2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

粒子径は小さいほどいい?

肺に届く薬の大きさは?

薬剤師

吸入剤の粒子は細かいほうが奥まで届くよね?

喘息やCOPDに使用する吸入剤の粒子の大きさについて。
粒子が小さいほど奥まで到達するため、より細かいミストになったほうが良いのではないかと思われがちだが、細かすぎると吸ったミストがそのまま呼気で吐き出されてしまうという。

肺への薬物の送達度は粒子の大きさによって決まる。

1~5μmの粒子が細い気道に到達し、薬物が最も効果的に作用する。
10μm以上の粒子は主に口腔内、咽頭部に付着し、また0.8μm以下の粒子は肺胞に到達するが、その後、肺に付着することなくそのまま呼気時に排出されてしまう。

10~20μm:咽頭に沈着
8~10μm:気管に沈着
5~8μm:気管支に沈着
3~5μm:細気管支に沈着
0.5~3μm:肺胞に沈着

吸入補助器の使用は有効な粒子を吸入するために有効である。

各吸入薬の粒子径と特徴

DPI
フルタイドロタディスク 平均粒子径5.2μm 必要吸入速度60L/分 肺内沈着率約11~16%
フルタイドディスカス 平均粒子径5.2μm 必要吸入速度30L/分 肺内沈着率約15~17%
アドエアディスカス 平均粒子径4.4μm 必要吸入速度30L/分 肺内沈着率約15~17%
パルミコートタービュヘイラー 平均粒子径2.6μm 必要吸入速度35L/分 肺内沈着率約32%
アズマネックスツイストヘラー 平均粒子径2.0μm 必要吸入速度35L/分 肺内沈着率約40%

pMDI
キュバールエアゾール 平均粒子径1.1μm 肺内沈着率約50%
オルベスコインヘラー 平均粒子径0.9μm 肺内沈着率約50%
フルタイドエアー 平均粒子径2.8μm 肺内沈着率約30%
アドエアエアゾール 平均粒子径3.1μm 肺内沈着率約30%

吸入ステロイドの粒子径

ステロイドの吸入剤には、フルタイド、キュバール、パルミコートなどありますが、霧状のものや粉状のものがあり、肺の中への届き方が違います。
粒子が小さいほうが肺の奥の方まで届くので、効果が高いです。

粒子径は、
キュバール:1.1μm
オルベスコ:1.1μm
パルミコートタービュヘイラー:2.6μm
シムビコートタービュヘイラー:2.2~2.4μm
パルミコート吸入用懸濁液:5.0μm以下
フルタイドロタディスク:3.3μm
フルタイドディスカス:5.3~5.4μm
フルタイドエアー:2.8μm
アドエアエアー:3.1μm
アドエアディスカス:3.5~4.4μm
アズマネックス:2.0μm
タウナス粉末吸入剤:2.2μm

フルタイドディスカスやアドエアディスカスを使ってなかなか効果が出ない時は、キュバールとかオルベスコにすると良くなることがしばしばある。
粒子が大きいフルタイドは主に太い中枢気道に作用し、粒子が非常に小さい超微粒子のオルベスコやキュバールといったエアゾール製剤は、末梢まで薬が到達するために末梢気道によく作用するといわれています。
したがって、超微粒子のエアゾール製剤は末梢気道病変が強い患者に効果があります。

吸入ステロイドの肺内到達率

肺内到達率は、
キュバール:40~55%
オルベスコ:52%
パルミコートタービュヘイラー:32%
パルミコート吸入用懸濁液:6.1%(小児)13%(成人)
フルタイドディスカス:15~17%
フルタイドロタディスク:11~16%
フルタイドエアー:26~28%
アドエアエアー:29%
アドエアディスカス:15~17%
アズマネックス:40%
タウナス粉末吸入剤:40%

気道には内径2mm以上の中枢気道と、内径2mm未満の末梢気道があります。喘息で亡くなった方の気道の状態を見ると、完全閉塞は軟骨の無い末梢気道で多く認められます。

末梢気道に薬を到達させるためには2~3μmの粒子径の薬剤が適していると考えられています(アストラゼネカの主張)。
0.8μm未満の粒子は吸っても呼気として排出されてしまいます。
0.8~3.0μmの粒子が末梢気道~肺実質への到達に適切な粒子径です。
2.0~5.0μmの粒子が気道への到達に適切な粒子径です。
肺胞まで薬が到達すると血流にのって全身に回ってしまうので全身性の副作用が多く出るという意見もあります。

フルタイドディスカスとフルタイドエアゾールの違いは?

フルタイドにはディスカス(ドライパウダー)とエアゾールの2種類の剤形があるが、両者は粒子型が異なる。
ドライパウダーは中枢気道(太い気道)の炎症を抑えるのに有効であるが、粒子が大きいため末梢気道(細い気道)まで十分に届かない。
一方、エアゾールは粒子が小さいので末梢気道まで届く。
COPDは高齢者が主であり、末梢気道の好酸球性炎症が喘息症状の出現に関与している可能性が高いため、エアゾールを最初に試みる方がよいと考えられる。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

2 件のコメント

  • Dr X のコメント
         

    デバイス内と吸入時ー体内到達時で粒子形が変わることは考慮されていますか?
    合剤はデバイス内では二つがくっついた粒子形で存在することがあります。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    粒子径の変化については全く考えたことがありませんでした。
    合剤にすると粒子径が大きくなると。

    アドエア、シムビコート、ウルティブロ、フルティフォーム、レルベアなど吸入剤の合剤もありますが、肺内到達率を考えると個々の吸入剤を使った方が効果的ということもありうるわけですね。
    レルベアなんかはデバイス内で別々に封入されているので影響は少ないのでしょうか。

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yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
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