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MRIとCTの違いは?
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約3分52秒で読めます.
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MRIとCTの違いは?

MRIとCTは、いずれも病気の診断に欠かせない画像検査ですが、それぞれの仕組みや適応には大きな違いがあります。
MRIとCTの基本原理の違い
〇CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影):
CTはX線を使って身体の断面画像を撮影する検査です。X線を体の周囲から照射し、その透過度を検出器で測定。コンピュータ処理によって画像が再構成されます。現在では「マルチスライスCT(MDCT)」という高速撮影可能な装置が一般的で、頸部から骨盤まで約25秒程度で撮影可能です。
CTの特徴:
・撮影時間が短く、救急や広範囲の検査に適する
・骨や肺の描出が得意
・画像はやや粗く、軟部組織のコントラストはMRIに劣る
・放射線被曝がある
〇MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法):
MRIは強い磁場とラジオ波を用いて体内の水素原子の動きを解析し、断面画像を構築する検査です。X線を使用しないため、放射線被曝がありません。
MRIの特徴:
・被曝がないため、妊婦や子どもの検査にも適する
・水分量が多い軟部組織(脳、脊髄、筋肉、関節など)の描出に優れる
・任意の断面像を自由に取得できる
・撮影時間が長く(30〜60分)、閉所恐怖症には不向き
・骨の描出は苦手
・磁気を使うため、ペースメーカー装着者には禁忌
CT | MRI | |
---|---|---|
撮影原理 | X線の吸収 | 磁気の共鳴 |
撮影方法 | 単純と造影撮影が基本 | 多岐にわたる |
放射線被爆 | あり | なし |
骨・空気の影響 | あり | なし |
画像 | エックス線フィルム同様、骨は白く、空気は黒くみえる | 骨も空気も無信号となり、区別されない |
基本 | 横断面 | 任意の断面 |
撮影時間 | 比較的短い(10~15分) | 比較的長い(30分程度) |
特化部位 | 脳・肺・腹部・骨 | 脳・脊髄・関節・骨盤腔内臓器 |
頭蓋骨内病変 | 頭部外傷・脳出血・くも膜下出血 | 早期の脳梗塞・脳ドッグ |
長所 | 撮影時間が比較的短く、容易に断層像が得られる。 頭部救急病変(出血の疑いなど)への適応が高い。 骨の情報が得られる。 | 放射線被曝が無く、組織間コントラストに優れる。 任意の断層像を得ることができ、撮像法を変えることで病変の質的評価ができる。 造影剤なしで血管の画像が得られる。 |
短所 | 放射線被曝がある | 体内に金属(ペースメーカー等)が入っている方は、検査できない。 撮影時間が長く、狭いところに入るイメージ(閉所恐怖症や安静が保てない場合は難しい)。 検査中、装置から工事現場のような大きな音が聞こえる。 検査費用が高額 |
※CTは「骨の構造」を見るのに優れ、MRIは「骨の中」や「軟部組織」の状態を評価するのに適しています。
被曝と安全性の違い
CTはX線を使用するため被曝のリスクがあり、特に妊婦や小児には慎重に適応を判断します。一方、MRIは磁気を用いるため被曝はなく、繰り返し検査にも適しています。
ただし、MRIは磁場の影響を受けるため、心臓ペースメーカー、金属製インプラント、磁気カード類の所持には厳しい制限があります。
造影剤の違いと注意点
画像検査では病変の輪郭を明確にするため、造影剤を使用することがあります。CTとMRIでは使用する造影剤が異なり、それぞれにリスクもあります。
項目 | CT(ヨード造影剤) | MRI(ガドリニウム造影剤) |
---|---|---|
主な用途 | 血管造影、臓器の詳細描出 | 中枢神経・軟部組織の描出 |
主な副作用 | 造影剤腎症、アレルギー | 腎性全身性線維症(極めてまれ) |
使用禁忌 | 腎機能低下、喘息、甲状腺疾患 | 腎機能重度低下者 |
ビグアナイド系糖尿病薬(例:メトホルミン)を服用中の場合は、ヨード造影剤との併用によって乳酸アシドーシスのリスクが高まるため、48時間前後の休薬が必要です。
絶食や事前準備の違い
CT検査前の注意点
・単純CT(頭部、胸部など):基本的に絶食不要。
・腹部CT、造影CT:絶食が必要(検査4時間前から)。胆のう・膵臓・消化管の描出精度のため。
・大腸CT(CTコロノグラフィー):前日からの食事制限と下剤使用。
MRI検査前の注意点
・造影MRI(腹部や脳血管の評価):CTと同様に原則絶食。
・非造影MRI:絶食不要。ただし撮影部位によって異なるため事前確認が必要。
費用・設備の違い
CTとMRIでは装置価格・検査費用にも差があります。
比較項目 | CT | MRI |
---|---|---|
装置価格の目安 | 約2000万円〜 | 約5000万円〜 |
検査費用(保険3割負担時) | 約5,000〜8,000円 | 約8,000〜12,000円 |
検査時間 | 数十秒〜数分 | 約30〜60分 |
検査費用は医療機関や保険の条件によって異なりますが、MRIの方が高額かつ検査時間も長めです。
レントゲンとの違いも知っておこう
一般的に「レントゲン」と呼ばれるのは、X線写真のことです。正式には「X線検査」と表記され、CTも同じX線を使用しますが、CTはコンピュータによる断層画像であり、レントゲンよりも詳細な情報を得ることができます。
レントゲン=平面写真
CT=輪切りの断層画像
MRI=任意断面の高コントラスト画像(非X線)
MRIとCT、適材適所で使い分けを
MRIとCTはどちらが優れているというわけではなく、「何を見たいのか」「どんな患者か」によって使い分けられるものです。
・時間をかけて詳細に脳や関節を見るならMRI
・緊急で全身評価をしたいならCT
・骨や肺ならCT、軟部組織ならMRI
・被曝を避けたいならMRI
医療者とよく相談し、自分の症状や体質に合った検査を選びましょう。