2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

PPIで下痢になる?

PPIとコラーゲン大腸炎

薬剤師

PPIを飲んで下痢をすることがある?

慢性の水溶性下痢の原因として、Collagenous colitis(CC、コラーゲン大腸炎、膠原線維性大腸炎)なるものがある。

タケプロンの副作用にも

下痢が継続する場合、collagenous colitis等が発現している可能性があるため、速やかに本剤の投与を中止すること。腸管粘膜に縦走潰瘍、びらん、易出血等の異常を認めることがあるので、下血、血便が認められる場合には、適切な処置を行うこと。

という記載が見られる。

コラーゲン大腸炎は顕微鏡的大腸炎に含まれる。
顕微鏡的大腸炎は大腸の組織標本を顕微鏡で観察して初めて診断される疾患で、膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)とリンパ球浸潤大腸炎(lymphocytic colitis)の2つに分類される。

薬剤との関連が指摘されており、アカルボース、アスピリン、ランソプラゾール、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などが挙げられている。
原因薬剤の投与を中止すれば治ります。

PPIで下痢をすると聞くと、胃での殺菌効果が薄れて、腸内細菌叢が乱れて、クロストリジウム・ディフィシル菌が増えて、偽膜性大腸炎というのがイメージされます。
NSAIDsだと小腸障害による下痢とか。

NSAIDsとPPIの長期併用例は多く見られるので、抗生剤投与時と同様に下痢に関するインタビューも強化してみよう。

PPIとCDAD

PPIやH2ブロッカーはクロストリジウム・ディフィシルやカンビロバクターといった消化器感染症のリスクを上昇させる。

クロストリジウム・ディフィシルは、他の細菌感染治療目的で抗菌薬を投与しているうちに増殖してくる薬剤耐性菌としてよく知られており、ときに致死的になる感染症です。
最近では、抗菌薬を投与された患者が使用していたベッドをその次に使用した患者がクロストリジウム・ディフィシルに感染するリスクが上昇するという報告もあります。

カンピロバクターは細菌性腸炎の原因菌として有名で、鶏肉の刺身やタタキから感染することが多いのが特徴です。
感染するとギラン・バレー症候群を発症することもあります。

薬剤性の下痢

薬剤性の下痢の原因には、抗菌薬起因性腸炎、腸管機能障害、腸管粘膜障害などがある。

抗菌薬起因性腸炎は、抗菌薬の投与により腸内細菌叢が変化することによるもので、薬局でも日常的に遭遇する副作用である。

腸管機能障害の下痢は、消化管運動を促進する薬剤が原因となる。
例えば、マクロライド系抗菌薬やタクロリムス水和物、ミソプロストール、コルヒチンなどは消化管運動を促進して、下痢を引き起こす可能性がある。

腸管粘膜障害による下痢は、NSAIDsや低用量アスピリンのシクロオキシゲナーゼ阻害作用が原因となることが広く知られているが、近年、ランソプラゾールの服用により腸管粘膜障害を起こす患者がいることが知られるようになっている。
原因として考えられるのが、膠原線維性大腸炎である。膠原線維性大腸炎は慢性水溶性下痢を主訴とし、中高年の女性に好発する大腸の炎症性疾患で、病理組織上、炎症がある大腸粘膜上皮の下に膠原線維体の肥厚を形成するのが特徴。
大腸内視鏡検査による生検で確定診断するが、内視鏡的異常を認めないケースも多い。発生機序は不明。

タケプロンが下痢に効く?

PPIで下痢になる、という話とは逆に、下痢にPPIが使われるというケースもあるようです。

先天性クロール下痢症(congenital chloride diarrhea;CCD)という先天性疾患があり、回腸末端および結腸の腸管上皮におけるCl-/HCO3-イオンの輸送障害により、Clを腸管から大量に喪失し難治性の浸透圧性下痢をきたします。

プロトンポンプ(H+,K+-ATPase)は、胃だけでなく腸にもあり、PPIがクロール排泄低下を目的に処方される。

処方例

タケプロンOD錠15㎎ 1錠  
 1日1回夕食後 28日分

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

コメント


カテゴリ

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
SNS:
プライバシーポリシー

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

最新の記事


人気の記事

検索