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温シップで患部は温まるのか?
公開. 更新. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約5分37秒で読めます.
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温シップも患部を冷やす
温シップは患部を温めて治し、冷シップは患部を冷やして治すようなイメージですね。
温めるというと温泉のイメージ、冷やすというとアイシングのイメージから、温めるシップは慢性の痛みに、冷やすシップは急性の痛みに効くと言われている。
本当でしょうか?
実際は温シップも冷シップも気化熱で体温を奪うので、患部を冷やすようです。
ではなぜ温シップを貼ると温かい感じがするのか?
貼った部分が温シップの成分カプサイシンによって炎症を起こしているため、温かいと錯覚しているに過ぎないようです。
貼って気持ちいいと感じるほうを使えばいいと思います。
温シップ(トウガラシエキス、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド含有)
→MS温シップ、ラクティオンパップ、フェルナビオンパップ、フルルバン
冷シップ(メントール含有)
→MS冷シップ
温シップと冷シップの違いは?
多くの鎮痛用パップ剤には、皮膚刺激成分が添加されている。
この皮膚刺激成分として、皮膚に温感を与えるトウガラシエキスやノニル酸ワニリルアミドを含有するものが「温感パップ剤」と呼ばれ、これらを含有せず、メントールやカンフルなどの清涼成分を含むものを「冷感パップ剤」と呼ぶ。
冷感パップ剤は、炎症による局所の発熱を抑えるとともに、炎症部位の拡大を防ぐ目的で使用される。
メントールが知覚神経の末梢に作用し軽度の知覚麻痺を起こすため、鎮痛作用も期待できる。
このため、炎症性疼痛疾患の急性期に使用される。
一方、温感パップ剤は、慢性腰痛症や急性腰痛の発症数日後以降に使用される。
温感パップ剤に含有されるトウガラシエキスは、その辛み成分であるカプサイシンが局所の血管を拡張させる。
患部の血流増加により、損傷した組織の修復を早めたり、腰部筋の血流障害による腰痛を改善することが期待できる。
ノニル酸ワニリルアミドはカプサイシンの誘導体であり同様の機序で血行を改善する。
ただし温感パップ剤は皮膚刺激が強く、発赤・発疹などの副作用が出現しやすい。
また入浴時に貼付していた部位が強く痛む場合があるので、入浴30分~1時問前に、剥がすように患者に指導する。
ただ、パップ剤の皮膚刺激成分による効果は副次的なものにすぎない。
実際、温感か冷感かの使い分けは完全には確立しておらず、「患者が使用して気持ちのよい方を選ぶ」という医師も多いようである。
温シップよりも冷シップのほうが効く?
MS温シップとMS冷シップの違いは、温感と冷感の違い、だけだと思っていましたが、成分を比較してみると。
MS冷シップ「タイホウ」膏体100g(700cm2)中
サリチル酸メチル 2.0g
dl-カンフル 0.5g
l-メントール 0.3g
MS温シップ「タイホウ」膏体100g(700cm2)中
サリチル酸メチル 1.0g
dl-カンフル 0.5g
トウガラシエキス 0.165g
鎮痛成分であるサリチル酸メチルの量が、温シップよりも冷シップのほうが倍量含まれている。
皮膚外用薬においては、濃ければ効く、ということでも無さそうですが、この違いの理由は何なのだろう。
MS温シップ以外の温シップは?
温シップといえば、MS温シップ。
薬品名に温シップと入っていれば、わかりやすい。
しかし、これ以外にも温シップはあるわけで。
一般名処方でも、 【般】ケトプロフェンテープ20mg(7×10cm 非温感) とか書かれてくるわけで、温感か非温感かという区別はわかりやすくしてもらいたいわけで。
ジェネリック選択の段階で、温感か非温感かの違いがはっきりわかるように、商品名への表示の義務付けを課してもらいたいものです。
セルタッチのGE
フェルナビオンパップ(トウガラシエキス配合)
フェルナビオンテープ(ノニル酸ワニリルアミド配合)
イドメシンのGE
ラクティオンパップ(トウガラシエキス配合)
ゼポラスのGE
フルルバンパップ(ノニル酸ワニリルアミド配合)
ロキソニンのGE
ロキソプロフェンNaテープ「三友」(ノニル酸ワニリルアミド配合)
ロキソプロフェンナトリウムテープ 「タイホウ」(ノニル酸ワニリルアミド配合)
モーラスの温感タイプってのは、まだ無いのか。
しかし、フルルバンパップ、ラクティオンパップ、フェルナビオンパップ、ロキソプロフェンNaテープ「三友」などは温感成分だけでなく、冷感成分のメントールも入っていますが、どういう使用感なんだろう。
個人的には、余計な副作用を起こしかねない温感タイプのシップは嫌いなのですが。
医薬品名(GE) | 先発品 | 温感成分 |
---|---|---|
MS温シップ「タイホウ」 | ー | トウガラシエキス |
MS温シップ「タカミツ」 | ー | トウガラシエキス |
ケトプロフェンテープ20mg「ラクール」/ケトプロフェンテープ40mg「ラクール」 | モーラステープ | ノニル酸ワニリルアミド |
フェルナビオンテープ | セルタッチテープ | ノニル酸ワニリルアミド |
フェルビナクパップ70mg「タイホウ」 | セルタッチパップ | トウガラシエキス |
フルルバンパップ40mg | ゼポラスパップ | ノニル酸ワニリルアミド |
ラクール温シップ | ー | トウガラシエキス |
ラクティオンパップ70mg | イドメシンコーワパップ | トウガラシエキス |
ロキソプロフェンNaテープ50mg「三友」/ロキソプロフェンNaテープ100mg「三友」 | ロキソニンテープ | ノニル酸ワニリルアミド |
ロキソプロフェンナトリウムテープ 50mg「タイホウ」/ロキソプロフェンナトリウムテープ 100mg「タイホウ」 | ロキソニンテープ | ノニル酸ワニリルアミド |
冷湿布でアイシング?
急性腰痛では、安静にして炎症部位を冷やします。
冷やすことで毛細血管を収縮させ、炎症の拡大を抑えます。
氷のうを使ったアイシングによって皮膚の温度を十分に下げます。
冷湿布では不十分。
冷湿布は、メントールなどの清涼成分によって冷感が得られているにすぎず、皮膚表面温度が下がってもせいぜい2~3℃程度。
アイシングほどの冷却効果はない。
ロキソプロフェンナトリウムテープ「タイホウ」を変更調剤しちゃダメ?
ロキソプロフェンナトリウムテープ「タイホウ」の処方を受けたときに、ふつうに他のジェネリックを使おうとしてしまいました。
患者さんから「温かい貼り薬を出すって言ってた」という言葉を聞いて、「ハッ」と気付きました。
ロキソプロフェンテープ「タイホウ」は温湿布だったのです。
ロキソプロフェンテープのジェネリックで、温感タイプは「タイホウ」だけ。(と思っていましたが、ロキソプロフェンテープ「三友」もノニル酸ワニリルアミドが配合されているので温感ぽい)
処方医の意図としては、ロキソプロフェンテープ「タイホウ」を調剤しろ、という意図と同意。
患者の同意さえ得られれば、冷感タイプの他のジェネリックを使っても問題は無いものと思われますが。
医師の処方意図を考えると、なかなか変更しづらい。
同じように、冷感タイプであるロキソニンテープの処方に対して、温感タイプの「タイホウ」を変更調剤することは、医師の処方意図に反するかも知れません。
ちなみに、セルタッチの温感タイプには、フェルナビオンテープがあります。
ゼポラスやアドフィードの温感タイプには、フルルバンパップ、フェルナビオンパップがあります。
イドメシンの温感タイプには、ラクティオンパップがあります。
モーラスの温感タイプは、、、ありません。
湿布の温感と非温感には気を付けましょう。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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