2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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肝臓が悪いのはお酒のせい?

非アルコール性脂肪性肝炎とは?

薬剤師

お酒飲まないのに肝臓が悪い理由は?

お酒を飲んでいないのに、アルコール性肝炎に似た症状の病気を非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)といいます。

脂肪肝になっていて、肝臓の繊維化や炎症が見られた場合に、ナッシュと診断されるそうです。

単なる脂肪肝なら予後は良好です。
しかし、ナッシュは放置すると5~10年間で5~20%が肝硬変に進展し、肝癌を発症する患者もいます。

お酒を多量に嗜むことがない人の脂肪肝(非アルコール性の脂肪肝疾患(通称NAFLD))は近年、肝硬変や慢性肝炎、肝臓ガンなどの原因になることが明らかになり、欧米では大きな問題になっている。
日本ではNAFLDは推定で1000万人の患者、それが悪化した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、全国で200万人に上る患者がいると言われている。

脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、お酒を飲まない人が、カロリーオーバーの食生活などで内臓脂肪が溜まり、そこから常に大量の脂肪が肝臓へと供給され、脂肪肝へと変化すると考えられている。

脂肪肝からNASHが発症する原因として、肥満により脂肪組織から多量に分泌されるホルモンであるレプチンによって、肝臓がごく微量の腸内細菌にも花粉症患者のように過剰反応を起こしていることが分かった。
以前から腸内細菌由来の内毒素が肝炎を起こすことはわかっていたが、肝臓そのものが過剰反応を起こすことが示された。

薬が原因で脂肪肝?

NASHを引き起こす薬剤としては、アミオダロン、タモキシフェンなどがあり、その発症機序については不明な部分も多いのですが、ミトコンドリアの脂肪酸β酸化抑制による脂肪の蓄積や、活性酸素の生成などが関与している可能性が推測されています。

タモキシフェンは、エストロゲンレセプターに対しエストロゲンと競合的に結合し、抗エストロゲン作用を示しますが、エストロゲンは脂肪酸のβ酸化に関与しているとされることから、抗エストロゲン作用そのものが肝臓への脂肪蓄積、NASHの発症に関与していると考えられています。

酒は身体に良い?

酒は百薬の長、とよく言われます。

しかし、お酒はときに危険な薬物へと変貌します。

お酒の適量ってどのくらい?

医学的には、過度のアルコール摂取とは「1日2単位以上」のことをいいます。

アルコールの1単位とは、清酒1合、ビール大瓶1本、ワイン1/3本、ウイスキーの水割り(シングル)2杯に含まれるアルコールの量で、だいたい22g前後です。

体重60kgの人が30分以内に飲んだ場合、約3時間で分解される量に相当します。

下戸の私にとっては、かなり多い量なんですが、この量を越えなければ適度ということなのでしょう。

アルコールと血圧

長期にわたる飲酒は血圧上昇の原因になる。

少量の飲酒は血圧や死亡率への悪影響は少ないといわれ、むしろ改善する可能性があるとする報告もあるが、心血管保護効果については明らかな結論は得られていない。

アルコールの単回投与は数時間持続する血圧低下をもたらすが、その後上昇に転じる。

したがって、節酒は血圧を下げる。

飲酒量を80%ほど節制すると1~2週間のうちに降圧を認めるとされている。

お酒とγ-GTP

γ-GTPという検査項目はアルコールによく反応するといわれる。

γ-GTPは胆道系酵素とも呼ばれ、胆管の閉塞などで胆汁の流れが滞って数値が上がることがありますが、多くの場合は脂肪肝やアルコールの多飲が原因となります。

かつては飲酒に伴い上昇する酵素として有名でしたが、実際には過体重に伴う脂肪肝で上昇する人が過半数で、飲酒をしない人でも高い数値を示す場合があります。

その値が障害の程度と正確に相関しているとは限りません。
個人差の大きな酵素であり、年齢や性別、飲酒歴などが大きく影響するため検査値の解釈は慎重になる必要があります。

γ-GTPが高い原因はお酒?

γ-GTは、グルタチオンなどのγ-グルタミル基を他のペプチドやアミノ酸に転移する酵素です。
臨床検査データには、「γ-GT(γ-GTP)」と併記されていることもあります。
γ-GTの特徴は、アルコールや抗精神病薬、抗不安薬などの薬剤で誘導を受け、血中濃度が上昇する点と、胆汁うっ滞性疾患で上昇する点があげられます。
肝疾患であればALT値が(中程度~)上昇し、肝臓で合成されるChE(コリンエステラーゼ)が低下しますし、胆汁うっ滞であればALPが上昇します(妊娠中は除く)。
したがって、そのような場合では疾患にあわせた薬物治療、生活指導を行うことになりますが、その他のケースとしてよくみられるのは、飲酒や薬物服用による一時的な上昇や、脂肪肝(脂肪代謝障害)です。

脂肪肝の場合、ALT値は軽度~中程度上昇し、ChEは高値を示します。
脂質(中性脂肪、コレステロール)も異常値を示すことが多く、肥満の患者が多いので見た目でも比較的わかりやすいのですが、確定診断は、超音波(エコー)で行います。
また、一般的にアルコール類はカロリーが高く、同時に「つまみ」として脂っこいものや味の濃いものを摂取しがちになります。
飲酒習慣がなく栄養過多による場合は、糖分や脂肪分の摂り過ぎが考えられます。
特に中年以降は運動量も減少し、この傾向は強く見られるようになります。
アルコール摂取による一時的な上昇は、1週間程度の禁酒で数値が下降しますが、脂肪肝の場合は数か月単位の管理が必要となりますので、患者にその旨を説明し、自己管理を心がけるよう指導します。
同時に、γ-GTの基準範囲は40IU/L以下(男性)・30IU/L以下(女性)ですが、200IU/Lを超えるような場合は医師に相談し、より精密な検査を行うよう指導する。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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