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アロマターゼ阻害薬は閉経前には効かない?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約4分38秒で読めます.
3,200 ビュー. カテゴリ:乳癌治療薬の適応
乳癌治療薬の適応症には、「閉経後乳癌」と書かれているものと「乳癌」と書かれているものがある。
薬効分類 | 医薬品名 | 一般名 | 適応症 |
---|---|---|---|
抗エストロゲン薬 | ノルバデックス | タモキシフェン | 乳癌 |
フェアストン | トレミフェン | 閉経後乳癌 | |
アロマターゼ阻害薬 | アリミデックス | アナストロゾール | 閉経後乳癌 |
フェマーラ | レトロゾール | 閉経後乳癌 | |
アロマシン | エキセメスタン | 閉経後乳癌 |
とは言っても適応症が「閉経後乳癌」ではないのはノルバデックスくらいなものだが。
なぜ「閉経後」じゃないといけないのか、その理由はアロマターゼ阻害薬の作用機序にある。フェアストンについては一旦置いておく。
アロマターゼ阻害薬は閉経前には効かない?
アロマターゼ阻害薬(アリミデックス、フェマーラ、アロマシン)は、閉経後乳癌に使われる。
乳がんの増殖にはエストロゲンが影響していますが、閉経前と閉経後ではエストロゲンの作られ方が違います。
閉経によって女性ホルモンは少なくなるが、全く無くなるわけではありません。
閉経前の人では主に卵巣でエストロゲンが作られますが、閉経後は副腎から分泌されたアンドロゲンというホルモンをもとにして脂肪組織でエストロゲンが作られます。この閉経後のエストロゲン合成に関わっている酵素がアロマターゼで、アロマターゼ阻害剤は、この酵素の働きをさまたげることにより効果を発揮します。
閉経前にアロマターゼ阻害剤を投与しても、卵巣からエストロゲンが分泌されてるので効果ない、ということです。
しかし、GnRnアナログ製剤(スプレキュア、ナサニール、ゾラデックス、リュープリンなど)を使っていれば偽閉経状態になるので、アロマターゼ阻害薬を併せて使うこともあるという。
女性ホルモンは男性ホルモンから作られる?
女性ホルモンはアロマターゼという単一の酵素により男性ホルモンからつくられます。
アロマターゼの主要な産生組織は、閉経前では卵巣になりますが、胎盤の他、生殖組織以外でも脳や脂肪細胞、筋肉において産生されます。
とりわけ、閉経後では生殖組織以外が主要な産生組織に変化します。
乳房では脂肪細胞がアロマターゼを正常時でも産生していますが、がん化によりその産生はさらに増強されます。アロマターゼは女性ホルモン合成の最終工程にかかわる酵素ですので、これを阻害しても他の性ホルモン合成への影響はなく、女性ホルモンの供給遮断の標的としてアロマターゼはきわめて優れていると考えられます。
女性も男性ホルモンを分泌している?
女性にあるホルモンが女性ホルモン、男性にあるホルモンが男性ホルモンと思い込んでいませんか?
男性の体内でも女性ホルモンが作られるし、女性の体内でも男性ホルモンが作られます。
男性ホルモンは精巣(95%)以外に副腎(5%)でも作られます。
そのため前立腺癌で去勢しても、副腎で作られる男性ホルモンが前立腺癌を刺激するので、薬の服用を続ける必要があります。
フェアストンは閉経前乳がんに効かない?
ホルモン依存性の乳がんでは、がん細胞内のエストロゲンレセプター(ER)とエストロゲンが結合することにより、がん細胞が増殖します。エストロゲンは、閉経前であれば主に卵巣で作られますが、閉経後は卵巣機能が衰え、代わりに副腎で作られるアンドロゲン(男性ホルモン)が脂肪などにあるアロマターゼという酵素の働きでエストロゲンに変換されます。ホルモン療法では、このエストロゲンの産生機序の違い(閉経前・後)により使用する薬剤が異なります。
LH-RHアゴニスト製剤:視床下部から分泌されるLH-RHの分泌を抑制し、卵巣からのエストロゲンの分泌を抑制します。
抗エストロゲン薬:ERに結合して、エストロゲンが乳がん細胞にはたらくのを遮断します。
アロマターゼ阻害薬:アンドロゲンをエストロゲンに変換させるアロマターゼの作用を抑制します。
黄体ホルモン薬:エストロゲンの産生を抑制します。
分類 | 医薬品名 | 一般名 | 適応 |
---|---|---|---|
LH-RHアゴニスト製剤 | リュープリン | 酢酸リュープロレリン | 閉経前 |
ゾラデックス | 酢酸ゴセレリン | 閉経前 | |
抗エストロゲン薬 | ノルバデックス | クエン酸タモキシフェン | 閉経前後 |
フェアストン | クエン酸トレミフェン | 閉経後 | |
アロマターゼ阻害薬 | アリミデックス | アナストロゾール | 閉経後 |
アロマシン | エキセメスタン | 閉経後 | |
フェマーラ | レトロゾール | 閉経後 | |
黄体ホルモン薬 | ヒスロンH | 酢酸メドロキシプロゲステロン | 閉経前後 |
抗エストロゲン薬にはノルバデックスとフェアストンがありますが、ノルバデックスは閉経前後の乳がんに適応があるのに対し、フェアストンは閉経後乳がんにしか適応がない。
しかし、フェアストンの閉経前乳がんに対する使用は公知申請でレセプト請求上は認められているので、処方されることはある。
乳がんとエストロゲン
乳がんの60~70%は、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて、分裂・増殖します。
つまり、エストロゲンが乳がん細胞の中にあるエストロゲン受容体と結びつき、がん細胞の増殖を促します。
このように、エストロゲンを取り込んで増えるタイプの乳がんを「ホルモン感受性乳がん」といいます。
ホルモン感受性乳がんはエストロゲンによって増殖するため、卵巣由来のエストロゲンを減少させるか、エストロゲンの作用を減弱させることが治療の中心となります。
卵巣由来のエストロゲンを減少させるためには、LH-RHアゴニストが用いられます。
エストロゲンの作用を減弱させるためには、エストロゲンの受容体への結合を阻害する抗エストロゲン薬のタモキシフェンやトレミフェンが用いられます。
閉経後には、体内の脂肪組織や肝臓、筋肉、乳がん組織の中にあるアロマターゼにより、副腎皮質で分泌されたアンドロゲンからエストロゲンが産生されるため、アロマターゼを阻害することで、エストロゲン量を低下させることができる。
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