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入浴に影響する薬
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約6分52秒で読めます.
7,557 ビュー. カテゴリ:お風呂と薬
入浴が影響する薬といえば、塗り薬とか、貼り薬。
入浴によって、物理的に除去されてしまう恐れが高いので、入浴後に使用するように説明することが多いです。
添付文書上の記載がある薬には、以下のような薬があります。
医薬品名 | 添付文書の記載 |
---|---|
MS温シップ「タイホウ」 | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
MS温シップ「タカミツ」 | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
アシテアダニ舌下錠 | 本剤服用前,及び本剤服用後2時間は,激しい運動,アルコール摂取,入浴等を避けるよう,また,服用後2時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシー等の副作用の発現に注意するよう患者等に指導すること。[循環動態が亢進し,本剤の吸収が促進される等により,アナフィラキシー等の副作用が発現するおそれがある。] |
アレサガテープ | 本剤は1日毎に貼り替えるため、貼付開始時刻の設定にあたっては入浴等の時間を考慮することが望ましい。 |
シダキュアスギ花粉舌下錠 | 本剤服用前、及び本剤服用後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避け、また、服用後2時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシー等の副作用の発現に注意する。〔循環動態が亢進し、本剤の吸収が促進される等により、アナフィラキシー等の副作用が発現するおそれがある。〕 |
シダトレンスギ花粉舌下液 | 本剤服用前、及び本剤服用後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避けるよう、また、服用後2時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシー等の副作用の発現に注意するよう患者等に指導すること。〔循環動態が亢進し、本剤の吸収が促進される等により、アナフィラキシー等の副作用が発現するおそれがある。〕 |
デュロテップMTパッチ | 本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至るおそれがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。 |
ドボベットゲル | 使用直後のシャワーや入浴は避けること。 |
ドボベット軟膏 | 使用直後のシャワーや入浴は避けること。 |
ニコチネルTTS | 貼付部位の皮膚を拭い、清潔にしてから本剤を貼付すること。なお、入浴後に貼付する場合は、水分を十分に取り除き、乾燥させてから貼付すること。 |
ネオキシテープ73.5mg | 本剤は1日毎に貼り替えるため、貼付開始時刻の設定にあたっては入浴等の時間を考慮することが望ましい。 |
ノルスパンテープ | 本剤貼付中に発熱又は激しい運動により体温が上昇した場合、本剤貼付部位の温度が上昇しブプレノルフィン吸収量が増加するため、過量投与になるおそれがあるので、患者の状態に注意すること。また、本剤貼付後、貼付部位が電気パッド、電気毛布、加温ウォーターベッド、赤外線灯、集中的な日光浴、サウナ、湯たんぽ等の熱源に接しないようにすること。本剤を貼付中に入浴する場合は、熱い温度での入浴は避けさせるようにすること。 |
ハルロピテープ | 本剤は1日毎に貼り替えるため、貼付開始時刻の設定にあたっては入浴等の時間を考慮することが望ましい。 |
フェルナビオンパップ70 | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
フェルビナクパップ70mg「タイホウ」 | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
フェントステープ | 本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至るおそれがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。 |
フルルバンパップ40mg | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
プロトピック軟膏 | 刺激感は入浴時に増強することがある。通常、塗布後一過性に発現し、皮疹の改善とともに発現しなくなるが、ときに使用期間中持続することがある。高度の刺激感が持続する場合は、休薬もしくは中止すること。 |
ミティキュアダニ舌下錠 | 本剤服用前、及び本剤服用後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避け、また、服用後2時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシー等の副作用の発現に注意する。〔循環動態が亢進し、本剤の吸収が促進される等により、アナフィラキシー等の副作用が発現するおそれがある。〕 |
ラクール温シップ | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
ラクティオンパップ70mg | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
ラフェンタテープ | 本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至るおそれがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。 |
ロキソプロフェンNaテープ | 入浴の30分以上前にはがすこと。 入浴後直ちに使用しないよう注意すること。 |
ワンデュロパッチ | 本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至るおそれがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。 |
ドボベットの「使用直後のシャワーや入浴は避けること。」とか書く必要あるか?とも思いますが…
添付文書に記載されているものは、入浴により血行が促進された結果、薬効が過剰に発現したり副作用が出る恐れが高くなるようなものが多い。
保湿剤と入浴
塗り薬を塗るタイミングについて聞かれることはよくある。
基本的に塗り薬は、水で洗えば落ちてしまうので、お風呂に入ればリセットされてしまう。そのため、1日1回であれば入浴後に塗布するのが常識である。
しかし、入浴後といっても、「3分以内」とか「10分以内」とか記載されている書物もある。入浴直後に保湿剤を塗布した場合と、一定時間後に塗布した場合の角質中水分量を比較した研究は幾つかあるが、両者には大きな差はみられないというのが結論である。
入浴直後は角層が水分をたっぷりと含んでいるためしっとりしているが、入浴によって皮脂が洗い落とされているために瞬く間に皮膚は乾燥する。
したがって、保湿剤は入浴後すぐに、ほてりがおさまったくらいの5~15分後の間に塗るのがよい。この入浴後の保湿剤が最も重要であり、効果的である。
皮膚は入浴によって水分を吸収して、水分量が増加するが、入浴後の角質中水分量を測定した研究では、入浴後10分経過すると、入浴前の水分量とほぼ同等まで戻ると報告されている。入浴後速やかに塗布するよう指示されるのは、この水分量を逃さないようにするためである。
入浴直後の皮膚は清潔であり、また着替える際に塗布するのはアドヒアランスを維持・向上する点で有効であるといえる。
ただし、「10分以内に塗布」などと時間を強調しすぎると、「10分以上経過したら効果が得られない」などと患者が誤って解釈し塗布しなくなるなるなど、アドヒアランスの低下につながる恐れもある。そのため、服薬指導では「入浴直後が望ましいが、いつ塗布しても同じ効果が得られる」などと、伝えるとよい。
乾燥の程度が軽い場合や、夏場などの比較的乾燥しにくい季節なら1日1回でもよいが、夜に塗って朝になると皮膚がすでに乾燥している場合や、秋冬の乾燥しやすい季節では、朝起きて洗顔後にもう一度、全身にひととおり保湿剤を塗る。
この朝晩2回を基本として、それ以外にも生活パターンに合わせて、午後の外出前や外出後に露出部だけでも繰り返し塗って乾燥を防ぐことが理想的である。
また、手洗いを何回もする子どもの手や、食後の汚れた口の周りを拭いたあとは、皮脂が落ちて乾燥しやすいので保湿剤で補っておくとよい。
貼付剤と入浴
入浴やサウナなど貼付部位を高温にさらすことに注意を要する薬として、デュロテップ、ニコチネルTTS、ニュープロパッチ、ノルスパンテープ、ハルロピテープ、フェントステープ、ラフェンタテープ、ワンデュロパッチなどがある。
フェンタニル貼付中の入浴
フェンタニルの経皮吸収型製剤は、貼付中の熱源への接触や熱い風呂につかることは避けるよう、添付文書の警告に記載されている。加温のほか、発熱や発汗で急激に吸収され、呼吸抑制などに至る恐れがある。
デュロテップの警告に以下のように書かれています1)。
警告
本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至るおそれがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。
重要な基本的注意にも以下のように、
本剤貼付中に発熱又は激しい運動により体温が上昇した場合、本剤貼付部位の温度が上昇しフェンタニル吸収量が増加するため、過量投与になり、死に至るおそれがあるので、患者の状態に注意すること。また、本剤貼付後、貼付部位が電気パッド、電気毛布、加温ウォーターベッド、赤外線灯、集中的な日光浴、サウナ、湯たんぽ等の熱源に接しないようにすること。本剤を貼付中に入浴する場合は、熱い温度での入浴は避けさせるようにすること。
皮膚温が40℃以上で吸収が30%亢進。
深部体温が3度上昇するとCmaxが25%上昇するとされている。
皮膚温が上昇すると薬剤の吸収が高まるため(皮膚温が3℃上昇すると最高血中濃度が25%増加することが薬物動態モデルよりシミュレーションされている)、高温での入浴や、電気毛布などの使用は避けます。
熱い温度での入浴について注意がされていますが、40~41℃程度の温湯でも長時間の入浴によって血中濃度が上昇することが考えられます。
お風呂に入っちゃいけないというわけではありませんが、熱い湯、長湯は禁物です。
貼付したままシャワーや入浴は可能であるが、加温すると皮膚温度や体温が上昇し、薬剤の放出量が増加して吸収が高まり血中濃度が上昇するので、極端に熱いお湯の使用や長湯は避ける。
熱がこもって皮膚の温度が上昇する可能性があるので、防水フィルムなどは使用しない。
入浴中は貼付部位をタオルなどで強くこすらず、入浴後は貼付部位をタオルで強くこすらないように水分をふきとり、パッチが剥がれていないか確認し、剥がれていたら新しいものに貼り替える。ただし,入浴後すぐの貼り替えは体がほてり汗をかきやすいため避ける。また,サウナは皮膚温度を上げるので避ける。
【入浴温度は?】
体温の上昇によりフェンタニルの吸収が上昇する可能性があるので、入浴は、冬を含めて40℃までの温度をお勧めしています。
【入浴時間は?】
10分以内で、汗をかかない程度の入浴を目安として下さい。
【貼付部位は?】
皮膚温度の上昇によりフェンタニルの吸収が上昇するため、直接お湯に浸かる部分は吸収されやすくなります。したがって、お湯につかる部分は避けて、前胸部や上腕などお湯に浸からない部位に貼付してください。
入浴以外の影響
国外では、電気毛布の使用により吸収量が増加して過量投与となり、呼吸抑制に陥った例も報告されています。
また、発熱時の使用にも注意が必要で、貼付後に意識レベルの低下あるいは、意識消失を起こした副作用発現例では、それぞれ39℃、39.2℃の発熱が見られたことが報告されています。
発熱時の対応については、あらかじめ医師に確認し対処することが必要と考えます。
低体温の患者に保温ブランケットを使用した結果、重篤な呼吸抑制が発現した報告もあり注意が必要です。
入浴の場合にはパッチを長時間高温の湯船につけると温度が上昇して吸収量が増加する恐れがあるため、パッチ貼付部位は湯船につけるべきではありません。
冬では熱源(電気カーペット、電気あんか、電気毛布、床暖房)に接しないように指導する必要があります。
添付文書にはこれらの熱源以外にも日光浴にも注意するように記載されています。
ビーチでの日光浴でなくても、夏にキャンプへ行き長時間屋外にいたことにより呼吸抑制が生じた症例も報告されているので、夏の炎天下や過度の運動など体温が上昇する可能性があるような状況には注意するように指導することを忘れてはなりません。
フェンタニルパッチの温度による影響では、皮膚温度が低くて十分な効果が得られないこともあります。
患者が死亡する直前に48時間ではフェンタニルパッチの効果が減弱し、モルヒネに切り替わる場合が多く、その原因として血圧が下がることにより皮膚の表面温度が低下し吸収に影響を与えることが考えられています。
その他の貼付剤使用中の入浴
貼ったままの入浴を禁じているわけではないが、フランドルテープは入浴によるふらつきを注意喚起しており、入浴前に剥がして入浴後に貼り直すこともできるといしている。
ニトロダームTTSは、入浴により血管が収縮し、心臓に負担がかかる可能性があるため、貼付したまま入浴することが推奨されている。
エストラーナテープやニュープロパッチのように、粘着力が弱まるとして、貼ったままでの入浴を推奨する薬剤もある。
参考文献
1)デュロテップMTパッチ 添付文書
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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