2024年3月28日更新.2,749記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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潰瘍性大腸炎の原因は細菌感染?

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潰瘍性大腸炎の原因は細菌?

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症がおこり、腹痛や下痢、血便や粘液便をくり返す病気です。
発症の原因は、まだ解明されておらず、現在は、5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ、サラゾピリン)やステロイドで炎症を抑え、症状を緩和させる治療法が一般的です。

潰瘍性大腸炎の原因として、これまでは細菌やウイルスの感染、ある種の酵素の不足、牛乳などのアレルギー、心理的な原因、体質などが考えられてきました。しかし、最近では、免疫異常が関係していることがわかってきました。

私たちの体には、細菌などの有害なものを排除する免疫の仕組みがあります。
この免疫の仕組みは腸の中でも働いていて、食べ物が腸を通過する際には、栄養分のように体に必要なものだけを腸の粘膜から吸収し、不要なものや有害なものは、吸収せずに、そのまま腸から通過させて便として排泄します。

ところが、免疫機構の異常が大腸に生じると、不要なものまで、腸の粘膜から吸収されるようになります。
その結果、大腸の粘膜に炎症が起こり、潰瘍やびらんができると考えられています。
ただ、なぜ、大腸に免疫異常が起こるのかは不明です。
原因がはっきりしないため、決定的な治療や予防はまだできないのが現状です。

潰瘍性大腸炎の原因はバリウム菌?

健常者や、クローン病など他の大腸疾患患者の大腸粘膜にはほとんど存在しないバリウム菌という嫌気性菌が、潰瘍性大腸炎患者の炎症部位から高率(84%)に検出された。
さらに、バリウム菌の産生する酪酸がベロ細胞毒性を示すことが分かり、これをマウスに注腸した結果、マウスの大腸に潰瘍性大腸炎の類似病変が引き起こされた。

もともと潰瘍性大腸炎は症候群であり病型も多彩であることから、潰瘍性大腸炎すべてがバリウム菌が原因とは思われないが、二重盲検試験でも証明されたように、腸内細菌をターゲットとした抗菌薬多剤併用療法が一定の効果があるのは確かである。

免疫抑制薬で改善が得られない時にさらに免疫抑制薬を追加するのではなく、発想を変えて、この抗菌薬多剤併用療法を試されることをお勧めしたい。

フソバクテリウム・バリウム

潰瘍性大腸炎の病変粘膜にはフソバクテリウム・バリウムという嫌気性菌が高率で存在し、それが炎症を惹起・促進させることがわかっている。

そこで、胃潰瘍などを引き起こすピロリ菌の除菌法を参考に、アモキシシリン水和物とテトラサイクリン塩酸塩、メトロニダゾールの3剤を2週間にわたって投与する治療法が誕生した。

3剤の頭文字をとって「ATM療法」と呼ばれている。

潰瘍性大腸炎にATM療法

腸管の慢性的な炎症で、血便や腹痛が続く難病「潰瘍性大腸炎」の治療で、抗生物質3剤を2週間服用するATM療法を行うと、半数の患者の症状が著しく改善することが分かりました。

潰瘍性大腸炎は、若い世代で発症者が増え、国内患者数10万人。原因不明で特効薬がなく、ステロイドなどで免疫力を抑える。
ATM療法は、特定の腸内細菌がこの病気を引き起こすとの考えに基づき、アモキシシリンなどの抗生物質3剤で細菌をたたく治療法(ATMは3剤の頭文字)。
使用中の治療薬に、2週間加えて服用する。

ATMとは、アモキシシリン、テトラサイクリン、メトロニダゾールの頭文字です。

フソバクテリウム・バリウムという高濃度の酪酸を産生する細菌が潰瘍性大腸炎の発症または増悪に深く関わっているのではないかとの仮説から、その菌に対して殺菌力が特に強い抗菌剤3剤を患者に投与してみたところ、高い率で緩解に導入することができたということらしい。

この細菌が原因とわかれば、この細菌に有効な抗生物質の開発で潰瘍性大腸炎が治るかも知れませんね。

潰瘍性大腸炎の原因は食生活の欧米化?

潰瘍性大腸炎の病因はいまだ不明であり、免疫学的異常、遺伝学的異常、環境因子などが原因として挙げられるが、決定的なものは見つかっておらず、複数の要素が複雑に絡み合いながら病態を形成し、腸管局所での過剰な免疫反応を引き起こすと考えられている。

東アジアにおいて急増している原因の一つとして、食生活の欧米化や腸内細菌叢の変化、衛生環境の変化などがいわれているが、今のところ明らかなエビデンスのあるものはない。

また、一卵性双生児での潰瘍性大腸炎発症の一致率は6%とクローン病よりはるかに低率であり発症への遺伝的素因はそれほど大きくないと考えられている。

また、クローン病と異なり、喫煙は発症リスクを低下させることが知られている。

クローン病の原因は細菌?

クローン病の治療にメトロニダゾール(フラジール)やシプロフロキサシン塩酸塩(シプロキサン)などの抗菌薬が処方されることがある。

クローン病患者において、抗菌薬の投与や腸内洗浄の実施により腸内の細菌数が減少すると、症状が改善するケースが知られている。

小腸病変よりも大腸病変に対して有効性が高いとされ、術後再発予防に対する有効性を示す報告もある。

ただし、抗菌薬療法の適応や具体的な治療法は確立していない。

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2 件のコメント

  • 鈴木 のコメント
         

    こんばんは。初めて質問します。私の友人、いや、恋人になるかもしれない人が潰瘍性大腸炎になって10年弱です。最近この病気をしりました。今後の彼が心配です。今は病状が落ち着いているみたいで、普通の人と変わらないように思います。お互い好きでお付き合いも考えていますが、私は悪い人なのか、キスや性行為をすると、うつるのではないかと、心配になり、先に進めないでいます。そんな事を本人には、言えなくてネットなどで読んだりしますが、病気の原因はわからないとあります。わからないのであれば、感染もするかもしれない。んじゃないか。不安です。かといって、その彼を嫌いにはなれず、なやんでいます。私は自分のことばかり考えていると、自己嫌悪でもあります。感染するかもしれないという、不安がなければこんなに悩ます、前に進めるのにと。思い、思い切って質問しました。解答していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    安倍首相も潰瘍性大腸炎なので、今後の日本が心配になります。
    というのは冗談で、潰瘍性大腸炎はそれほど珍しい病気でもありません。
    夫婦間や恋人間で感染するという可能性はほぼ無いでしょう。
    ただ遺伝する可能性はあるので、そこは考慮したほうが良いのかも知れません。

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2023年09月14日発売

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