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H2ブロッカーが不妊の原因?
公開. 更新. 投稿者:妊娠/授乳.この記事は約6分12秒で読めます.
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高プロラクチン血症と不妊症
プロラクチンとは、乳汁分泌ホルモンとも呼ばれ、脳下垂体から分泌されるホルモンで、乳腺を刺激して母乳の分泌を促進する働きがあります。
妊娠も出産もしていないのに、プロラクチンが過剰に分泌されることがあり、これを「高プロラクチン血症」といいますが、それにより乳汁の分泌があったり、胸が張ったり、排卵が抑制されてしまったりします。
つまり不妊症の原因になります。
高プロラクチン血症を引き起こす薬剤としては、
①抗ドパミン作用を有する向精神病薬:三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、イミプラミン)、抗精神病薬ブチロフェノン系(ハロペリドール)、フェノチアジン系(クロルプロマジン、ベルフェナジン)
②抗ドパミン作用を有する消化器系薬剤:制吐剤(メトクロプラミド、スルピリド、ドンペリドン)、H2受容体拮抗薬(シメチジン、ラニチジン)
③中枢ドパミン系に影響を与える降圧剤(α-メチルドパ、レセルピン)
④経口避妊薬(エストロゲン製剤)
などが考えられます。
H2ブロッカーの抗ドパミン作用については、どの程度のものかわかりませんが、シメチジンの副作用には女性化乳房や乳汁分泌と記載されており、プロラクチン値を上昇させる副作用がある。
不妊症とプロラクチン
不妊症の原因の一つに、血中のプロラクチン濃度が基準値を超えて高値を示す高プロラクチン血症がある。
プロラクチンは、大部分が下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞で産生されており、乳腺の発達や乳汁分泌、黄体機能の調節などの生理作用を示す。
プロラクチンが高値になると、乳汁漏出や排卵傷害、月経異常(無月経、希発月経、黄体機能不全)、骨量減少といった症状が表れる。
排卵障害や黄体機能不全などの卵巣機能不全が不妊症に結びつくと考えられている。
高プロラクチン血症は、生殖異常のある女性のうち9~17%で認められるとの報告がある。
高プロラクチン血症の治療薬
高プロラクチン血症を引き起こす原因には、機能性や薬剤性、プロラクチノーマ(プロラクチン産生下垂体腫瘍)などがある。
このうち機能性高プロラクチン血症は、下垂体からのプロラクチン分泌が亢進している状態を指し、その原因としてプロラクチン分泌を抑える視床下部のドパミン分泌が充足していないことが考えられている。
プロラクチンは主にドパミンによって産生が抑制される。
そのため、高プロラクチン血症の薬物療法では、ドパミン作動薬を第一選択とする。
治療では、下垂体にプロラクチン産生腫瘍がある場合には手術療法が考慮されるが、一般的には、ドパミン作動薬を中心とした薬物療法が行われる。
カベルゴリン(カバサール)、ブロモクリプチンメシル酸塩(パーロデル)、テルグリド(テルロン)は、高プロラクチン血症に適応があり、カバサールとパーロデルはパーキンソン病の適応も有する。
ドパミン作動薬投与後、速やかにプロラクチン値が低下し、90%の患者で3か月以内に排卵を認めるとの報告がある。
ただ、ドパミン作動薬の服用はあくまでもプロラクチン値の低下であるため、基準値を下回っても排卵が伴わない場合には排卵誘発(ゴナドトロピン療法やクロミフェン療法)などを追加する。
ドパミン作動薬による催奇形性は否定されているが、妊娠した場合には服用を中止する。
パーロデルと高プロラクチン血症
ブロモクリプチンは高プロラクチン血症による無排卵症例の76.7%(165/215例)で排卵が再開し、不妊症例の15.3%(78172 例)が妊娠したとの報告がある。
なお、ブロモクリプチンは、プロラクチン関連疾患のほか、末端肥大症や下垂体性巨人症、パーキンソン症候群にも適応がある。
いずれもドパミン受容体刺激作用により改善が期待できる。
すなわち、ブロモクリプチンが下垂体系ドパミン受容体に作用するとプロラクチンや成長ホルモンの過剰分泌が抑えられ、プロラクチン関連疾患や末端肥大症、下垂体性巨人症に効果を示す。
一方 同薬が中枢神経系に作用すると、抗パーキンソン効果を表す。
ただし、ブロモクリプチンは胃よび順吐中枢のドパミン受容体も刺激するため、悪心・嘔吐などの消化器障害が出現することがある。
多くの場合、投与を継続するうちに症状が軽くなるので、投与最をl1日1.25mgから始め、徐々に増量して慣らすといった対応が取られる。
さらに、胃腸への刺激を緩和し、薬剤の吸収を緩徐にするため、食直後に服用する。
なお、就寝前の服用により、 症状が緩和されるとの報告もある。
ブロモクリプチンは、妊娠後は原則的に投与を中止するよう添付文書に記載されている。
母乳中への移行は認められていないものの、 乳汁分泌を抑制するため、授乳を望む母親にも投与しないこととされている。
ただし、プロラクチン産生腫瘍では、妊娠中の腫瘍拡大を防ぐために投与が継続されることがある。
プロラクチンと乳汁漏出
プロラクチンは主に下垂体や妊娠子宮膜から産生されるホルモンであり、妊娠期や産縛期に分泌が亢進し、乳汁分泌を促進したり月経を止めておく作用などがある。
そのため、妊娠や出産以外の時期にプロラクチン分泌が異常に亢進すると、乳汁漏出症が引き起こされる。
また、高プロラクチン血症が下垂体からの卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの分泌を抑制し、卵胞が発育せず排卵が障害され、月経異常や不妊症につな がることも多い。
排卵のメカニズム
排卵は通常、(1)視床下部がGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)を分泌、(2)下垂体がGnRHに刺激され、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)を分泌、(3)卵巣がFSHやLHの刺激で排卵といった順で起きる。
こうした排卵までの流れは、刺激された卵巣が放出するエストロゲンの量によってフィードバック制御されている。
具体的には、視床下部の受容体が血中エストロゲンの上昇を感知し、GnRHの分泌をストップする。
この視床下部の受容体において、クロミフェンは、内因性のエストロゲンと競合的に拮抗し、エストロゲンによるフィードバック機構を遮断して、GnRHの分泌を促進するのである。
プロラクチンと排卵障害
抵抗性の排卵障害患者に比較的多いのが、高プロラクチン血症である
プロラクチンは、分娩後に乳汁の分泌を促す作用を有する。
この分泌にも、FSHやLHと同様、視床下部と下垂体が関与したフィードバック制御機構がある。
すなわち、視床下部から分泌されたPRH(プロラクチン放出ホルモン)が下垂体を刺激することでプロラクチンが分泌されるが、血中プロラクチン濃度が高いと視床下部は自らの機能を低下させ、PRHを分泌しなくなる。
このため、高プロラクチン血症の状態だと、フィードバック制御による視床下部の機能低下で、GnRH分泌までもが抑制され、結果的に排卵障害が起きる可能性がある。
このような考えから、高プロラクチン血症を伴う排卵障害患者には、プロラクチンの分泌を抑制するドパミンD2受容体刺激薬であるブロモクリプチンメシル酸塩(パーロデル)やテルグリド(テルロン)が使用される。
高プロラクチン血症のリスク
高プロラクチン血症は女性では月経不順、無月経、乳汁分泌、性欲低下などの原因となります。
男性では射精障害、勃起障害、女性化乳房、性欲低下などの原因となります。
若年の患者さんにおいてこれらは服薬アドヒアランスを低下させる大きな原因になります。
長期間にわたる高プロラクチン血症は心血管障害など、さまざまな身体疾患のリスクを高めると考えられ、わが国でも高プロラクチン血症が骨粗鬆症のリスクを高めるという報告がなされています。
無症状の高プロラクチン血症は治療しなくていい?
妊娠を希望している人では、高プロラクチン血症だと妊娠しにくいので、カバサールとか飲みます。
無月経とか乳汁漏出とかある人も治療の対象となります。
しかし今は、無症候性高プロラクチン血症や、潜在性高プロラクチン血症は治療の対象にしないことも多い。
下げ過ぎは逆に妊娠率の低下を招く可能性もあるという。
卵胞発育不全(月経不順、無月経)や黄体機能不全を認める高プロラクチン血症は治療の対象となる。
抗精神病薬による高プロラクチン血症
高プロラクチン血症といえば、抗精神病薬、ドパミン遮断薬の副作用。
これも、無月経とか乳汁漏出などの自覚症状が無ければ無視していいものか。
高プロラクチン血症及び無月経を放っておいた場合、長期的にはどんな有害作用があるか、明快な答えは出ていません。
そのため、これらの副作用は軽視され、放置されているケースが多い。
薬を止めようにも精神症状が悪化してやめられないケースも多い。
ドグマチールで高プロラクチン血症というのも多いですが、ドグマチール程度なら別の薬に変えても問題は無さそう。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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