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ブイタマークリームは乾癬にもアトピーにも使える?新作用機序「AhRモジュレーター」
公開. 更新. 投稿者:アトピー性皮膚炎/ステロイド外用薬.この記事は約2分17秒で読めます.
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2024年に新しく登場した外用薬「ブイタマークリーム1%」。成分名はタピナロフで、分類はアリル炭化水素受容体モジュレーター(AhRモジュレーター)という、これまでになかった作用機序を持っています。
「アゴニスト」「アンタゴニスト」なら馴染みがありますが、「モジュレーター(調節薬)」とは、受容体を活性化も抑制もすることでバランスをとるタイプの薬。たとえば、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)と同様に、組織や状況に応じて柔軟に作用します。
タピナロフのターゲット:AhRとは?

AhR(芳香族炭化水素受容体)は、体内の多くの細胞に存在するリガンド依存性転写因子です。食物成分や腸内細菌由来代謝物、大気汚染物質など、多様な化合物に反応し、免疫系の調整や解毒、エネルギー代謝、分化・発生に関与します。
ここで思い出されるのがダイオキシンです。ダイオキシンもAhRに結合するリガンドの一つ。ただしダイオキシンはAhRを過剰に活性化して酸化ストレスや毒性を引き起こします。
一方、タピナロフはAhRを適度に活性化し、皮膚の炎症を抑制する方向に作用します。ダイオキシンと同じ受容体に働きかけながら真逆の効果をもたらすのが、この薬のユニークな点です。
ブイタマークリームは現在、
・アトピー性皮膚炎
・尋常性乾癬
の2つの皮膚疾患に対して適応を持ちます。日本では、アトピー性皮膚炎に対する適応が世界で初めて承認された点でも注目されています。
アトピー性皮膚炎と乾癬の治療薬
アトピー性皮膚炎:ステロイド、プロトピック、JAK阻害薬(コレクチム)、PDE4阻害薬(モイゼルト)など
尋常性乾癬:ステロイド、活性型ビタミンD3、(生物学的製剤は外用ではない)
ブイタマーは、この両疾患に使える数少ない外用薬として、皮膚科治療の選択肢を広げる新顔となっています。
なぜ「アトピーにも乾癬にも」効くのか?
一見、アトピー(アレルギー性炎症)と乾癬(ターンオーバー異常)は異なる病態のように思われますが、いずれも免疫異常が根底にあり、最終的に免疫抑制薬が用いられるという共通点があります。AhRの働きを調節することで、タピナロフは両疾患に対し効果を示すと考えられています。
現在のところ、ブイタマーは外用薬に限定されており、内服薬としての開発はなさそうです。これは、ダイオキシンのような環境汚染物質と同じAhRをターゲットにしているため、全身性の副作用リスクを避ける配慮といえるでしょう。
とはいえ、AhRリガンドには、
・皮膚炎を悪化させるもの(ダイオキシンなど)
・皮膚炎を改善させるもの(コールタール、大豆由来タールなど)
があることが知られており、タピナロフは後者の性質を活かした”都合のよいAhR活性化薬”という位置づけです。
ブイタマークリーム(タピナロフ)は、AhRという免疫・炎症制御に関わる受容体を調節する新機序の外用薬です。
アトピー性皮膚炎と乾癬の両方に使える、日本発の新しい治療オプション。
同じAhRに作用しても、ダイオキシンとタピナロフでは全く異なる影響を与える。
今後の実臨床での使用動向や副作用の蓄積に注目が集まる。