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ノルバデックスとアリミデックスを併用しちゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約5分51秒で読めます.
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アリミデックスとノルバデックスを併用しちゃダメ?
アリミデックス(アナストロゾール)とノルバデックス(タモキシフェン)の併用に関する試験で有名なものにATAC(ARIMIDEX, Tamoxifen, Alone or in Combination)試験というのがある。
ATAC試験は、閉経後乳癌患者9366人を対象に行われた大規模臨床試験で、アロマターゼ阻害薬のアナストロゾールとタモキシフェンを併用した群では、アナストロゾール単独群より乳癌再発抑制効果が低くなるということが示された。
アリミデックス単独療法は、ノルバデックス単独療法よりも有効。
アリミデックスとノルバデックスの併用療法は、ノルバデックス単独療法と変わらない。
なので、アリミデックス単独療法のほうが、アリミデックスとノルバデックスの併用療法よりも優れているというわけです。
アリミデックス単独で投与されていた患者にノルバデックスが追加されたら、乳がんの再発リスクが上昇してしまいます。
ノルバデックスと同じ作用機序を有するエビスタやビビアントなどの骨粗鬆症治療薬(SERM)も、同様に乳がんの再発リスクを上昇させる恐れがあります。
アリミデックスの添付文書には相互作用の記載はありませんが、SERMは併用を避けるべき薬として挙げられます。
アリミデックスが処方されている患者にエビスタやビビアントが追加されたら注意が必要です。
ノルバデックスからアロマシンに変えた方が良い?
乳癌細胞は、エストロゲンを取り込んで増殖する性質がある。
そのため、術後の再発予防および進行を抑制する目的でホルモン療法が行われる。
ホルモン療法では一般に、抗エストロゲン薬であるタモキシフェンクエン酸塩(ノルバデックス)などが閉経前後にかかわらず用いられるほか、閉経前は黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)アゴニスト製剤、閉経後はアロマターゼ阻害薬が併用されることがある。
初期の閉経後乳癌患者を対象に行われた大規模試験において、タモキシフェンを2,3年投与後にアロマターゼ阻害薬エキセメスタン(アロマシン)に切り替えて5年間投与した患者と、タモキシフェンの投与を5年間続け(従来の標準治療)、投与を終了した患者の乳癌再発率を比較したところ、エキセメスタンに切り替えた群で乳癌再発率が19%低く、全要因による死亡率も14%低いことが示された。
こうした結果などから、日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」で も、「タモキシフェンを2~3年投与後に、アロマターゼ阻害薬に変更し、 計5年投与することが強く勧められる(推奨グレードA)」および「タモキシフェンを5年投与後に、アロマターゼ阻害薬に変更し、順次投与することが勧められる(グレードB)」と記載されている。
ただし、アロマターゼ阻害薬はエストロゲンの生成を阻害するため骨塩量低下による骨粗鬆症が問題となる。
エストロゲンが欠乏すると、インターロイキン(IL)などのサイトカインが増加して破骨細胞の分化が促進され骨吸収が進む。
血中カルシウム濃度が高まると、ビタミンD3産生が低下しカルシウム吸収量が減少するとともに、副甲状腺ホルモン分泌も低下して骨芽細胞機能が低下する。
このような相乗効果で骨粗鬆症が進行すると考えられている。
しかし、アロマターゼ阻害薬の投与は抗癌作用によるベネフィットの方が大きいと考えられており、ビスホスホネート製剤を併用して骨折を予防する。
抗エストロゲン薬とアロマターゼ阻害薬の違いは?
抗エストロゲン薬には、ノルバデックス、フェアストン、チオデロンがある。
アロマターゼ阻害薬には、アリミデックス、アロマシン、フェマーラがある。
では、アロマターゼ阻害剤とタモキシフェンには、こうした効果の差以外に、どのような違いがあるのでしょうか。
女性ホルモンが結合することのできる部分であるホルモン受容体を持っている「ホルモン感受性」と呼ばれる乳がんは、エストロゲンが結合すると分裂や増殖が促進されることがわかっています。タモキシフェンは、自らがホルモン受容体に結合することによって、エストロゲンがホルモン受容体に結合するのを防ぐ薬剤です。
エストロゲンは、閉経前女性においてはおもに卵巣で作られますが、閉経後は脂肪組織などでアロマターゼという酵素の働きによって合成されます。そして、乳がんになると乳がんの組織でもアロマターゼが働いてエストロゲンが合成されていることがわかっています。このアロマターゼの働きを抑制して、エストロゲンの合成自体を抑える薬剤がアロマターゼ阻害剤です。働き方が違う薬剤ですから、副作用などにも違いが起こってきます。
個別化治療の実現へ着実に前進する乳がんのホルモン療法:がんサポート情報センター
閉経前は抗エストロゲン薬。
閉経後はアロマターゼ阻害薬。
治療にどの薬を選択するかは、「閉経前」か「閉経後」かによって変わります。その理由は、閉経を境に女性ホルモンの産生部位が変わってしまうからです。
閉経前は、主に卵巣からエストロゲンが分泌されます。一方、閉経後は卵巣からのエストロゲンの分泌は停止し、副腎皮質から分泌される男性ホルモンが、脂肪細胞などに存在する「アロマターゼ」と呼ばれる酵素の働きによって、エストロゲンに変換されます。
そのため閉経前には、卵巣でエストロゲンが作られないようにする「LH-RHアゴニスト製剤」を、閉経後には男性ホルモンからエストロゲンが作られるのを防ぐ「アロマターゼ阻害薬」を用います。エストロゲンの作用をブロックする「抗エストロゲン薬」は、閉経の有無にかかわらず使えます。
ホルモン療法:がんナビ
閉経後の乳がんには、抗エストロゲン薬とアロマターゼ阻害薬が用いられますが、治療薬の中心はアロマターゼ阻害薬です。抗エストロゲン薬のタモキシフェンとアロマターゼ阻害薬の比較試験から、アロマターゼ阻害薬のほうが再発リスクを下げることが明らかになっています。
抗エストロゲン薬は閉経前でも後でも効く。はず。
だけどフェアストンには閉経後の乳がんにしか適応は無い。
ノルバデックスは閉経前でも後でも使える。
フェマーラとアロマシンの違いは?
フェマーラもアロマシンもアロマターゼ阻害薬。
いずれも閉経後乳がんに用いられる。
それぞれ構造式、骨格においては違いがみられる。
アロマシン(エキセメスタン)はエストロゲンやアンドロゲンなどのホルモンと同じような構造(ステロイド)を持つ「ステロイド型アロマターゼ阻害薬」です。
フェマーラ(レトロゾール)とアリミデックス(アナストロゾール)はステロイド構造を持たない「非ステロイド型アロマターゼ阻害薬」です。
これまでにこれら3剤のアロマターゼ阻害剤にどのような違いがあるのか多くの研究がなされてきましたが、効果の面においては同等と考えられています。
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1 件のコメント
わたしは閉経前ですが、副作用が軽減されるということでノルバテックスからフェアストンに変えてもらいました。
ネット検索しましたら、「データとしては閉経後の患者さんでの結果しかない。けれど、適用は閉経前。」みたいですね。
変ですね。
世の中変なことばっかりです。医療も例外ではありません。