2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

膀胱炎に適応の無いニューキノロン

尿路感染症の治療

薬剤師

膀胱炎に使う抗菌薬は何がいい?

膀胱炎などの尿路感染症にニューキノロン系抗菌薬がよく処方されます。
しかし、尿中以降率が低く、膀胱炎に適応の無い薬もあります。

医薬品名適応症膀胱炎の適応尿中移行率
ジェニナック咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎×32~44
アベロックス表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症,外傷・熱傷及び手術創等の二次感染,咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎,肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染,副鼻腔炎×20
オゼックス表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、骨髄炎、関節炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽45
シプロキサン表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症,リンパ管・リンパ節炎,慢性膿皮症,外傷・熱傷及び手術創等の二次感染,乳腺炎,肛門周囲膿瘍,咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎,肺炎,慢性呼吸器病変の二次感染,膀胱炎,腎盂腎炎,前立腺炎(急性症,慢性症),精巣上体炎(副睾丸炎),尿道炎,胆のう炎,胆管炎,感染性腸炎,バルトリン腺炎,子宮内感染,子宮付属器炎,涙のう炎,麦粒腫,瞼板腺炎,中耳炎,副鼻腔炎,炭疽65±12
クラビット表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、肺結核及びその他の結核症、Q熱90
バレオン表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症,リンパ管・リンパ節炎,慢性膿皮症、外傷・熱傷および手術創等の二次感染,乳腺炎,肛門周囲膿瘍、骨髄炎,関節炎、急性気管支炎,肺炎,肺膿瘍,慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎,腎盂腎炎,前立腺炎(急性症,慢性症),尿道炎、感染性腸炎、バルトリン腺炎,子宮内感染,子宮付属器炎、眼瞼膿瘍,涙嚢炎,麦粒腫,瞼板腺炎,角膜炎(角膜潰瘍を含む)、中耳炎,副鼻腔炎、歯周組織炎,歯冠周囲炎,顎炎70~80
グレースビット咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎、子宮頸管炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎80以上
スオード表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、コレラ、子宮内感染、子宮付属器炎、麦粒腫、中耳炎、副鼻腔炎36~43
タリビッド表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、ハンセン病90
バクシダール表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、尿道炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、中耳炎、副鼻腔炎、炭疽、野兎病26~32

尿路感染症は、臨床経過により急性と慢性に、その発症に関わる起訴疾患の有無により単純性と複雑性に、感染部位により上部尿路感染(腎盂腎炎など)と下部尿路感染(膀胱炎など)に分類される。

急性単純性膀胱炎の起炎菌は、大腸菌が7〜8割で、そのほか肺炎桿菌、プロテウス・ミラビリスなどを加えたグラム陰性菌がほとんどを占める。

以前では抗菌薬は7~10日間程度内服されてきましたが、最近は単回投与や3日間投与法などが試みられています。
一部のニューキノロン系薬では単回投与も有効といわれていますが、ST合剤の1週間投与やニューキノロン系薬の3日間投与に比べると治療効果は劣るとされています。
したがって、急性膀胱炎の治療についてはニューキノロン系薬の3日間投与が基本となります。

急性膀胱炎の原因菌の大半は大腸菌である。
標準的治療法は確立されていないが、耐性菌の抑制、再発防止等を考慮した抗菌薬の使用が必要である。単回投与法,3日間投与法,7日間投与法などが検討されているが、単回投与法は再発率が高くなるため推奨されない。
長期間投与法(7~14日間)は、最近の尿路感染症の既往がある患者、糖尿病患者、症状が1週間以上続く患者に対して適応する。

ペニシリン系薬や第1世代セフェム系抗生物質は使用しない。
ニューキノロン系抗菌薬や新経口セフェム系抗生物質が使用される。

頻度的には低いものの、グラム陽性菌の腐性ブドウ球菌や、セフェム系薬に対してほぼ100%耐性がある腸球菌などが起炎菌となる場合もある。

単純性尿路感染症の初期化学療法としてニューキノロン系薬の3日間投与、新世代セフェム系薬の3〜7日間投与などが推奨されている。

欧米では、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤の3日間投与、ホスホマイシンのトロメタモール塩(日本未発売)の単回投与などが推奨されている。

耐性菌の増加

従来、これらの抗菌薬に対する患者の反応性は良好で、治療において大きな問題はなかった。

ところが近年、キノロン耐性大腸菌や基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌など、大腸菌の耐性化が問題視されるようになってきた。

ESBLとは、主としてペニシリン系薬を分解するβラクタマーゼが、第3世代や第4世代を含む全てのセフェム系薬、モノバクタム系薬も分解するようになったものである。

このESBLをコードする遺伝子はプラスミド上にあり、プラスミドを介してESBL産生菌が急速に広がる可能性があり、世界的に警戒されている。

ESBL産生大腸菌は、セフェム系薬、モノバクタム系薬のみならず、キノロン系薬にも耐性を示す菌株が多い。

カルバペネム系薬が治療の中心として挙げられるが、小児用薬であるテビペネムピボキシル(オラペネム)を除き、注射製剤以外の剤形が存在せず、外来治療での有用性が明らかな経口抗菌薬は存在しないのが現状である。

ホスホマイシンと膀胱炎

ホスホマイシンは、大腸菌やブドウ球菌属などに有効で、膀胱炎にも適応があり、経口薬が存在する。

ホスホマイシンは、近年、海外において有用性が注目されてきており、感性を示すESBL産生大腸菌に対して、ホスホマイシントロメタモールの3g単回投与で有効であったという報告がある。

これを国内で認可されている製剤・投与法で再現するには、ホスホマイシンカルシウム塩1回1gを1日3回、2日間投与するのが妥当とされる。

ホスミシンは安全?

ホスホマイシンは分子量が小さく、タンパク結合率も2%程度と低いので、抗原性が少ないとされ、アレルギー症状が発現する頻度は少ないことが指摘されています。

ホスホマイシンは比較的副作用が少ない薬剤として知られていますが、重篤な副作用として、偽膜性大腸炎が報告されています。

偽膜性大腸炎は、抗生物質の投与により腸内で菌交代現象が起こり、多剤に耐性を持つクロストリジウム・ディフィシルが増殖し、その産生する毒素により引き起こされる大腸炎です。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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