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二日酔いにおすすめの薬は?
公開. 更新. 投稿者:漢方薬/生薬.この記事は約5分32秒で読めます.
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二日酔いにおすすめの薬と成分は?

お酒を飲みすぎた翌朝、頭痛・吐き気・倦怠感に悩まされる「二日酔い」。ドラッグストアでは多くの対策商品が販売されていますが、その成分や効果にはどれほどの裏付けがあるのでしょうか?
ウコン、五苓散、L-システイン、ビタミン、漢方薬、肝臓水解物など、二日酔い対策に用いられる薬や成分について説明します。
ウコンは本当に効く?
「ウコンは肝臓に良い」「飲む前にウコンを飲めば二日酔いしない」といった宣伝文句で知られるウコン(ターメリック)。その主成分であるクルクミンには、抗酸化作用・肝機能保護作用があるとされます。
アルコールを解毒する酵素は肝臓で作られているので、肝臓の機能を高めることが、二日酔い対策の基本である。
ただし、
・食品からの摂取では体内への吸収量が極めて少ない
・黒コショウの成分ピペリンとの併用で吸収が改善するとの報告があるが、ピペリンには薬物相互作用の懸念あり
・ヒトでの臨床試験は乏しく、明確な二日酔い予防効果は不確か
また、ウコンの利胆作用(胆汁分泌促進)は胃酸分泌を刺激するため、胃潰瘍や胃酸過多の人には適さないとされています。
「アルピタン」とは?小林製薬の五苓散製剤
「アルピタン」は、「アルコールなどによる頭痛に」とうたった市販薬。その正体は漢方薬の五苓散です。
五苓散は、飲酒によって体内に水分が停滞しやすい人に適しており、口渇・浮腫・尿量減少を改善する作用があります。
ただし、
・吐き気や嘔吐が強い場合には服用が困難
・二日酔いの原因がアセトアルデヒドによるものであれば、効果は限定的
二日酔いに効果的な漢方薬
「二日酔」に適応のある医療用薬は「五苓散」と「茵ちん五苓散」があります。
二日酔い対策に用いられる代表的な漢方薬には以下のものがあります。
● 五苓散
利尿作用と水分バランスの調整
飲酒前に服用することで予防効果あり
● 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
解毒作用や炎症の鎮静化作用
五苓散と併用すると効果的
これらは症状のパターンに応じて使い分けることが大切です。
L-システインの役割─ハイチオールCは二日酔いに効く?
L-システインはアセトアルデヒドの代謝に関わるアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を活性化するSH基を提供するアミノ酸です。
市販の「ハイチオールC」などに含まれ、
二日酔い
全身倦怠感
肝機能サポート
などに使用されています。
医療用のハイチオール(L-システインのみ)は皮膚疾患が主な適応ですが、OTCではより幅広い効果が表示されています。
ビタミンCと二日酔い─アセトアルデヒドの分解を促進
ビタミンC(アスコルビン酸)は、アセトアルデヒドを分解して酢酸へと変化させる酵素反応の補助因子として働きます。
また、市販薬の「シナールLホワイト」などにはL-システインも配合されており、肝機能サポートと解毒作用が期待できます。
H2ブロッカーとアルコールの相互作用
胃薬(H2ブロッカー)の一部は、胃粘膜にあるアルコール脱水素酵素(ADH)を阻害し、
血中アルコール濃度の上昇
酔いやすくなる
といった影響があります。
特にシメチジン、ラニチジン、ニザチジンはADH阻害作用があるとされ、逆にファモチジンやロキサチジンは影響が少ないと報告されています。
アミノ酸と肝機能
アラニンやグルタミンは、カラダの中でエネルギー源となる糖を新たに作り出すアミノ酸です(糖原性アミノ酸といいます)。
その際に、アルコールが分解される過程で作られるNADH(補酵素の一種)を消費するため、肝臓での分解反応がスムースに進むと考えられているのです。
そのため、これらのアミノ酸を摂取することは、肝臓でのアルコール分解の効率を上げ、二日酔いの回復に役立つ。
肝臓水解物製剤
肝臓水解物は、哺乳動物の肝臓から抽出されたアミノ酸・ペプチドを含む成分で、肝機能を改善する目的で用いられます。
医療用では「プロヘパール」がありましたが、販売中止となっています。OTCでは「ヘパリーゼ」などが有名です。
「二日酔い」という効能効果はなく、効能効果は「滋養強壮、胃腸障害・栄養障害・病中病後・肉体疲労・発熱性消耗性疾患・妊娠授乳期などの場合の栄養補給、虚弱体質」などです。
シジミやキャベツは効く?
● シジミ:
タウリンやアミノ酸を含む
肝機能サポートが期待されるが、鉄分が多くC型肝炎患者には注意
● キャベツ:
ビタミンU(メチルメチオニンスルホニウムクロライド)を含む
医薬品としては「キャベジンUコーワ錠」が存在
生での摂取が効果的だが、胃が弱っているときには注意
スポーツドリンクは有効?
アルコールの利尿作用で失われた水分や電解質を補うために、スポーツドリンクは理にかなった選択です。
水分補給
糖分補給(アルコール分解に必要)
この両面をサポートしてくれるのが特徴です。
鍛えればお酒に強くなる?
お酒が飲めない人でも鍛えれば強くなるとよく言います。
私はお酒が全く飲めないので、飲める人からよく言われますが、鍛えても強くなりませんでした。
お酒が弱い、強いというのは、遺伝で決まっている酵素の力なので、それを努力で変えることはできないようです。
ただし、習慣的に飲酒を続けていると、アルコールを解毒するためのP450が増えてきます。
増えたP450はアルコールをどんどん解毒し、さらにアルコールを飲めるようになります。
しかし、P450が増えるといっても、先天的にALDHが欠損している人では、お酒は強くなりません。
P450が増えてアルコールの分解が速くなっても、アセトアルデヒドを分解できないため、ジスルフィラム様作用が現れてしまいます。
二日酔い対策は体質と目的に応じて選ぶ
成分/薬品 | 作用・目的 | 注意点 |
---|---|---|
ウコン | 肝機能サポート・利胆作用 | 胃潰瘍には禁忌 |
五苓散 | 水分代謝調整 | 吐き気が強いと服用困難 |
L-システイン | 解毒・酵素活性化 | 効果は個人差あり |
ビタミンC | アセトアルデヒド分解促進 | 食事からの補給も可 |
肝臓水解物 | 肝機能改善 | 医薬品では適応外 |
H2ブロッカー | 胃酸抑制 | 一部製品でADH阻害作用 |
二日酔い対策に万能な薬はありません。症状の原因(脱水、アセトアルデヒドの蓄積、胃酸過多など)や体質(アルコール代謝酵素の活性)を把握し、自分に合った方法で対策を講じることが大切です。
薬剤師としては、二日酔いで悩む患者に対して「何を使うべきか」ではなく「なぜ効くのか、なぜ効かないのか」という背景から説明することで、より信頼性の高い対応が可能になります。


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2 件のコメント
PPIは二日酔いにききますか
コメントありがとうございます。
二日酔いによる吐き気はアルコールによる胃酸過多が原因のため、PPIが効く可能性はあります。
しかし、二日酔い予防として、お酒を飲む前に薬を飲むようなことは止めましょう。