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ミネブロとセララの違いは?
公開. 更新. 投稿者:心不全/肺高血圧症.この記事は約6分50秒で読めます.
12,392 ビュー. カテゴリ:MR拮抗薬ミネブロ
2019年2月に新しくミネブロという選択的ミネラルコルチコイド受容体ブロッカーが薬価収載されました。
成分名はエサキセレノン。
つまりエプレレノン=セララと同じような薬です。
セララとミネブロの違いをみていきます。
ミネブロのMR受容体選択性
MR(ミネラルコルチコイド受容体)拮抗薬は、血圧上昇に関わるアルドステロンが作用するMRに拮抗的に働くことで降圧効果を発揮する。
第1世代としてスピロノラクトン(アルダクトンA)、第2世代としてエプレレノン(セララ)が使われてきた。ただし、スピロノラクトンはステロイド骨格を有し、MRへの選択性が低い為、プロゲステロンなど他のステロイドホルモン受容体にも作用し、女性化乳房や月経不順などの性ホルモン関連の副作用が頻発する問題がある。エプレレノンもステロイド骨格を有するものの、MR受容体への選択性が高く、スピロノラクトンで見られるような副作用リスクは少ない。
一方、エサキセレノン(ミネブロ)は、非ステロイド骨格のMR拮抗薬で、非臨床試験においてスピロノラクトン、エプレレノンに比べて強いMR阻害作用と高いMR選択性を認めた。臨床試験では既存薬と同等の降圧効果を示し、性ホルモン関連副作用はほぼ認められなかった。
ミネブロと腎機能
セララの禁忌は「高血圧症及び慢性心不全共通」と「高血圧症の場合」にわけられている。
ミネブロは高血圧症の適応しかないので、「高血圧症の場合」の禁忌と比較することになるが、その場合、セララの禁忌はミネブロよりも腎機能に対して強めの禁忌になっている。
セララの禁忌には以下のように書かれている(高血圧症の場合)
(1) 微量アルブミン尿又は蛋白尿を伴う糖尿病患者[高カリウム血症を誘発させるおそれがある。]
(2) 中等度以上の腎機能障害(クレアチニンクリアランス50mL/分未満)のある患者[高カリウム血症を誘発させるおそれがある。]
一方、ミネブロの禁忌には以下のように書かれている。
重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者[高カリウム血症を誘発させるおそれがある。臨床試験における投与経験はない。]
蛋白尿を伴う糖尿病患者なんて、ざらにいそうなので、腎機能の程度によらず糖尿病患者にセララは使いにくい。ミネブロのほうが使いやすい。
ミネブロの併用禁忌
まず、併用禁忌がセララに比べて少ないようです。
ミネブロの併用禁忌
カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトン、トリアムテレン、カンレノ酸カリウム)、アルドステロン拮抗剤(エプレレノン)又はカリウム製剤(塩化カリウム、グルコン酸カリウム、アスパラギン酸カリウム、ヨウ化カリウム、酢酸カリウム)を投与中の患者
セララの併用禁忌
カリウム保持性利尿薬を投与中の患者
イトラコナゾール、リトナビル及びネルフィナビルを投与中の患者
カリウム製剤を投与中の患者(慢性心不全では可)
イトラコナゾール、リトナビル、ネルフィナビル使用中でもミネブロ投与可能です。
しかし、ミネブロはセララと同様、薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4により代謝されるため、イトラコナゾールなどの強いCYP3A阻害薬との併用はミネブロの血中濃度が上昇し、血清カリウム値上昇を誘発し得る。また、リファンピシンなど強いCYP3A誘導薬はミネブロやセララの作用を減弱させる恐れがあり、ともに併用注意となっている。
カリウム値とミネブロ
次にカリウム保持性利尿薬ですので、高カリウム血症の副作用について。
セララとも共通で、「本剤投与開始時に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えている患者」で禁忌。
本剤の投与中に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えた場合には減量を考慮し、5.5mEq/Lを超えた場合は減量ないし中止し、6.0mEq/L以上の場合には直ちに中止すること。
となっています。
カリウム値については最近は処方せんに記載されている病院も増えているのでチェックが必要です。
また、肝機能障害に関する禁忌項目もセララでは、
重度の肝機能障害(Child-Pugh分類クラスCの肝硬変に相当)のある患者[高カリウム血症等の電解質異常が発現するおそれがある。]
と書かれていますが、ミネブロでは慎重投与となっています。ミネブロが肝臓にやさしいのかというと、そうではなく、ただ単に使用経験が無いというだけのようだ。
それでも添付文書上セララは「肝機能異常がみられることがあるので、投与開始後1ヵ月を目処に肝機能検査値を観察し、その後も定期的に観察すること。」と検査が義務付けられているので、ミネブロはその点使いやすい。
適応症については、ミネブロはまだ「高血圧」のみ。
セララは慢性心不全もあるので、ミネブロもそのうち慢性心不全の適応を取っていくのだろう。
アルドステロン拮抗薬
この薬は、体の中にナトリウムを取り込んでカリウムを排泄させ、体の水分や血圧を調節しているホルモン(アルドステロン)が、特定部位(鉱質コルチコイド受容体)に結びつくのを防ぎ、このホルモンの作用を抑えて、体から水分とともにナトリウムが排泄されて血圧を下げる薬です。
ミネラルコルチコイド受容体にだけ選択的に結合する。
副作用少ない。
スピロノラクトンと異なり、女性化乳房などの性ホルモン関連の副作用は報告なし。
抗アルドステロン薬には、心筋線維化抑制などの心血管保護作用も期待される。
心血管障害に対して保護的に作用することが期待される高選択性のミネラロコルチコイド受容体拮抗薬エプレレノンが降圧薬として発売された。
水・電解質に対する効果以外に心血管系の線維化を抑制することにより、重症心不全の生命予後を改善する。
スピロノラクトン(アルダクトンA)、エプレレノンの有用性が示されている。(RALES、EPHESUS)
アルドステロン受容体への特異性の高い、したがって副作用も弱いと考えられるエプレレノンがある。
副作用の点から、またアルドステロンの心・血管臓器障害を抑制するという観点からきわめて有効である。
事実、降圧薬としては25mgで安全に副作用なく用いられる
アルドステロンは副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンの一つで、RASの最終産物です。
アンジオテンシンⅡにより分泌が促進され、腎の遠位尿細管に作用してNaや水の再吸収を促進することで体液量を増加させて血圧を上昇させます。
アルドステロン拮抗薬は、アルドステロン受容体(ミネラルコルチコイド受容体)を阻害することで降圧効果を発揮します。
古典的なスピロノラクトンと、選択的アルドステロン拮抗薬と呼ばれる比較的新しいエプレレノンの2種類があります。
スピロノラクトンはそもそも利尿薬なので、心不全があって少し体液貯留があるような人に投与すると非常に有効です。
ただ、血圧はそれほど下がらないという印象なので、降圧薬として使うというよりはむしろ、降圧利尿薬という使い方が正しいと思われます。
治療抵抗性の心不全症例にも使用可能です。大規模臨床試験の結果、重症心不全症例の予後改善効果が示されました。最近の臨床試験では、選択的アルドステロン拮抗薬を使うことで心筋の線維化を遅らせ、心房細動予防効果を有する可能性も示されています。
この薬で問題になるのは、カリウムが貯留しやすくなることです。とくにACE阻害薬やARBとの併用では高カリウム血症の出現に注意を要します。
古くからあるスピロノラクトンでは女性化乳房や乳房痛などの副作用が問題でしたが、選択的アルドステロン拮抗薬ができてから、そうした副作用は意識しなくて済むようになりました。
投与対象としては、高血圧があって、心不全が前面に出ている人、体液貯留はあるものの、腎機能はそれほど障害されていないような人によく用います。
とくに一度高血圧性の心臓量、心筋梗塞などを発症して、心不全がいつ出てもおかしくないような人に対しては、この系統の薬が必須です。
多くの臨床試験で、心不全の発症を抑制することが示されています。
心臓以外では、副腎の腫瘍などが原因で起こる原発性アルドステロン症の薬物療法では、アルドステロン拮抗薬とCa拮抗薬が治療の中心となります。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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