記事
漢方薬には副作用がない?
公開. 更新. 投稿者:漢方薬/生薬.この記事は約3分4秒で読めます.
2,835 ビュー. カテゴリ:「血圧は高くないですか?」
漢方薬には副作用が無い、と思っている人は多いが、まったくないわけではない。
多くの漢方薬に含まれる甘草による偽アルドステロン症(浮腫・高血圧・低カリウム血症等)については注意する必要がある。
比較的安心して使える薬ではあるが、それゆえ漫然と投与されやすく、服用後の体調変化があれば伝えてもらうように指導する。
漢方薬に副作用は無い?
漢方薬には副作用がないと言われます。
ある意味、それは本当です。
漢方薬には副作用という概念がありません。漢方薬を飲んで副作用が出た場合、それは投薬ミスということになります。診断が間違っただけ、ということです。
なんだか屁理屈ですが、そういうことらしいです。
そんなひねくれた答えはいいとして、漢方薬にも副作用はあります。
小柴胡湯を飲んで間質性肺炎で死亡した例もあります。
それにどんな薬でもアレルギーというのはあります。
漢方薬も例外ではありません。
動植物の抽出物は多糖類やたんぱく質を含んでおり、食物アレルギーと同じようにアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
しかし、基本的には漢方薬は副作用の少ない薬であることは事実でしょう。
気を付けるべき生薬
漢方処方には複数の生薬が配合されているが、なかには副作用誘発の可能性が強い、あるいは過剰摂取となりやすいなどの理由により、服薬指導時に注意すべきものがいくつかある。
また、間質性肺炎は小柴胡湯の副作用として有名であるが他の漢方処方や、それ以外の西洋薬の副作用としても発症した事例が報告されていること、発症の原因や機序がまだ不明であることから、初期症状らしきものを感じたら、放置せずにすぐに医師・薬剤師に相談するよう、注意喚起しておくことが重要である。
生薬 | 注意 |
---|---|
甘草 | 偽アルドステロン症を誘発する可能性があるため過剰摂取や利尿薬との併用に注意。多くの漢方処方に配合されているほか、甘草含有の生薬製剤やグリチルリチン酸を含有する製剤も多いため、過剰投与が生じやすい。むくみなどが生じたら速やかに医師・薬剤師に連絡が必要。 |
麻黄 | エフェドリンが動悸を誘発する。また、高血圧症などに影響を及ぼす可能性がある。気管支拡張剤との併用で副作用が強く出る可能性があるため、併用薬に注意。 |
附子 | 中毒に注意。中毒の場合、服用後30~60分で口や舌のしびれ、嘔吐、動悸、のぼせなどが生じる。そのような症状が生じたら速やかに医師・薬剤師に連絡する。 |
大黄 | 効果に個人差があり、少量でも腹痛や下痢が生じる場合がある。服用量を減らすことで改善することも多いので、腹痛や下痢が生じた場合には速やかに医師・薬剤師に相談すべき。 |
桂皮 | のぼせ、頭痛が起きることがある。発疹、掻痒、蕁麻疹など皮膚症状が現れることがある。 |
山梔子 | 嘔吐、下痢を訴える胃腸虚弱者への投与に注意が必要である。 腸間膜静脈硬化症:大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化が生じ血流が阻害されることで腸管が慢性的に虚血状態になる疾患。 |
当帰 | 胃腸虚弱なもので消化器症状が現れることがある。発疹、掻痒、蕁麻疹など皮膚症状が現れることがある。 |
桃仁 | 流早産の危険性があるため、原則として妊婦には投与を控える。 |
牡丹皮 | 流早産の危険性があるため、妊婦には投与を控える。 |
黄芩 | 単剤でもまれに間質性肺炎を生じる。インターフェロンとの併用および肝硬変では間質性肺炎が生じやすい。 |
アリストロキア酸が危険?
中国製の漢方薬に「アリストロキア酸」という腎障害を引き起こす物質が含まれていることがある。
アリストロキア酸はアリストロキア属の植物に含有される成分で、腎障害を引き起こすことが知られている。
日本においては、現在、アリストロキア酸を含有する生薬・漢方薬は医薬品として承認許可を受けたものとしては製造・輸入されていないが、アリストロキア酸を含む漢方薬の個人使用によるものと疑われる腎障害が報告されている。
漢方薬だから安全、天然由来成分だから安心、という盲目的な信仰は止めたほうがいいですね。
本場の漢方薬?
日本での湯液療法に用いられる医薬品は漢方薬あるいは漢方エキス製剤と言われます。
また漢方処方と一般的に呼ばれることもあります。
よく海外に行ったお土産に、「本場の漢方薬を買ってきた」と言われる方がいますが、海外の製品は漢方薬とは言いません。
例えば中医学で処方される薬は「中薬・中成薬」と呼ばれています。
処方の名称が同じ場合もありますが、漢方薬と中薬では内容が異なっていることが多いです。
すなわち、配剤される生薬の種類が全く違っていたり、含量比が異なっていたりしますので、全くの別物であることも少なくありません。
一般に利用されている辞書や翻訳システムの中では、その区別が明確になっていないのが実情です。
性格には「中国伝統薬(中薬)」とすべきところ、「漢方薬」という誤った表記による報道が見受けられます。
小柴胡湯は三禁湯?
小柴胡湯は別名「三禁湯」と呼ばれます。
これは、汗を出す治療、吐かせる治療、また下剤を使う治療をしなければならない病気のときには使ってはならない処方という意味です。
吐剤でも下剤でも発汗剤でもない、性質の穏やかな処方であるといえます。
肝硬変と小柴胡湯
小柴胡湯は血小板数10万/μL以下で肝硬変が疑われる患者には禁忌である。
肝炎の慢性的な経過に伴って肝臓の線維化が進むと、肝臓の血流が低下し、肝臓に流入する血管である門脈の圧が上昇する(門脈圧亢進症)。
その結果、肝臓の上流にある脾臓の肥大や機能亢進が起こり、血小板が減少する。
こうしたことから、血小板数は肝臓の線維化を反映する指標として用いられている。
肝臓の線維化が進むほど肝がんの発症率は高くなるとされ、慢性肝炎の管理においては血小板数を把握することが非常に重要である。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。