄を増加させるので、投与量の増量を必要とすることがある。
・スクラルファート、コレスチラミン、鉄剤、カルシウム製剤、水酸化アルミニウムは腸管での吸収を阻害するので、飲む時期をずらすか投与量の増量が必要となる。
・女性ホルモン、成長ホルモンは甲状腺ホルモンの必要量を増加させることがあるので増量を必要とすることがある。
甲状腺ホルモン製剤の副作用
・心悸亢進、頭痛、発汗、振戦、不眠、興奮などの症状が挙げられている。これらは甲状腺機能亢進の症状である。過量投与のみならず血液のホルモン値が正常、低値でも起こりうる。一時、投与量を減らし増量の速度を落とすことで対処可能なことが多い。
・重大なものとして狭心症が挙げられる。低下症の状態で心筋の酸素消費量が下がることでマスクされていた狭心症が顕在化してくるためである。年齢の高い症例、リスクを有する症例では投与開始前に心電図の確認が望ましい。
・急激な増量、過量投与により心房細動が発生することも知られている。
・本剤の直接の副作用ではないが、副腎不全が同時に存在する病態で本剤を先に投与すると副腎不全症状を悪化させるため、事前に副腎ホルモン補充のうえ、甲状腺の補充を開始すべきである。
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