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アンカロンで甲状腺機能亢進症になる?
公開. 更新. 投稿者:甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症.この記事は約3分46秒で読めます.
2,508 ビュー. カテゴリ:アンカロンと甲状腺
抗不整脈薬であるアンカロンの使用上の注意に「甲状腺機能障害又はその既往歴のある患者[甲状腺機能障害を増悪させるおそれがある]」との記載がある。
この理由としては、アンカロン(アミオダロン)はヨウ素を大量に含有するためです。構造式をみるとわかります。
アンカロン(アミオダロン)は100㎎中にヨード37mgを含むため、ヨード誘発性の甲状腺ホルモン産生過剰を起こす可能性がある。
ヨウ素は元来、甲状腺ホルモン合成を用量依存的に増加させる。
しかし、大量投与によって甲状腺ホルモンの合成が抑制され、甲状腺の機能が低下することがある(ウォルフ・チャイコフ効果)。
従って、アミオダロンは甲状腺機能の亢進と低下のいずれも来し得る。
アンカロンによって甲状腺機能亢進症が起こった場合には、それに伴い不整脈が起こることもある。
抗不整脈薬によって不整脈が引き起こされるという皮肉。
甲状腺機能低下症を起こす薬
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌量や活性が不十分となる疾患であり、自己免疫により甲状腺が障害される橋本病がよく知られている。
橋本病は、甲状腺組織がリンパ球の浸潤を受け、線維化して甲状腺濾胞細胞が破壊されるために生じる疾患で、患者は圧倒的に女性が多い。
甲状腺機能低下症の症状は徐々に表れる。
全身症状としては、易疲労感、脱力感、食欲低下、便秘などに加え、体重増加、顔面や下肢のむくみ、脱毛なども見られる。
甲状腺機能低下症を来す可能性のある薬剤は、大きく3種類に分けられる。
①甲状腺ホルモン合成・分泌を抑制するものとして、ヨード造影剤、炭酸リチウム、ステロイド、アミオダロン塩酸塩、ポピドンヨードなど、
②甲状腺ホルモン代謝を亢進するものとして、リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトインなど、
③サイロキシン(T4)からトリヨードサイロニン(T3)への変換を抑制するものとして、アミオダロン、ステロイド、β遮断薬、プロピルチオウラシルなど、である。
リチウムと甲状腺機能
甲状腺機能低下症を引き起こす薬剤として、炭酸リチウムが有名である。
リチウムが甲状腺に取り込まれ甲状腺ホルモンの分泌を抑制する。
β遮断薬と甲状腺機能低下症
β遮断薬はT4からT3への変換を阻害するほか、末梢でのβ受容体を遮断することで、過剰な甲状腺ホルモンにより生じる頻脈などの諸症状を抑制する。
この作用により、甲状腺機能亢進症の患者には、β遮断薬がしばしば処方される。
アンカロンと授乳婦
産婦人科診療ガイドラインでは、授乳婦に投与すべきではない薬剤として、①抗悪性腫瘍薬、②放射性ヨウ素など治療目的の放射性物質、③抗不整脈薬のアミオダロン塩酸塩(アンカロン)の3剤を挙げている。
アミオダロンは活動電位持続時間延長作用をもつK+チャネル遮断薬で、Ⅲ群に分類される。
ヨウ素を多く含有する構造で、妊娠中に投与して新生児に先天性の甲状腺腫、甲状腺機能低下症および甲状腺機能亢進症を起こしたとの報告があるほか、母乳中に移行し、乳児の甲状腺機能を抑制する。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が低下して活動性が低下する病気です。
圧倒的に女性に多く(男女比は1対10以上)、40歳以後の女性では軽症なものも含めると全体の5%にみられます。
成人に起こり、症状がはっきり出ているものは粘液水腫、小児にみられる先天性のものはクレチン病とも呼ばれます。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの産生や分泌が低下し、易疲労感や便秘、嗄声、浮腫、体重増加などの症状を呈する疾患である。
甲状腺の疾患に起因する原発性と、各種ホルモンを産生する視床下部と下垂体の疾患に起因する二次性に分類され、患者数は原発性の方が多い。
原発性としては、外科的処置や放射線治療で甲状腺の機能が低下した医原性や、薬剤性もあるが、ほとんどは橋本病(慢性甲状腺炎)である。
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