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五十肩にH2ブロッカーが効く?
公開. 更新. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約3分13秒で読めます.
9,169 ビュー. カテゴリ:H2ブロッカーと肩関節周囲炎
シメチジン(タガメット)やファモチジン(ガスター)などのH2ブロッカーが、石灰沈着性の腱板炎や関節周囲炎に使われることがある。
効果を示すメカニズムは明確にはなっていませんが、カルシウム代謝に関連する副甲状腺ホルモンの分泌抑制作用や、末梢のH2受容体に対する直接作用などが考えられています。
ちなみに適用外使用です。
H2ブロッカーの石灰沈着症に対する効果は、原発性副甲状腺機能亢進症患者にシメチジンを投与し、副甲状腺ホルモン(PTH)や血清カルシウム濃度が正常化したとの報告がある。
作用機序は不明ですが、「カルシウムを溶かす薬」と説明されることもあり、そう言われると骨粗鬆症になりそうでちょっと怖い。
ガスターやタガメットの副作用には、骨に関する影響は見られないので、問題は無さそうですが。
五十肩や石灰沈着性腱板炎では、大抵NSAIDsなどの鎮痛薬が処方されており、胃腸障害の予防に胃薬が併用されることが多いので、その際H2ブロッカーを併用してみる、という選択もある。
石灰沈着性腱板炎にH2ブロッカーを用いる際には、消化性潰瘍に対する常用量を投与することが多く、治療効果は用量に依存するとされている。ただし、石灰沈着性腱板炎に対する処方は適応外である。そもそも石灰吸収は、自然経過を見ているにすぎず、H2ブロッカーと無関係であるとの意見もあり、さらなる臨床研究の積み重ねが必要とされている。
H2ブロッカーの作用機序
H2受容体拮抗薬に石灰沈着の減少作用や疼痛改善作用が報告されている。
この主要なメカニズムとしては、上皮小体のH2受容体を介したPTH(副甲状腺ホルモン)分泌抑制作用だと考えられている。
これは、血中のカルシウム量が正常にもかかわらず、PTHが過剰に分泌される上皮小体機能亢進症患者にH2受容体拮抗薬を投与すると、PTHやカルシウム濃度が正常化したという報告があるためである。
また、骨格筋の中の末梢血管に存在するH2受容体への作用の関与も示唆されている。
五十肩と石灰沈着性腱板炎の違いは?
そもそも五十肩の定義があいまいですが、医学的には肩関節周囲炎という。
全てひっくるめて、世間一般には「肩こり」と言われる。
しかし、「石灰沈着性腱板炎」と言うと重い疾患の印象を与える。
石灰沈着性腱板炎は、肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)の炎症であるいわいる五十肩(肩関節周囲炎)の症状とよく似ており、X線(レントゲン)撮影によって腱板部分に石灰沈着の所見を確認する事によって診断します。
肩関節石灰沈着性腱板炎
肩関節には棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の四つの筋腱からなる腱板がある。
そこにカルシウム塩が沈着し、炎症を起こすのが肩関節石灰沈着性腱板炎である。
40~50歳代の女性に多く発症し、安静時痛や患部の圧痛、疼痛による可動域制限が主な症状である。
肩関節の腫板への石灰沈着は、欧米では人口の2.7~7.5%に認められ、そのうち35~45%で痛みが出ると報告されている。
ただし、俗に「四十肩」「五十肩」と呼ばれる肩関節周囲炎とは別の疾患である。
石灰沈着性腱板炎の発症メカニズムは明らかにされていないが、更年期の女性に多いことから、カルシウム代謝の変化に伴う血中の副甲状腺ホルモン(PTH) およびカルシウムの濃度上昇が、腱板などへの石灰沈着を引き起こすという仮説が有力視されている。
急性期には石灰化による化学反応や石灰化巣の拡大による関節内圧の上昇により、激しい痛みを生じる。
慢性化するにつれ、肩峰下滑液包の肥厚や滑液包と腱の肩峰との衝突(インピンジメント) による症状、さらには関節拘縮による痛みも加わっていく。
ちなみに、関節周囲に沈着しているカルシウム塩は、歯や骨を構成するヒドロキシアパタイトではなく、ヒドロキシル基を含まないカルボン酸アパタイトであることが報告されている。
石灰沈着性腱板炎の治療法としては、急性期には麻酔薬やステロイドの局所注入、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) の投与が、慢性期には沈着した石灰の吸引除去や外科的摘出などが行われる。
五十肩と四十肩
五十肩も四十肩も正式には肩関節周囲炎といって同じ病気です。
五十肩より四十肩のほうがまだマシ、なわけではありません。
四十肩という呼び方は、以前はまれで、ほとんどが五十肩と呼んでいましたが、近年発症の低年齢化が目立つようになり、四十肩という呼び方が増えています。
私はまだ30代なので、三十肩です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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1 件のコメント
>そもそも五十肩の定義があいまいですが、医学的には肩関節周囲炎という。
>全てひっくるめて、世間一般には「肩こり」と言われる。
この記述は間違っていると思う。
普通、五十肩を肩こりなんて呼んだりはしない。