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抗血栓薬とPPIの併用目的
公開. 更新. 投稿者:脳梗塞/血栓.この記事は約6分47秒で読めます.
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消化管出血とPPI
抗血栓薬とPPIってよく併用されるよね
消化器症状の訴えのない患者にPPIが処方されることは多い。
特にNSAIDsを連用している患者では、消化性潰瘍の予防的にPPIが併用されることはしばしばある。
また、ワーファリンなどの抗血栓薬服用中の高齢者などにもPPIが併用されることが多い。
これは、抗血栓薬服用中に消化管出血を起こすリスクが高いからだ。
しかし、ポリファーマシーの観点からすると、ルーチンにPPIを併用するのは望ましくないという意見もある。
プラザキサとPPIの併用
プラザキサ(ダビガトラン)の副作用には、ディスペプシア(胃のむかつき、消化不良など)が多いです。
プラザキサは吸収率を高めるために酒石酸を使っており、胃内のpHが下がって胃粘膜が傷害され、飲んだ後に胃が痛む、おなかの中がもやもやするという。
ダビガトランエテキシラートは胃内での吸収効率が高くないため、溶解度を高めるために酸性環境を作る必要がある。そのため同薬のカプセル内には、ペレットと呼ばれる粒子が複数含まれている。この粒子は酒石酸を核とし、この周囲に主薬をコーティングした構造となっている。胃内で崩壊した際、酒石酸により局所的な酸性環境が形成され、主薬の吸収を促し効果を示す。一方で、食道でカプセルが溶解した場合、周囲のpHを下げることから食道炎や食道潰瘍の発生リスクが高まる。
こうした消化器症状に対してはPPIやH2ブロッカーなどの制酸剤が使われます。
しかし、PPIを使うと、プラザキサの生物学的利用率が下がり、効果が減弱するというデータがあります。
プラザキサが酸性条件で吸収されやすいため、PPIの併用で吸収されにくくなる可能性があるようです。
酒石酸による酸性で吸収率が保たれているので、PPI等の制酸剤の併用で、吸収が低下する可能性がある。
PPIを併用するとプラザキサの吸収率が落ち、最高血中濃度(Cmax)が15%ほど低下はするが、胃痛などの症状が強くて服薬の継続が危うい場合にはPPIが処方される。
プラザキサを飲む時は多めの水で飲むとよい。初回の投薬時には、副作用で胸やけや胃痛を生じないよう、十分量の水で服用する(コップ1杯の水を飲み干す)よう指導する。
また、オメプラゾールはCYP2C19の阻害作用があるため、クロピドグレルと併用することによりクロピドグレルの活性代謝物への代謝が阻害され作用が減弱する可能性もあり注意する。
プラザキサで胸やけ
プラザキサは血液凝固カスケードにおけるトロンビンを直接かつ選択的に阻害する抗凝固薬で、「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制」を目的に使用される。同効薬のワーファリンと比較して、血液検査結果に基づく投与量の調整が不要であること、ビタミンK含有食品や薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)を介した薬剤との相互作用が少ないこと、頭蓋内出血リスクが低いことなとの利点がある。
一方、プラザキサに特徴的な副作用として、胸やけなどの上部消化管の症状が知られている。
プラザキサには75mgカプセルと110mgカプセルの2規格がある。
それぞれ長さは約18mm、約19mm、重さは約280mg、約390mgで、比重が小さく食道にとどまりやすいと考えられる。
滞留したカプセルから、プラザキサの吸収を高めるために添加されている酒石酸が溶出し、粘膜障害を起こす可能性が指摘されている。
しかし、酒石酸が添加された他の薬剤で同様の消化器症状が必ずしも多く認められるわけではないため、プラザキサの消化器症状の原因は明確ではない。
上部消化管の症状への対策として、カプセルの食道滞留を回避し確実に胃に送る服薬指導が有用であることが報告されている。
新規にプラザキサの内服を始めた患者を対象とし、薬剤師がコップ1杯程度の多めの水またはぬるま湯で服用するように指導した群では、積極的に服薬指導しなかった群に比べて、服用開始1か月以内における上部消化管の症状を評価したスコアが有意に低く、症状の発現が少なかった。
また、胸やけを主訴とする薬剤性食道潰瘍疑いの患者に、150mL以上の水で服薬するように指導したところ、3日目には胸やけ症状が消失したとの症例報告もある。
服用のタイミングも上部消化管の症状の出現に影響を与えるようである。
プラザキサの長期的な有効性と安全性について検討したRELY-ABLE試験のサブ解析で、上部消化管の症状が発現した症例において、食事中に服用するようにしたところ、症状の抑制率が88%であった。
なお、プラザキサの添付文書の用法・用量には、服用時点に関する記載はない。
以上から、プラザキサ服用に伴う上部消化管の症状に対しては、コップ1杯程度の多めの水で服用する、あるいは服用するタイミングを食後から食事の途中に変更することで、症状の改善が期待できる。
両方を行うと、より確実に胃に送り込めるようになると考えられる。
プラザキサの作用機序
塞栓症の原因となる血栓は、血液凝固カスケードによりフィブリノゲンがフィブリンへ変換されることにより形成されます。
トリプシン様セリンプロテアーゼであるトロンビンは、フィブリノゲンからフィブリンへの反応を触媒する血液凝固カスケードの重要な酵素であり、プロトロンビンが第Ⅹa因子・第Ⅴa因子複合体により活性化されることで生成され、血液凝固反応の増幅・フィブリンの形成とフィブリン塊形成促進・血小板活性化などの生理機能があります。
ダビガトラン(プラザキサ)は、血液凝固カスケードにおいて、トロンビンの活性部位に直接かつ選択的に結合することで抗凝固作用・抗血栓作用を示し、またその結合は可逆的です。
また、ダビガトランは、アンチトロンビンに依存することなく、血液中の遊離トロンビンだけでなくフィブリンに結合したトロンビンにも作用します。
プラザキサを飲んで前かがみになってはダメ?
ダビガトランには酒石酸が含まれており、その酸度により吸収性が高められているため、酒石酸による胃腸障害が問題となる可能性もある。
できるだけ多めの水で服用し、服用後に薬が逆流しないように前かがみの姿勢を避ける。
ワーファリンとPPIの併用
現在日本で販売されているプロトンポンプ阻害薬(PPI)は4種類ある。
オメプラール(オメプラゾール)と、その光学異性体であるネキシウム(エソメプラゾールマグネシウム水和物)は、薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)2C19および3A4で代謝され、2C9、2C19、3A4阻害作用を有することから、CYP2C9や2C19などで代謝されるワルファリンと併用するとワルファリンの代謝が遅延し、抗凝固作用の増強に伴う出血を引き起こす恐れがある(併用注意)。
タケプロン(ランソプラゾール)でも同様に注意する必要があるが、パリエット(ラベプラゾールナトリウム)は主に非酵素的な経路で代謝されるため、CYPによる相互作用を起こしにくいといわれている。
エーザイが発行している「Warfarin適正使用情報第4版」(2014年8月更新)にも、ラベプラゾールに関して「本剤との相互作用はないと考えられる」との記載がある。
パリエットは相互作用が少ない
PPIは肝排泄型でとくにオメプラールやタケプロンなどはCYP2C19の影響を強く受けるため、併用薬によっては注意が必要です。
一方、パリエット錠はCYP2C19による代謝は一部であることから、併用薬による胃酸分泌抑制作用には影響しないといわれています。
パリエットの薬物動態をみると、「経口投与した時の血漿中の代謝物は、主に非酵素的な還元反応により生成したチオエーテル体であった」とあります。
つまり、パリエットの主な代謝経路は、代謝酵素が関係しない還元反応なので、代謝酵素の阻害は起こらないということです。
実際にパリエットの相互作用の項目をみても、CYP2C19、CYP3A4は関与していますが代謝酵素による相互作用はない。
パリエットの効果は個人差が少ないです。パリエットはCYP2C19遺伝子多型に影響されず、安定したpH上昇効果を発揮します。
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