2024年11月22日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ステロイドによる骨壊死

ステロイド骨粗鬆症

ステロイド(副腎皮質ホルモン)であるグルココルチコイドは、抗炎症・免疫抑制作用などを有するため、関節性リウマチ・気管支喘息など、多くの疾患に長期にわたって使用されます。

しかし、長期間の服用で副作用を引き起こすことが知られており、骨がもろくなる、骨密度が減少するのもその1つで、ステロイド性骨粗鬆症といわれます。

ステロイド剤には、骨を作る細胞(骨芽細胞)の活性を低下させるとともに、破骨細胞の活性を亢進する作用があります。

その度合いはステロイド剤の用量に依存することが判明しています。

ステロイド骨粗鬆症の発症機序として、①グルココルチコイドが直接骨芽細胞の機能を抑制する(骨形成抑制)、②グルココルチコイドが腸管に直接作用して、腸管からのカルシウム吸収を抑制し、尿中へのカルシウム排泄を促進する(二次性副甲状腺機能亢進症)、③性ホルモンの分泌が低下する、が挙げられます。

骨量減少は皮質骨よりも海綿骨の多い脊椎などに起こりやすく、脊椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折につながり、患者のQOLを低下させます。

骨折には骨量減少のほかに、高齢者、骨折既往歴のある人、副腎皮質ホルモン剤を3ヶ月以上使用する症例や量の増加などが関与していて、これらのハイリスク患者では積極的な予防と治療が必要となります。

ステロイドと骨密度

骨密度は、ステロイドの服用後、始めの数カ月間は8~12%、その後は2~4%の割合で減少する。
また、1日2.5mg以上服用しているRA患者では、治療開始後3~6ヵ月で骨折リスクが最大に達することが明らかになっている。

ステロイド骨粗鬆症では骨密度が高くても骨折する

ステロイドの副作用で骨粗鬆症があります。

ステロイドの使用は、骨折のリスクを2~4倍に高めるとされています。

問題なのは、通常の骨粗鬆症に比べて高い骨密度でも骨折が起こることです。

骨量減少にとどまらず、ステロイドの骨質に及ぼす影響についても懸念が深まっています。

ステロイド性骨粗鬆症に関する最近の臨床知見

・プレドニゾロン換算で2.5mg/日未満の少量ステロイドでも脊椎椎体骨折のリスクが増加する(1.55倍)

・投与中止後骨折リスクは低下していくが、中止2年では非投与例と同じレベルまでは低下しない

・プレドニゾロン換算で2.5mg/日以上使用例では、投与開始後3~6ヶ月で骨折リスクが最大に達する

・プレドニゾロン換算で20mg/日を超えると骨折リスクは急激に増大する

・高い骨密度でも骨折を起こしやすく、骨折を回避するための安全なプレドニゾロン1日投与量を算定すると、71μg/日であったとの報告があり、安全な治療用量はないと考えられる

・吸入ステロイドでも、①65歳以上、②閉経後女性、③高用量の吸入ステロイドを使用中、④性腺機能低下症の合併、のいずれかの条件を満たす場合は骨粗鬆症の管理と指導が必要である

ビスホスホネートの予防投与

ステロイド性骨粗鬆症の場合、経口ステロイド薬を3ヶ月以上使用中または使用予定で、脆弱性骨折あり、骨密度YAM80%未満、プレドニゾロン換算5mg/日以上のいずれかの場合は治療を開始する必要がある。

ステロイドと大腿骨頭壊死

ステロイドの副作用で大腿骨頭壊死を起こしたという患者がいる。

骨にも血液が流れており、大腿骨頭は血流障害を起しやすい場所である。
大腿骨頭は軟骨で被われており、関節内に深く納まっているため血管が少なく、血流障害を起すと骨の壊死が引き起こされます。

骨は壊死していても潰れなければあまり症状を出さないので、定期的な検査が必要です。
しかし診断は早期には単純X線(レントゲン)で変化が見えませんので、疑われたらMRIを撮ります。

骨壊死は不可逆的であり、起こってしまうと人工股関節に置き換える手術が必要になることもある重大な副作用である。

吸入ステロイド薬と小児の発育遅延

吸入ステロイドは直接肺及び気道に作用するので、飲み薬と違って少量ですみます。

しかも、消化管や肺から吸収された薬の大部分は、すぐに肝臓で分解されるので全身性の副作用はほとんどないと言っても過言ではないでしょう。

吸入ステロイド薬と小児の発育遅延について問題となっていましたが、現在は、一時的に成長へのわずかな影響が見られても、長期的な成長(最終身長)に影響を与えないという結論に達しています。

喘息患者の身長発達の抑制は、薬をきちんと使わず、夜間の症状で睡眠不足となり、成長ホルモンの分泌が不十分になるのが原因という話も。

吸入ステロイドの中でもフルタイドは抗炎症作用が強く、肺内到達率が低いので全身性の副作用が少ないため、成長抑制の副作用があまり無いようです。

フルタイドの成長遅延

フルタイドの添付文書には以下の記載があります。

小児等への投与
全身性ステロイド剤と比較し可能性は低いが、吸入ステロイド剤を特に長期間、大量に投与する場合に成長遅延をきたすおそれがある。長期間投与する場合には投与量は患者毎に喘息をコントロールできる最少用量に調節することとし、身長等の経過の観察を十分行うこと。また使用にあたっては、使用法を正しく指導すること。

ベクロメタゾンに関しては、5~18歳の軽症瑞息児に対し44週間の連日吸入(1日80μg)を行った結果、1.1±0.3cmの成長抑制が認められました。
また、ブデソニドでは、5~12歳の喘息児が1日400μgの吸入を4年間継続すると、1年目に1.1cmの成長抑制が認められました。
さらに、長期のフォローアップでは、最終身長でも1.2cmの成長抑制が認められました。

成長抑制は、単純な身体サイズだけの問題に留まらず、内分泌機能や免疫機能など全身的な障害の可能性をも意味するため、低年齢では特に注意が必要となります。
フルチカゾンは、前述のベクロメタゾンやブデソニドに比べ、有効性が高く副作用のリスクが低いとされています。
小児喘息を対象としたフルチカゾンに関する過去の論文からは、次のような特徴を見いだすことができます。
(1)年少で(2歳以下)、体格の小さな(15kg未満)子どもに200/μg/日以上を長期間(2年以上)投与すると成長抑制の可能性が生じる、(2)年齢を問わず高用量(375
μg/日以上)投与で成長抑制の可能性が生じる。つまり、小さな子でも、少ない量(200μg/日以下)を2年以内に用いる限り、副作用のリスクは小さいといえます。
シクレソニドも安全性で高い評価を得ています。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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