2025年5月31日更新.2,483記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

MRIとCTの違いは?

MRIとCTの違いは?

MRIとCTは、いずれも病気の診断に欠かせない画像検査ですが、それぞれの仕組みや適応には大きな違いがあります。

MRIとCTの基本原理の違い

CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)
CTはX線を使って身体の断面画像を撮影する検査です。X線を体の周囲から照射し、その透過度を検出器で測定。コンピュータ処理によって画像が再構成されます。現在では「マルチスライスCT(MDCT)」という高速撮影可能な装置が一般的で、頸部から骨盤まで約25秒程度で撮影可能です。

CTの特徴:
・撮影時間が短く、救急や広範囲の検査に適する
・骨や肺の描出が得意
・画像はやや粗く、軟部組織のコントラストはMRIに劣る
・放射線被曝がある

MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)
MRIは強い磁場とラジオ波を用いて体内の水素原子の動きを解析し、断面画像を構築する検査です。X線を使用しないため、放射線被曝がありません。

MRIの特徴:
・被曝がないため、妊婦や子どもの検査にも適する
・水分量が多い軟部組織(脳、脊髄、筋肉、関節など)の描出に優れる
・任意の断面像を自由に取得できる
・撮影時間が長く(30〜60分)、閉所恐怖症には不向き
・骨の描出は苦手
・磁気を使うため、ペースメーカー装着者には禁忌

CTMRI
撮影原理X線の吸収磁気の共鳴
撮影方法単純と造影撮影が基本多岐にわたる
放射線被爆ありなし
骨・空気の影響ありなし
画像エックス線フィルム同様、骨は白く、空気は黒くみえる骨も空気も無信号となり、区別されない
基本横断面任意の断面
撮影時間比較的短い(10~15分)比較的長い(30分程度)
特化部位脳・肺・腹部・骨脳・脊髄・関節・骨盤腔内臓器
頭蓋骨内病変頭部外傷・脳出血・くも膜下出血早期の脳梗塞・脳ドッグ
長所撮影時間が比較的短く、容易に断層像が得られる。
頭部救急病変(出血の疑いなど)への適応が高い。
骨の情報が得られる。
放射線被曝が無く、組織間コントラストに優れる。
任意の断層像を得ることができ、撮像法を変えることで病変の質的評価ができる。
造影剤なしで血管の画像が得られる。
短所放射線被曝がある体内に金属(ペースメーカー等)が入っている方は、検査できない。
撮影時間が長く、狭いところに入るイメージ(閉所恐怖症や安静が保てない場合は難しい)。
検査中、装置から工事現場のような大きな音が聞こえる。
検査費用が高額

※CTは「骨の構造」を見るのに優れ、MRIは「骨の中」や「軟部組織」の状態を評価するのに適しています。

被曝と安全性の違い

CTはX線を使用するため被曝のリスクがあり、特に妊婦や小児には慎重に適応を判断します。一方、MRIは磁気を用いるため被曝はなく、繰り返し検査にも適しています。

ただし、MRIは磁場の影響を受けるため、心臓ペースメーカー、金属製インプラント、磁気カード類の所持には厳しい制限があります。

造影剤の違いと注意点

画像検査では病変の輪郭を明確にするため、造影剤を使用することがあります。CTとMRIでは使用する造影剤が異なり、それぞれにリスクもあります。

項目CT(ヨード造影剤)MRI(ガドリニウム造影剤)
主な用途血管造影、臓器の詳細描出中枢神経・軟部組織の描出
主な副作用造影剤腎症、アレルギー腎性全身性線維症(極めてまれ)
使用禁忌腎機能低下、喘息、甲状腺疾患腎機能重度低下者

ビグアナイド系糖尿病薬(例:メトホルミン)を服用中の場合は、ヨード造影剤との併用によって乳酸アシドーシスのリスクが高まるため、48時間前後の休薬が必要です。

絶食や事前準備の違い

CT検査前の注意点
・単純CT(頭部、胸部など):基本的に絶食不要。
・腹部CT、造影CT:絶食が必要(検査4時間前から)。胆のう・膵臓・消化管の描出精度のため。
・大腸CT(CTコロノグラフィー):前日からの食事制限と下剤使用。

MRI検査前の注意点
・造影MRI(腹部や脳血管の評価):CTと同様に原則絶食。
・非造影MRI:絶食不要。ただし撮影部位によって異なるため事前確認が必要。

費用・設備の違い

CTとMRIでは装置価格・検査費用にも差があります。

比較項目CTMRI
装置価格の目安約2000万円〜約5000万円〜
検査費用(保険3割負担時)約5,000〜8,000円約8,000〜12,000円
検査時間数十秒〜数分約30〜60分

検査費用は医療機関や保険の条件によって異なりますが、MRIの方が高額かつ検査時間も長めです。

レントゲンとの違いも知っておこう

一般的に「レントゲン」と呼ばれるのは、X線写真のことです。正式には「X線検査」と表記され、CTも同じX線を使用しますが、CTはコンピュータによる断層画像であり、レントゲンよりも詳細な情報を得ることができます。

レントゲン=平面写真
CT=輪切りの断層画像
MRI=任意断面の高コントラスト画像(非X線)

MRIとCT、適材適所で使い分けを

MRIとCTはどちらが優れているというわけではなく、「何を見たいのか」「どんな患者か」によって使い分けられるものです。

・時間をかけて詳細に脳や関節を見るならMRI
・緊急で全身評価をしたいならCT
・骨や肺ならCT、軟部組織ならMRI
・被曝を避けたいならMRI

医療者とよく相談し、自分の症状や体質に合った検査を選びましょう。

コメント


カテゴリ

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書: 薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
SNS:X/Twitter
プライバシーポリシー

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

最新の記事


人気の記事

検索