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ノルバデックスはSERM?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約3分11秒で読めます.
4,071 ビュー. カテゴリ:抗エストロゲン薬とSERM
ノルバデックスがSERMだという話。
ノルバデックス(タモキシフェン)などの抗エストロゲン薬は、乳房などの組織ではエストロゲンの働きを抑える抗エストロゲン作用を示す一方、骨などの組織ではエストロゲンの働きを促進させる作用を示すことから、最近はSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレータ)と呼ばれています。
SERMといえば、骨粗鬆症に使われるエビスタ(ラロキシフェン)やビビアント(バゼドキシフェン)と同じですね。
SERMは、骨などに対してはエストロゲン様の作用を持ち、保護的に働き骨塩量を増加させます。
一方、AI(アロマターゼ阻害薬)はエストロゲン合成を阻害し、血中エストロゲン濃度を強力に抑制するために、その副作用として骨代謝および脂質代謝への影響が懸念されています。
抗エストロゲン薬もアロマターゼ阻害薬もエストロゲンの働きを阻害するので、骨折リスクを増やすと思いましたが、SERMであれば骨折予防に使えます。
選択的エストロゲン受容体モジュレータ
現在骨粗鬆症に適応があるSERMは、骨・血管や脂質代謝に対してはエストロゲン作用、乳腺や子宮に対しては抗エストロゲン作用を示す。
骨量増加効果以上の骨折予防効果を示すため、骨質維持改善効果もあると考えられている。
骨への効果はエストロゲンよりやや弱いが、リスクの高い症例では非錐体骨折予防効果も示されている。
総コレステロールやLDL-コレステロールを低下させるが、心血管イベントは抑制せず、致死的脳梗塞、深部静脈血栓症が増加し、更年期症状が悪化する。
したがって、閉経後最長でも25年程度までで、脳梗塞や血栓症のリスクが低く、更年期障害も軽度の症例が最も良い適応である。
ラロキシフェンは浸潤性乳がんの発症をタモキシフェンと同程度に抑制するため、乳がんリスクの高い症例にも適する。
1日1回1錠で、内服に関する制限が少ないのも利点の1つである。
SERMとエストロゲン
エストロゲン受容体は骨芽細胞にも破骨細胞にもあり、エストロゲンが欠乏すると骨吸収と骨形成のバランスが崩れてきます。
骨粗鬆症治療薬として、欠乏したエストロゲンそのものを補充するホルモン補充療法が行われましたが、エストロゲンは乳がんや子宮内膜がんのリスクを増大させてしまい、長期投与ができません。
骨粗鬆症の治療だけに女性ホルモンを使うには、がんのリスクがなく、骨などの組織に対して選択的にエストロゲン作用を発揮することが理想です。
そこで、組織に特異的に作用する薬として、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SelectiveEstrogenReceptorModulator:SERM)の研究が開始され、2004年に初めてのSERM「ラロキシフェン」が閉経後骨粗鬆症治療薬として誕生し、2010年にはバゼドキシフェンが登場しました。
SERMはエストロゲン受容体に結合し、サイトカインを介してエストロゲンと同様な骨吸収抑制作用を示します。
また、エストロゲン受容体は全身に広く分布していますが、SERMは、乳房組織や子宮などのエストロゲンが働くことでがんができやすい臓器への作用を示さず、骨や血管などに選択的に働き骨密度を増加させ、加えてコレステロール代謝改善作用も期待でき、理想的な骨粗霧症治療薬のプロファイルを示します。
エビスタで乳がん予防できる?
欧米では、乳癌のハイリスク者に対して予防的手術(乳房や卵巣の切除)や化学予防(ケモプリベンション)が実施されている。
化学予防には、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)のタモキシフェンクエン酸塩(ノルバデックス)やラロキシフェン塩酸塩(エビスタ)が用いられる。
日本女性の乳癌罹患率は、米国の3分の1以下と低い。
だが今後、化学予防に対するニーズが高まる可能性もある。
日本では、ラロキシフェンおよびタモキシフェンいずれも、乳癌の発症予防の適応は認められていない。
ラロキシフェンの適応症は、閉経後骨粗潅症である。
閉経後は、女性ホルモンであるエストロゲンが減少することにより骨量が減少し、骨折の危険性が高くなる。
ラロキシフェンは、エストロゲン受容体に結合し、骨に対してアゴニストとして作用して、骨吸収を抑制し、骨量の減少を改善して骨折の危険性を減少させる。一方、乳房に対してはアンタゴニストとして作用して、エストロゲンの働きを抑制する。
この作用を応用して、閉経後の乳癌の発症予防に使用されている。
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