2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ブスコパンで尿路結石が出しやすくなる?

抗コリン薬と尿路結石

尿路結石に使われる薬として、ウロカルンや利尿剤、抗コリン薬が処方されることがある。

利尿剤でおしっこ増やして結石を出すというのは容易にイメージできますが、抗コリン薬については、個人的なイメージで、抗コリン薬→前立腺肥大症に禁忌→排尿困難→尿が出にくくなる→尿路結石が出しにくくなる となって、結石に逆効果なんじゃないかと思ってしまう。

しかし、ブスコパンやコスパノン、セスデン、チアトンなどの抗コリン薬の適応症に、「尿路結石」とある。

また、ハルナールなどのα1遮断薬も適応外で尿路結石に使われるという話を聞く。こちらのほうが排尿しやすくするイメージで理解しやすい。

どうなのだろう?

排尿のメカニズム

膀胱や尿道の筋肉と神経について、理解が浅いので復習。

【下部尿路の神経支配】
 下部尿路は自律神経(交感神経(α、β受容体)、副交感神経)と体性神経(知覚神経、運動神経)の支配を受けている。蓄尿時には交感神経を介して膀胱の排尿筋(平滑筋)を弛緩させ、内尿道括約筋(平滑筋)および外尿道括約筋(横紋筋)を収縮させる。また、体性神経も横紋筋である外尿道括約筋と骨盤底筋群を緊張させて蓄尿に働く。
 一方、通常0.3~0.4Lの尿が膀胱に蓄積し、その圧によって尿意が起こると、副交感神経が興奮し、膀胱の排尿筋を収縮させるとともに、内尿道括約筋および外尿道括約筋を弛緩させて排尿に働く。尿意を意識的に抑制する必要があるときは、大脳皮質からの抑制刺激が交感神経を介して排尿筋の緊張を低下させ内尿道括約筋および外尿道括約筋を収縮させて一時的に排尿を抑制する。
 自律神経受容体の分布は以下のようになっている。膀胱体部にはムスカリン受容体(おもにM3)および交感神経受容体(β2,β3)が豊富に存在する。膀胱底部(三角部)と中枢側尿道には主として交感神経受容体(α1)が豊富に存在している。

下部尿路機能障害の病態と治療薬

平滑筋とか横紋筋とか何だっけ?という低レベルな薬剤師です。
平滑筋は自律神経支配で不随意筋、自分で意識的には動かせない。
横紋筋は骨格筋、体性神経支配の随意筋、自分で意識的に動かせる。

抗コリン薬を使うと、自律神経の副交感神経を抑制し、膀胱排尿筋を弛緩し、畜尿の方向に働く。

尿路結石で痛いというのは、尿道にひっかかる尿道結石のケースだろう。
排尿時に痛むのであれば、なるべく排尿しないように畜尿するのは良いのかも。
尿道には、内尿道括約筋(平滑筋)と外尿道括約筋(横紋筋)があって、抗コリン薬によって内尿道括約筋も弛緩されれば尿は出しやすくなるだろうけど、そこらへんがわからない。
抗コリン薬→平滑筋弛緩という単純なものではないのかな。

尿路関係の神経支配について
・排尿筋(M:ムスカリン受容体, β3受容体)
・膀胱三角部 – 頸部(α1受容体)
・前立腺間質(α1受容体)
・外尿道括約筋(N:ニコチン受容体, β2受容体)
・尿道(α1受容体)

主に副交感神経が支配する膀胱排尿筋にはムスカリン(M)受容体が密に分布するが、交感神経が優位な膀胱出口部以下はαアドレナリン受容体(主にα1受容体)が豊富であるという。
つまり抗コリン薬は膀胱部分には働くけど、膀胱出口以下の尿道にはあまり働かないということで良いのか。
だとすると、抗コリン薬の説明に「尿路の通路を広げて、結石を排出しやすくし痛みをやわらげます。」と書かれているものもあったが、ちょっと違うような気もする。
コスパノンには尿管結石排出促進効果があると添付文書に記載されているが、よくわからない。
膀胱を広げても、尿道を広げないと石は出ていかない気がするが。

ただ、排尿筋を抑えることで、尿の勢いはやわらぐので、排尿時痛はやわらぐような気はする。

膀胱出口部以下はαアドレナリン受容体が豊富、というだけで、ムスカリン受容体が無いわけではないので、抗コリン薬も尿道を広げて石を出しやすくするということでしょうか。
だとしても、抗コリン薬よりもα1遮断薬のほうが理にかなっているような気がするので、ハルナールに尿路結石の適応を取ってもらいたいものだ。

泌尿器科からコスパノン40mgの処方はダメ?

コスパノンの用法用量を、何気なく見ていたら、「何か変な書き方だな」と思った。

錠40mg
通常成人は、1回1~2錠(フロプロピオンとして1回40~80mg)を1日3回毎食後経口投与する。
泌尿器科においては、1回2錠を1日3回毎食後経口投与する。
年齢、症状により適宜増減する。

錠80mg
通常成人は、1回1錠(フロプロピオンとして1回80mg)を1日3回毎食後経口投与する。
年齢、症状により適宜増減する。
なお、尿路結石以外に対する通常の用法・用量はフロプロピオンとして1回40~80mg1日3回毎食後経口投与する。

泌尿器科から処方されていたら、40mg1錠ではダメで、40mg2錠じゃないとダメということ。

コスパノンの適応症は、以下の通り。

下記の疾患に伴う鎮痙効果

肝胆道疾患
胆道ジスキネジー、胆石症、胆のう炎、胆管炎、胆のう剔出後遺症

膵疾患
膵炎

尿路結石

肝胆道疾患や膵疾患は、消化器科領域なので、尿路結石だけが泌尿器科領域になる。

「錠80mg」の用法の部分には、尿路結石以外の用法が書かれており、それより上の部分は必然的に尿路結石に対する用法となる。
「錠40mg」のほうは、泌尿器科とそれ以外というわかりにくい書き方。

実際に保険請求上、チェックが入るのかはわかりませんが、泌尿器科から1回40mgで処方されていたら念のため疑義照会しておこう。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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