2025年5月29日更新.2,482記事.

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サイトテックはなぜ妊婦に禁忌?中絶薬メフィーゴパックにも含まれるミソプロストール

妊婦に禁忌の胃薬サイトテック

「妊婦に禁忌の胃薬」として知られているのがサイトテック(ミソプロストール)。NSAIDs潰瘍の治療に使われる薬で、通常はNSAIDs長期服用による胃・十二指腸潰瘍が適応となります。

添付文書には明確に、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。本剤には子宮収縮作用があり、妊婦で完全又は不完全流産及び子宮出血がみられたとの報告がある。」と記載されています。

サイトテックはプロスタグランジンE1(PGE1)誘導体で、子宮収縮作用を持つため、妊婦への投与は流産リスクを高めます。

メフィーゴパックに含まれるミソプロストール

実はこのミソプロストールは、2023年に国内承認された経口中絶薬「メフィーゴパック」にも含まれています。

メフィーゴパックはミフェプリストン(抗プロゲステロン薬)とミソプロストール(子宮収縮薬)の2剤で構成されています。
ミフェプリストンで妊娠維持を困難にし、ミソプロストールで子宮収縮を促すというメカニズム。

つまり、サイトテック(ミソプロストール)は用量や使用目的によっては中絶に使われる薬でもあり、妊婦にとっては重大なリスク薬であることがわかります。

国内でも、サイトテックを腟内に挿入するなどして、分娩誘発や流産処置に用いた事例があり、科研製薬は「適正使用に関するお願い」で注意喚起を出しています。

ちなみにプレグランディン腟坐剤(ゲメプロスト)というサイトテックのようなプロスタグランジンE1誘導体製剤も中絶に使われます。こちらは妊娠中期以降(妊娠12週以降)に使用可能で、メフィーゴバックは妊娠9週までです。

その他のプロスタグランジン製剤

薬剤名一般名プロスタグランジン分類妊婦禁忌
サイトテックミソプロストールPGE1誘導体禁忌
オパルモンリマプロストPGE1誘導体禁忌
プロサイリン/ドルナー/ケアロード/ベラサスベラプロストPGI2誘導体禁忌
キサラタン点眼液ラタノプロストPGF2α誘導体禁忌ではない

点眼薬(キサラタンなど)は全身作用がほぼないため、「治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与可」とされていますが、内服薬や腟坐剤のような全身作用のある製剤は原則禁忌です。

ムコスタ、セルベックスなどの胃薬の作用機序にも、胃粘膜プロスタグランジンE2を増加させる働きが記載されているが、これらは妊婦に禁忌とはなっていない。汎用されている胃薬であり現在でもそのような報告がないということは安全性は高いとみてよいであろう。

・サイトテックはNSAIDs潰瘍に使われるが、子宮収縮作用を持つため妊婦には禁忌。
・成分のミソプロストールは中絶薬「メフィーパック」にも含まれる薬剤である。
・医師からの処方意図があいまいな場合、妊娠可能年齢女性への投与は特に慎重に確認する必要がある。

「妊婦禁忌」の意味を理解し、服薬指導や処方監査時に確実に確認すべき薬剤の一つ。

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