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ニトログリセリン舌下錠は1日何回まで使っていい?
公開. 更新. 投稿者:狭心症/心筋梗塞.この記事は約6分6秒で読めます.
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ニトログリセリンの使用回数
舌下錠や舌下スプレーなどは飲み込まずに効果を発揮する薬です。
舌の下の粘膜から吸収される、って言われても本当に効くのかな、って疑いたくなります。
狭心症の発作で苦しいときに、1回使って効かないと、すぐにもう1回使いたい、と思ってしまいます。
ニトロペン、ニトロールスプレー、ミオコールスプレーなどのニトロ製剤。
添付文書には1日の使用回数制限などは書かれていない。
基本的には使用間隔さえ十分空ければ、1日何回使っても構いません。
ただ、発作時は強い痛みのため何回も使用しようとする患者もいるが、血圧低下から意識喪失に陥る可能性があり、注意を喚起しなければならない。
特にスプレータイプだと特に何回も使ってしまうケースがあるようです。
スプレー剤を一度に3回~6回噴霧し、血圧低下から意識を失った例というのも報告されています。
使用間隔について、一般的には1回使用した後、30~60分は間隔をあけて使うようにする。
ニトロペンの使用法は、添付文書に、以下のように記載されている。
(1) 投与後、数分間で効果をあらわすが、効果があらわれない場合には更に1〜2錠を追加投与すること。
(2) 1回の発作に3錠まで投与しても効果があらわれない場合、発作が15〜20分以上持続する場合には、直ちに主治医に連絡するよう患者を指導すること。
海外でのニトログリセリンスプレー剤の使用法は以下のようになっている。
国名 | 発作寛解時の用法・用量 |
---|---|
アメリカ | 1 ~ 2 噴霧を舌の上又は舌下に投与する。 必 要 に 応 じ て3 ~ 5 分後(Nitoro Mist は 5 分 後 ) に1 噴霧する。15 分以内に 3 噴霧を超えて投与しない。 |
ドイツ | 1 ~ 3 回、 約 30 秒の間隔を置いて呼吸を止め口腔内に、できれば舌下に噴霧する。 |
イギリス | 1 ~ 2 噴霧を舌下に投与する。 効果不十分の場合は、5 分の間隔を空け、計 3噴霧まで投与してよい。 |
フランス | 0.15 ~ 0.3mg 噴霧す る。 発作が持続する場合には、2 ~3 分後に 0.3mg 噴霧する。 |
精神的ストレスが起こりそうな前とか、運動前に予防的に投与することもできる。
そう考えると、1日に何回も使ってしまうケースも考えられ、スプレー100回分を1か月で使い切ってしまうこともあるのかと思う。
副作用の心配はほとんどないとしても、薬剤耐性や病状悪化の可能性もあるので、使用回数、使用時間は医師に伝えるように指導する。
硝酸薬の作用発現時間と作用持続時間
狭心症の発作時に硝酸剤が頓服で処方される。
狭心症では、心筋に供給される血液が不足して、胸に圧迫感を感じたり、しめつけられるように痛みます。
さらに、血管が詰まり血流が止まってしまうと、ついには心筋梗塞に至ることもあります。
硝酸剤は、冠動脈拡張薬です。
心臓の冠動脈を拡張し、心筋に血液がたくさん届くようになり、心臓の負担を軽くします。
心筋の血液不足が解消され、狭心発作がおさまります。
原因そのものを治す薬ではないので、発作の頻度が多ければ、また別の対処法が必要になるでしょう。
発作時に使って、どのくらいの時間で効くかは以下のとおり。
分類 | 医薬品名 | 一般名 | 効果発現時間 | 効果持続時間 | 規格剤形 | 用法用量 |
---|---|---|---|---|---|---|
速効性硝酸薬 | 亜硝酸アミル「AFP」 | 亜硝酸アミル | 30秒以内 | 4~8分 | 液:1管中0.25mL | 1回1管を、被覆を除かずそのまま打ち叩いて破砕し、内容を被覆に吸収させ、鼻孔に当てて吸入させる。 |
ニトロールスプレー | 硝酸イソソルビド | 1~2分 | 30~120分 | スプレー:1.25㎎㎎/噴霧(100回用) | 1回1噴霧 を口腔内に投与する。 効果不十分の場合には、1回1噴霧にかぎり追加する。 |
|
ニトロール錠(舌下) | 硝酸イソソルビド | 2分 | 2時間 | 狭心発作時には、通常成人1回1〜2錠(硝酸イソソルビドとして1回5〜10mg)を舌下投与する。 | ||
ニトロペン舌下錠 | ニトログリセリン | 1~3分 | 30~60分 | 舌下錠:0.3㎎ | 通常成人0.3〜0.6mgを舌下投与する。狭心症に対し投与後、数分間で効果のあらわれない場合には、更に0.3〜0.6mgを追加投与する。 | |
ミオコールスプレー | ニトログリセリン | 1~2分 | 30~60分 | スプレー:0.3㎎/噴霧(100回用) | 通常、成人には、1回1噴霧を舌下に投与する。 なお、効果不十分の場合は1噴霧を追加投与する。 |
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持続性製剤 | アイトロール錠 | 一硝酸イソソルビド | 30~60分 | 7時間 | 錠:10㎎、20㎎ | 通常、成人には1回20mg1日2回を経口投与する。効果不十分な場合には1回40mg1日2回まで増量できる。 |
ニトロールR | 硝酸イソソルビド | 1時間以内 | 8~12時間 | 徐放カプセル:20㎎ | 通常成人は、1回1カプセルを1日2回、経口投与する。 | |
ニトロール錠 | 硝酸イソソルビド | 15~30分 | 2~4時間 | 錠:5㎎ | 通常成人は、1回1〜2錠を1日3〜4回経口投与する。 | |
ニトロダームTTS | ニトログリセリン | 1時間以内 | 24時間 | テープ:25㎎/枚 | 通常、成人に対し1日1回1枚を胸部、腰部、上腕部のいずれかに貼付する。 なお、効果不十分の場合は2枚に増量する。 |
|
フランドル錠 | 硝酸イソソルビド | 1時間以内 | 8~12時間 | 錠:20㎎ | 通常、成人に対し、1回1錠を1日2回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。 | |
フランドルテープ | 硝酸イソソルビド | 2時間 | 24~48時間 | テープ:40㎎ | 通常、成人に対し、1回1枚を胸部、上腹部又は背部のいずれかに貼付する。貼付後24時間又は48時間ごとに貼りかえる。 | |
ミニトロテープ | ニトログリセリン | 30~60分 | 24時間 | テープ:27㎎/枚 | 通常、成人に対し1日1回1枚を胸部、腰部、上腕部のいずれかに貼付する。 なお、効果不十分の場合は2枚に増量する。 |
|
ミリステープ | ニトログリセリン | 30分 | 8時間 | テープ:5㎎/枚 | 成人は1回1枚を1日2回、12時間ごとに胸部、上腹部、背部、上腕部又は大腿部のいずれかに貼付する。 |
服薬指導時の参考に。
硝酸薬には、長時間効果持続して働く予防を目的とする製剤と、短時間で効果発現する発作止めの製剤がある。
ニトロペンは痛み止め?
狭心症による胸痛に使うニトロ製剤を、痛み止めだと勘違いして、胸痛以外の痛み(腰痛とか筋肉痛、歯痛、頭痛など)に使ってしまう患者さんがいるらしい。
同じようにコルヒチンを痛風発作時の痛み以外に使用するというケースもあるらしい。
ただ単に「痛み止め」とは説明しないように。
舌下錠と舌下スプレーの違いは?
狭心症の発作時に使うニトログリセリンには、ニトロペンのような舌下錠やミオコールスプレーのようなスプレー剤があります。
舌下錠は、口の中が乾燥しているような人だと溶解しにくいので、スプレー剤のほうが速く効きます。
ニトログリセリンのスプレー剤と舌下錠の発作寛解までの時間を比較したところ、スプレー剤は平均92秒と、舌下錠の120秒に比べて有意に短かったとの報告もあります。
ミオコールスプレーの空噴霧
ミオコールスプレーの噴霧回数が増えてしまう理由に、十分な薬液が出なかったことなども理由として考えられますが、添付文書にも空噴霧に関して記載されている。
初めて使用する場合は、容器を立てた状態で6〜7回空噴霧する。また、しばらく(約1ヵ月)使用していない場合、あるいは横にしたり逆さまの状態で保管・携帯した場合は、使用前に容器を立てた状態で数回空噴霧をして、十分な薬液が出ることを確認の上、使用する。
使わない患者は全く使用しない状態で放置していることが多いので、いざというときに使用可能にするために空噴霧するよう注意する。
ミオコールスプレーを舌下以外に噴霧しちゃダメ?
ミオコールスプレーの使い方は、まず、容器を持つ指があごに付くくらいまで噴霧口を口に近づけます。
容器はなるべく垂直にして持ち、寝ている場合は、頭を少し起こします。
噴霧の際は、舌を上あごに付くまで上げてから、息を止めた状態で舌下(舌の裏側)に向けて1回噴霧し、息を深く吸い込まずに口を閉じます。
このとき、頬の内側に噴霧すると、舌下への噴霧に比べてスプレー剤の吸収量が2分の1に減るとのデータがあり、噴霧する場所は必ず舌下とします。
これは、口腔粘膜より舌下粘膜のほうが透過性が高いからです。
舌下錠は飲み込んでも効かない?
舌下錠は飲み込んでも効かないと言います。
ニトログリセリンは粘膜から吸収させると効果があり、飲み込むと肝臓で分解され効果がなくなります。
そのため、ニトロペン舌下錠やニトログリセリン舌下錠は、飲み込んでも効きません。
ニトログリセリンは初回通過効果を受けやすく、脱ニトロ化された二硝酸グリセリンの血管拡張作用はニトログリセリンの約1/10なので、経口投与で効果を得るのは難しい。
ニトロペンを飲み込んでしまったら?
舌下錠を服用すると、肝臓で初回通過効果を受けるため効果はありません。
したがって、飲み込んでしまった場合には、すぐに追加で1錠舌下投与することが必要です。
舌下錠はなんで効くのか?
舌の下に入れて溶かして吸収させる舌下錠。
飲み込んだほうが早いんじゃないか?と思う患者さんもしばしば。
しかし飲み込んでしまうとほとんど効かない。
不思議です。
その秘密は初回通過効果。
初回通過効果とは?
飲み込んだ薬は小腸から吸収され、門脈を経由して、肝臓に入り、そこで部分的に分解(代謝)されてから血液中に入ります。
そのため、薬が血液に循環するころには、かなり分解されています。
この、薬が全身を循環する前に肝臓を通過して代謝されてしまうことを、初回通過効果といいます。
この初回通過効果を回避するためには、肝臓を通過しなければいい。
そのため、初回通過効果を受けやすい薬は、皮膚に貼ったり、舌の下に入れたりという方法を取ります。
初回通過効果
薬剤が目的の作用部位で効果を発揮するには、まず血管に入り、肝臓、心臓を経て全身循環血液の中に移行しなければなりません。
この過程を「吸収」と呼びますが、静注などの直接投与以外に、薬が100%吸収されることはありません。
たとえば経口投与の場合、胃液のpH、消化管運動、胃の内容物、小腸の消化酵素、薬物相互作用など、消化管内だけでもさまざまな影響を受け、さらに肝臓で代謝を受けるため、全身循環に入る薬の量はかなり減少します。
これを「初回通過効果」と呼んでいます。
したがって、消化液で破壊されてしまう薬剤や肝臓を通過するだけで大部分が代謝される薬剤は、経口投与できないことになります。
薬剤の性質によっても吸収の程度は異なっています。
一般的に、脂肪に溶けやすい性質をもった脂溶性の薬、あまり分子が大きくない薬、イオンになっていない分子型の薬は吸収しやすいといわれています。
また、カプセル、錠剤、粉薬など、その剤形によっても吸収の程度は異なります。
ニトロール錠は飲んでも舌下でも効く
同じニトロ製剤に、ニトログリセリンではなく、硝酸イソソルビドがあります。
ニトロール錠。
用法は以下のようになっています。
(経口)
通常成人は、1回1~2錠(硝酸イソソルビドとして1回5~10mg)を1日3~4回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
(舌下)
狭心発作時には、通常成人1回1~2錠(硝酸イソソルビドとして1回5~10mg)を舌下投与する。
狭心発作時以外には、通常成人1回1~2錠(硝酸イソソルビドとして5~10mg)を1日3~4回舌下投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
飲んでも効くのですね。
脱ニトロ化代謝物も比較的強い血管拡張作用を示すため作用時間が長くなり、内服でも使用される。
舌下の屯用でしか見たことはありませんが。
飲み込んだときには、その効果は15分以上たたないと出てきません。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
6 件のコメント
狭心症でニトロを使用しています。緑内障にもなっています。
使用はどうでしょうか
狭心症でニトロを使用していますと緑内障です。危険ですか?
コメントありがとうございます。
ニトロの飲み方(連日or発作時)や、緑内障の種類(閉塞隅角緑内障or開放隅角緑内障)にもよるので、眼科の先生の判断を聞くのが良いです。
教えて下さい。冠攣縮性狭心症と診断されミオコールを使用し始めました。1日、1回噴霧した後もう1回までと言われてますが発作は軽いのも含めて1日何回も出る時があります。2回使用後は時間を掛ければ何回でも大丈夫ですか。医者はダメと言いますが。
コメントありがとうございます。
コメントだけでは併用薬や病態については詳しくわかりませんので、基本的に医師からダメと言われたのであれば、ダメですね。
発作の程度や頻度について、医師がどこまで把握しているのかはわかりませんが、日常生活に支障をきたす発作の頻度であれば、ミオコールではなく、貼付剤や内服薬の用量を上げる必要があるかも知れません。
発作の回数や程度をメモし、ミオコールの使用頻度を伝え、医師に病態を把握していただくほうが優先かと思います。
早速有難うございます。発作は夜間から明方で起こります。調子が悪いと寝る時間とか起床後にあります。週3〜4日は軽いものが多いです。現在はジルチアゼム100m朝夕1錠、イソソルビド20mg朝夕1錠、ベニジピン4mg朝夕一錠、ニコランジル5mg毎食後1錠を狭心症の薬として飲んでます。細かく医師には報告してます。相談にお答え頂き有難うございました。