2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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スローケー錠をアスパラカリウムに換算するには?

カリウム製剤

カリウム製剤の主力商品であったスローケーが販売中止となり、2020年3月で経過措置期間も満了となったため、スローケーのジェネリック、ケーサプライ錠に処方が集中しているが、集中しているがゆえに在庫が足りない状態となり2020年6月現在においても出荷調整中である。

そのため、ケーサプライ錠の処方を受けてしまったら、ケーサプライ錠の在庫のある薬局を紹介するか、医師に電話して類似薬への処方変更をお願いする。

カリウム製剤には、
・塩化カリウム(スローケー
・Lアスパラギン酸カリウム(アスパラカリウム
・グルコン酸カリウム(グルコンサンK
の3種類がある。
(2019年1月末でスローケーは販売中止となり、2020年3月までの経過措置となる)

それぞれの規格は、
スローケー錠600mg
アスパラカリウム錠300mg、アスパラカリウム散50%
グルコンサンK錠5mEq、グルコンサンK錠2.5mEq、グルコンサンK細粒4mEq/g
といったものがある。

当然ですが、スローケー錠600mgにカリウムが600mg入っているわけではない。
カリウムがどのくらい入っているかはmEq(ミリ当量、ミリイクイバレント)に換算する必要がある。

カリウム1mEqは39.1mgである。
カリウム製剤の中には、用量を重量(mg)で表記しているものがあるが、この値はカリウム化合物の重量であることに注意する。
アスパラカリウム錠300mg(L-アスパラギン酸カリウム、分子量171.19)はカリウム約1.8mEq。
スローケー錠600㎎(塩化カリウム、分子量74.55)はカリウム約8.0mEqに相当する。
これらのカリウム相当量(mEq)は、添付文書の「組成」の欄に記載されている。

カリウムは1日に約40mEq必要らしい。

スローケーの添付文書には、丁寧に、1錠中塩化カリウム(日局)600mg(カリウムとして8mEq)と書かれている。
スローケー600mg5錠で必要量に達する。

グルコンサンK錠は2.5mEq、5mEq、4mEq/gと単位がミリ当量なのでわかりやすい。
用法用量も「1回カリウム10mEq相当量を1日3~4回経口投与。」となっており、大体1日のカリウム必要量のようだ。

アスパラカリウムの添付文書にも、
L-アスパラギン酸カリウム 1錠中 300mg(K+:1.8mEq)
L-アスパラギン酸カリウム 1g中  500mg(K+:2.9mEq)
と書かれている。

アスパラカリウム錠300mgだと22錠、アスパラカリウム散13.7gくらいで必要量に達する。
と単純にはいかないようだ。

Lアスパラギン酸カリウムは塩化カリウムに比べ2倍以上組織移行、保持能力が良いとされているのでアスパラカリウムの常用量は塩化カリウム製剤の常用量に比べ少ない。アスパラギン酸カリウムは、塩化カリウムの4分の1~2分の1(カリウム相当量)で十分な効果を発揮したとの報告もある。

スローケーの常用量上限が1日4錠=32mEq
アスパラカリウム散の常用量上限が1日5.4g=約16mEq
なので、アスパラカリウムはスローケーの1/2のカリウム量で良いということになる。

できれば、ケーサプライ錠からアスパラカリウム錠への変更を提案したいが、体内動態も異なるので、「同じように効くの?」と医師から同等性について問われた場合には「同じではありません」としか言えず、そのまま調剤しても薬局としての責任も問われかねないので、スローケー錠の在庫のある薬局を紹介するしか方法はない。

ニプロESファーマのHPに以下のようなQ&Aが記載されていた。

【アスパラカリウム錠300mg】
他のカリウム製剤(経口剤)からアスパラカリウム製剤(経口剤)へ切り替える際の換算量は?

換算式はございません。また、臨床でのデータもございません。

<参考>
各カリウム製剤によって、常用量(添付文書で規定している用法・用量/1日量;K+のmEq数)は異なっています。
これは各製剤の生体内利用率や組織移行性等の違いによるものと考えられます。
切り替える際の確定された換算式はありませんが、常用量対比から計算する方法があります。
常用量対比で換算した用量を切替え時の目安の初回用量として、薬剤切替え後は、適切な期間内[処方医のご判断;例)概ね1~2週間]に
血清カリウム濃度を測定し、用量調整をお願いします。
常用量対比=それぞれの製剤の1日用量の上限同士を治療学的に等量と考え、以下を比例計算するという考え方

参考として、各製剤からアスパラカリウムへの切り替え方法について記載されている。

グルコンサンKからの切り替え

グルコンサンKで摂っているカリウムのmEq数の約4割を目安に開始し、血清カリウム値を見てその後の投与量を検討してください。
例)グルコンサンK 30mEqからアスパラカリウム錠300mgへ変更する場合
  グルコンサンK 30mEq
  アスパラカリウム錠300mg1錠=カリウムとして1.8mEq
                ↓
アスパラカリウム錠300mgを用いて、12mEq(30mEqの4割)になる量を求めます。
                ↓
         12mEq/1.8mEq=約7錠

スローケー又はケーサプライからの切り替え

スローケー又はケーサプライで摂っているカリウムのmEq数の約半分を目安に開始し、血清カリウム値を見てその後の投与量を検討してください。
例)スローケー又はケーサプライ1錠からアスパラカリウム散50%へ変更する場合
  スローケー又はケーサプライ1錠=カリウムとして8mEq 
  アスパラカリウム散50%1g=カリウムとして2.9mEq
              ↓
 アスパラカリウム散50%を用いて、4mEq(8mEqの半分)になる量を求めます。
              ↓
           4mEq/2.9mEq=約1.4g

主なカリウム製剤(経口剤)の常用量

有効成分    :アスパラギン酸カリウム
製品名     :アスパラカリウム/ニプロES=ニプロ(製造販売会社=販売会社)
剤形(K量)   :錠 (1.8mEq/錠)/散(2.9mEq/g)
用法・用量   :通常成人1日0.9~2.7g(錠:3~9錠、散:1.8~5.4g)を分割経口投与する。
         なお、症状により1回3g(錠:10錠、散:6g)まで増量できる。
常用量の1日K量:錠 5.4~16.2mEq/日/散 5.2~15.7mEq/日

有効成分   :グルコン酸カリウム
製品名    :グルコンサンK/サンファーマ(製造販売会社)
剤形(K量) :錠(5mEq/錠)(2.5mEq/錠)/細粒(4mEq/g)
用法・用量  :1回カリウム10mEq相当量を1日3~4回経口投与。症状により適宜増減する。
常用量の1日K量:30~40mEq/日
アスパラカリウムとのK量の常用量上限比    1:0.4
アスパラカリウムへの換算式(目安の初回)   グルコン酸KのmEq量×0.4=アスパラカリウムのmEq量

有効成分   :(徐放性)塩化カリウム
製品名    :スローケー錠600mg/ノバルティス(製造販売)[2020年3月末経過措置満了予定]
ケーサプライ錠600mg/佐藤薬品=アルフレッサファーマ(製造販売会社=販売会社)
剤形(K量) :錠(8mEq/錠)
用法・用量  :通常成人は1回2錠を1日2回、食後経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。
常用量の1日K量:32mEq/日
アスパラカリウムとのK量の常用量上限比    1:0.5
アスパラカリウムへの換算式(目安の初回)   スローケーのmEq量×0.5=アスパラカリウムのmEq量
ケーサプライのmEq量×0.5=アスパラカリウムのmEq量

商品名一般名剤形成分量K相当量
塩化カリウム末塩化カリウム原末13.4mEq/g
K.C.Lエリキシル(10w/v%)塩化カリウムエリキシル0.1g/mL1.3mEq/mL
スローケー錠600㎎塩化カリウム600mg/錠8.0mEq/錠
グルコンサンK細粒グルコン酸カリウム細粒937mg/g4.0mEq/g
グルコンサンK錠2.5Eqグルコン酸カリウム585mg/錠2.5mEq/錠
グルコンサンK錠5mEqグルコン酸カリウム1170mg/錠5.0mEq/錠
アスパラカリウム散50%L-アスパラギン酸カリウム500mg/g2.9mEq/g
アスパラカリウム錠300mgL-アスパラギン酸カリウム300mg/錠1.8mEq/錠

カリウム製剤と簡易懸濁法

「内服薬経管投与ハンドブック第3版」および製薬会社によると、アスパラカリウム錠300mg、スローケー錠600mg、グルコンサンK錠5mEqはいずれも簡易懸濁法による経管投与に適さないとされる。
散剤に関しては、アスパラカリウム散はチューブに滞留するが、フラッシュすれば投与できる。
グルコンサンK細粒は55℃10分の懸濁でチューブを容易に通過したとの記載がある。

処方例

アスパラカリウム錠300mg 3錠  
 1日3回毎食後 30日分

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
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