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SERMとSERDの違いは?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約3分60秒で読めます.
6,849 ビュー. カテゴリ:ノルバデックスで子宮癌になる?
調剤薬局に勤めている身としては、注射剤の知識はあまり必要とされる機会はありませんが。
フェソロデックス(フルベストラント)という乳癌の薬についての勉強。
エビスタやビビアントはSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)。
乳癌治療薬のノルバデックスもSERM。
状況に応じて作動薬として働いたり、拮抗薬として働いたりする薬です。
モジュレーターってのは変調器って意味らしい。コントローラーじゃダメなのかな。意味が違うか。
骨のエストロゲン受容体には作用するが、乳房などに存在するエストロゲン受容体には作用せず拮抗する。
なんでそんなに都合よく作用することができるんだろうと、感心しますが。
で、フェソロデックスはSERD(選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター)という分類の薬になるらしい。
SERMですら、その作用機序が不思議と思っているのに、さらにわからないゾーンに来ました。
フェソロデックスはエストロゲン受容体をダウンレギュレーション、受容体数を減らす薬のようです。
そしたら、骨のエストゲン受容体数も減って骨折リスクが高まりそうですが、これも組織特異性により乳房のみに働くという都合のよい薬なのだそうです。
ノルバデックス(SERM)の場合、骨だけでなく子宮に対してもアゴニスト的に働くので、子宮癌のリスクを上昇させる可能性があります。
フェソロデックス(SERD)の場合は、骨にも子宮にも働かないため、子宮癌に対する心配はありません。
組織特異性、選択性ってすばらしいですね。
SERM
抗エストロゲン作用が発見されたタモキシフェンは、当初避妊薬として開発されていましたが、労を尽くした橋渡し研究により乳がん治療薬としての地位が確立されました。
その後もラロキシフェンなどの非ステロイド性抗エストロゲン薬が開発されていますが、これらは現在、選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)という概念で分類されています。本薬の作用が組織選択的に拮抗薬あるいは作動薬に変化するからです。
たとえば、ラロキシフェンは乳がんに対しては拮抗薬として作用しますが、骨に対しては作動薬として骨量増強作用を示します。
ラロキシフェンは発がんリスクがない閉経後骨粗霧症治療薬としても使用されています。
SERD
一方、エストロゲン作動活性を有しない拮抗薬として開発されたフルベストラントは、受容体に対する拮抗作用がタモキシフェンと比較して2桁増強されています。
特筆すべきは、拮抗作用の他にユビキチンープロテアゾーム経路を介してエストロゲン受容体の分解を促進する作用も有することで、「選択的エストロゲン受容体低減薬(SERD)」と呼ばれています。
フルベストラントは、大部分のSERM耐性がん細胞に対して抗がん作用を保持することが示されています。
SERM
骨のエストロゲン受容体に対して選択的に作用する薬です。
女性ホルモンのエストロゲン製剤は骨吸収抑制作用を示しますが、乳がんなど発がん性の心配もあります。
SERMは骨のエストロゲン受容体だけに作用するので、発がんの危険性は少ないとされます。
SERMには骨吸収抑制効果だけでなく、脂質低下作用もあります。
また、塩酸ラロキシフェンには乳がん予防効果も認められています。
その特性により、副作用の軽減と他臓器に対する悪影響が回避され、副効用として乳がんの予防効果も期待できます。
現在、国内をはじめ世界的にも、閉経後の骨粗鬆症治療薬の主流となっています。
ただし、更年期障害を悪化させることがあるので、のぼせや発汗など更年期症状のある人は避けたほうがよいかもしれません。
骨折抑制効果はビスホスホネート製剤などよりも低いのですが、骨代謝を適度に抑え込むので顎骨壊死などの副作用が起こりにくく、乳がん予防などの副次的効果も期待できるので、若くて骨折リスクが高くない人には使いやすい薬です。
食後いつ飲んでもよいことも利点で、日本では使用量が多くなっています。
60歳ぐらいで骨粗霧症になると20年以上も薬を飲み続けないといけません。
最初はSERMでスタートし、治療が十分でなければビスホスホネートやテリパラチドに変えていくのが治療戦略です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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