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ペニシリンは弱い抗菌薬?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約4分13秒で読めます.
2,493 ビュー. カテゴリ:ペニシリンの評価
ペニシリンって古い薬のイメージだよね?
ペニシリンは一番最初に発見された抗生物質で古い薬です。
そのため、弱い薬だと勘違いしている人も多いようです。
確かに、古い薬であるが故に、耐性菌の割合が高く、使っても十分な威力を発揮できないこともあります。
しかし、効く菌には効きます。
ニューキノロンなどの抗菌剤を爆弾に例えると、ペニシリンはピストルかも知れません。
しかし、容疑者がわかっていれば、ピストルで十分なのです。
犯人に向かって爆弾を落とせば、巻き添えが出ます。
人間の体は細菌だらけなのです。
病原菌だけをやっつけることはできません。
犯人をやっつければそれでいいというものではないのです。
強い薬のほうが弱い薬より優れているということでもありません。
古きよき薬もあるのです。
肺炎の第一選択薬はペニシリン?
肺炎の原因がわからない場合、マイコプラズマやレジオネラやらクラミジアも疑われると、ニューキノロンが手っ取り早いのかと思います。
しかし耐性菌の増加が懸念されます。
肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌が原因の肺炎に対してはペニシリンが第一選択薬としてガイドラインに書かれています。
肺炎球菌の半数以上はペニシリンが効きにくい耐性菌なのですが、副作用の心配が少なく、高用量で投与できるため、まだまだ使えます。
使えるものは使おう、というエコな発想ですね。
ペニシリンの作用機序
ペニシリンの抗菌機序については、細菌の細胞壁合成を阻害し、そのため浸透圧により細胞が膨満破裂し殺菌にいたることが明らかにされました。
細胞壁は細菌特有の構造であり、選択毒性という観点からは理想的な薬物標的と考えられます。
事実、ペニシリンは薬物アレルギー以外とくに重篤な副作用はなく、きわめて安全性の高い薬であります。
また、静菌ではなく殺菌作用を有するため、切れ味のよい抗菌活性が示されることも重要な特徴です。
ペニシリンの標的は細胞壁合成の最終工程である架橋反応を触媒する、ペプチドグリカントランスペプチダーゼです。
ジェニナックに耐性菌はできない?
MIC(Minimum Inhibitory Concentration)とは最小発育阻止濃度のことで、抗菌剤がこの濃度以上になると菌をやっつけられます。
しかし、通常の感受性菌の発育は阻止されますが、変異した耐性菌は生き残り増加する可能性があります。
MPC(Mutant Prevention Concentoration)とは変異株発現阻止濃度のことで、変異耐性菌の発育をも阻止できる濃度です。
そしてこの2つの間の濃度域をMSW(Mutant Selection Window)といい、耐性変異した菌のみが増殖する濃度範囲と考えられてます。
MPCが低く、かつMSWが狭い薬剤ほど耐性菌の発現するリスクの低い薬剤であり、ジェニナックはこの条件を満たしているといいます。
グレースビットが最強?
ニューキノロンというと腎排泄型というイメージだったので、どの薬も膀胱炎などに適応があるかと思っていましたが、最近のアベロックスやジェニナックには膀胱炎など泌尿器系の適応はありません。
そのため、泌尿器科ではグレースビットが好んで使われているようです。
ペニシリン系抗生物質
ペニシリンとは、1928年にイギリスのアレクサンダー・フレミング博士によって発見された、世界初の抗生物質である。抗菌剤の分類上ではβ-ラクタム系抗生物質に分類される。博士はこの功績によりノーベル賞を受賞した。
ペニシリンGの作用機序は、細胞壁のペプチドグリカン構造の合成に必須である蛋白質に結合して、その機能を阻害することです。
本来はトランスグリコシラーゼ、トランスペプチダーゼなどの酵素活性を持つ蛋白質ですが、ペニシリンが結合する蛋白ということで、そのままペニシリン結合蛋白質(penicillin binding pretein:PBP)と呼ばれています。
アンピシリン(アミノベンジルペニシリン)やアモキシシリン(アミノメチルペニシリン)は、ペニシリンGを改良した広域アミノペニシリン系ともいわれます。
アンピシリンは注射用として主に使われ、内服用もありますが、吸収率があまりよくないことから、内服用のアミノペニシリンとしてアモキシシリンが発売されています。
アミノペニシリンはペニシリンGでカバーしていない菌(インフルエンザ菌など。一部の腸球菌やリステリア菌では第一選択薬)もいくつか存在するために、広域と呼ばれます。
よりグラム陰性桿菌側へスペクトラムを拡大したペニシリン系薬として、ピペラシリンが挙げられます。
ピペラシリンは特に緑膿菌に対して効果を示しますので、逆にいえば、緑膿菌をターゲットとしない感染症には使用を控えたいものです。
ペニシリン系薬の殺菌作用は、時間依存性であるとされています。
特に、MICを超えている時間(%T>MIC)が、投与サイクルの中で50%以上を達成できれば、最大殺菌作用を示すといわれています。
ペニシリン系薬の代表的な副作用としてアレルギーが挙げられます。
即時型アレルギーを示す場合(血圧低下、呼吸困難)は特に問題ですので、従来から皮内テスト(皮内に少量の該当薬を注入し、発赤が出るかを確認する)が行われてきました。
論理としては妥当なのですが、実はこの皮内テストでもアレルギーを起こすことがあること、逆に皮内テストが陰性でも実際に投与すればアレルギーを起こすことがあることなどがわかってきたために、現在では皮内テストは行われなくなりました。しかし、アレルギーリスクは存在しますので、投与時にアレルギー症状が出ないかを注意深くモニタリングすることが必須です。
下痢は頻度の高い副作用です。原因として、①腸内細菌叢のバランスが崩れること、②バランスが崩れた結果、クロストリジウム感染症を惹起することなどが挙げられます。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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