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早産児にインドメタシン?
公開. 更新. 投稿者:小児/先天性疾患.この記事は約3分22秒で読めます.
2,298 ビュー. カテゴリ:胎児の動脈管
インドメタシンの注射薬、インダシン静注用の適応症は「未熟児の動脈管開存症」である。
NSAIDsが妊婦に禁忌である理由として、胎児の動脈管収縮が挙げられますが、その副作用を応用した治療となります。
通常、動脈管は生後閉じて無くなりますが、人によって、特に早産の場合、産後もしばらく残ることがあります。人によっては生後もずっと残って、高齢になってから心臓病で発覚することもあります。
1000g未満で出生した超低出生体重児では、約半数が未熟児動脈管開存症を発症することから、未熟児動脈管開存症と脳室内出血の予防として、出生早期にインドメタシン*を投与することが推奨されています。
胎児の呼吸器系、泌尿器系、消化器系といった機能は、臍帯を通した胎盤に依存している。
臍帯には胎盤で酸素化された血液が流れる臍静脈(1本)と、全身に流れた血液が内腸骨動脈から静脈血として胎盤に戻る臍動脈(2本)が走っている。
臍静脈は胎盤で酸素化された酸素分圧の高い血液(動脈血)が流れており、これが静脈管→下大静脈→右心房を経て、卵円孔を経て左心系に入る。
一方、上大静脈から右心房に流入した酸素分圧の低い血液(静脈血)は、右心房から駆出されると、血管抵抗の高い主肺動脈をバイパスして大動脈弓に流入する。
このバイパスが胎児に特有の動脈管である。
動脈管を流れる血液は酸素分圧が低く、これは胎生期に動脈管が収縮することなく維持できる要因のひとつと考えられている。
動脈管は生後急速に閉塞し、肺呼吸・肺循環が確立する。
妊娠満期に近づくと、動脈管は隣接する肺動脈や大動脈に比べ厚い中膜をもつようになり、生後肺呼吸が始まると動脈血酸素分圧の上昇に伴って強く収縮する。
その後、機能的に閉鎖した動脈管の血管壁内で内皮細胞の増殖、平滑筋細胞の遊走やアポトーシス、線維化などのリモデリングが進展し、通常ヒトでは生後2~3日で器質的な閉鎖が達成される。
早産児の動脈管は動脈血酸素分圧が上昇しても器質的閉鎖に至らず再開通し、新生児の呼吸循環動態に悪影響を与える。
これを動脈管開存症と呼ぶ。
反対に、なんらかの要因で動脈管が出生前に閉塞してしまうと、肺性の高血圧をきたし、心不全から胎児死亡にいたる恐れもある。
動脈管の開通状態は弛緩因子と収縮因子のバランスによって調節されていると考えられている。
弛緩因子の代表はプロスタグランジンE2と一酸化窒素で、一方収縮因子としては酸素とエンドセリンが挙げられている。
胎児動脈管とプロスタグランジン
プロスタグランジンE2はプロスタグランジン受容体(主としてEP4受容体)に結合し、Gs蛋白を介してアデニル酸シクラーゼを活性化させ、血管平滑筋細胞内のcAMP濃度を上昇させることによって動脈管を強力に弛緩させる。
胎生期の動脈管に作用するプロスタグランジンは、胎盤に由来するものと動脈管の血管壁内で産生されるものとがあるが、妊娠末期では量的に前者の寄与が大きいとされている。
その一方、酸素は動脈管平滑筋細胞のミトコンドリアの電子伝達系に作用して、膜電位依存性カリウムチャネルの不活化、次いでL型カルシウムチャネルの開口が起こり、細胞内カルシウム濃度が上昇して、血管収縮にいたると考えられている。
すなわち出生とともに弛緩因子であるプロスタグランジンが胎盤から供給されなくなり、肺呼吸の開始に伴って収縮因子である酸素が増加することで、胎児動脈管の血管トーヌスバランスは瞬時にして収縮へと向かう。
出生後の機能的動脈管閉鎖の機構は、大まかにこのように理解されている。
以上から、妊娠末期にNSADsを投与すると胎児動脈管収縮がみられることがあるのは、動脈管の主要な弛緩因子であるプロスタグランジンの産生が抑制されるためであると考えられている。
この効果を逆用して、インドメタシンやイブプロフェンの注射薬は新生児動脈管開存症の治療薬として用いられている。
小児の新患アンケートの既往歴に「動脈管開存症」と書かれていたら、早産児かも知れない。
アイゼンメンゲル症候群
心室中隔欠損などの疾患により肺高血圧症が亢進し、静脈血が動脈側に流れ込みチアノーゼが現れる状態。左心房と右心房、左心室と右心室を隔てる壁に欠損孔がある場合や、動脈管が開存し肺動脈と大動脈がつながっている場合、血圧が高い左側から右側へ血液が流れ、その結果肺血流量が増加することにより肺高血圧症となる。
この症状が進行すると、逆に右側から左側へ血液が流れるようになり、全身に静脈血が送り出されチアノーゼとなる。こうなると治療は困難で、肺動脈拡張薬の処方や在宅酸素療法など対症療法が中心になる。原因である心疾患の手術は肺高血圧がさらに亢進するため禁忌であり、現状での根治療法は心肺同時移植手術のみとなる。
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