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ルパフィン・デザレックス・クラリチンの違い
公開. 更新. 投稿者: 6,364 ビュー. カテゴリ:花粉症/アレルギー.この記事は約5分52秒で読めます.
目次
ルパフィン・デザレックス・クラリチンの違い―代謝でデスロラタジンになる3剤

クラリチンとデザレックスとルパフィンの違いは何?
抗ヒスタミン薬の中でも、
ルパフィン(ルパタジン)・デザレックス(デスロラタジン)・クラリチン(ロラタジン)
は “構造が類似している” という特徴がある。
デザレックスの構造式
クラリチンの構造式
ルパフィンの構造式
実際、ロラタジンとルパタジンは代謝を受けた後
どちらも「最終的に」デスロラタジンになる。
つまり
クラリチン → デスロラタジン
ルパフィン → デスロラタジン
という共通点がある。
しかし、臨床現場での位置づけや眠気、相互作用、作用機序には大きな差がある。
本記事では、これら3剤の“共通点”と“圧倒的な違い”を、薬剤師向けにわかりやすく整理する。
3剤の基本関係 ― なぜ「代謝で同じ薬」になるのか?
■ クラリチン(ロラタジン)
ロラタジンは体内に入ると
CYP3A4/2D6 により代謝 → デスロラタジンへ
デスロラタジンはロラタジンの「活性代謝物」であり、
クラリチンの抗アレルギー作用の主役は実質的にはデスロラタジンである。
■ デザレックス(デスロラタジン)
デザレックスはその デスロラタジンそのもの を製剤化した薬。
そのため、
・発現が早い
・眠気が極めて少ない
・相互作用が少ない
といった特徴がある。
■ ルパフィン(ルパタジン)
ルパタジンも体内で代謝され
デスロラタジンを生じる
ことが知られている。
しかし、ルパタジンは単なるロラタジンの類似薬ではなく、
PAF(血小板活性化因子)受容体拮抗作用
という全く別の機能を併せ持っている。
| 薬剤名 | 代謝後の主な活性体 |
|---|---|
| クラリチン(ロラタジン) | デスロラタジン |
| ルパフィン(ルパタジン) | デスロラタジン+固有のPAF拮抗活性 |
| デザレックス(デスロラタジン) | そのまま活性体 |
つまり構造は似ていても、
薬物としての性質は決して同一ではない。
構造式から見る3剤の近さと違い
薬剤師なら、構造式を見ると以下の点に気づく。
・3剤とも ルチジン環+ピペリジン環 を基本骨格に持つ
・ルパフィンには PAF拮抗作用を生む特徴的なルチジニル構造 がある
・デスロラタジンはロラタジンの脱炭酸体(代謝後活性体)
つまり、「似ている」のは確かだが、
ルパタジンだけは構造が“二刀流”になっており、
ヒスタミン H1 受容体拮抗+PAF受容体拮抗 という
二重の抗アレルギー活性を持つ。
眠気の強さ ― 実はここが3剤の最大の差
■ クラリチン
眠気:ほぼなし
添付文書に運転注意の記載なし。
(第2世代抗ヒスタミン薬の代表格)
■ デザレックス
眠気:極めて少ない
睡眠障害の報告は非常に少なく、臨床的にも“最も眠くなりにくい群”に位置する。
■ ルパフィン
眠気:注意が必要。運転禁止。
第2世代でありながら、添付文書上は
「自動車の運転禁止」
が明記されている極めて珍しい薬。
代謝後にデスロラタジンが生じるので
「デザレックスと同じ成分になるなら眠気は少ないのでは?」
と思いがちだが、それは誤解である。
● なぜルパフィンは眠気があるのか?
・ルパタジン自身が中枢に移行しやすい
・PAF拮抗作用など、固有の薬理作用が眠気に関与する可能性
・代謝前の原薬の性質による
同じデスロラタジンを最終的に生成するとはいえ、
原薬(ルパタジン)の薬理作用は完全には消えない
ということだ。
相互作用の違い ― グレープフルーツジュース問題
■ ルパフィン
CYP3A4 で代謝されるため
グレープフルーツジュースと相互作用あり(代謝阻害 → 血中濃度上昇)
添付文書にも記載されている。
■ クラリチン
CYP3A4・2D6 で代謝されるが
臨床的な相互作用は少ない
グレープフルーツジュースの注意喚起は添付文書にはない。
■ デザレックス
代謝を受けにくく、相互作用が非常に少ない薬。
グレープフルーツジュースの注意も不要。
ルパフィンを特徴づける「PAF(血小板活性化因子)拮抗作用」
この作用こそが
ルパフィン=他の抗ヒスタミン薬との最大の違いである。
■ PAFとは何か?
PAF(platelet-activating factor)は炎症性メディエーターの1つで、
・血管透過性亢進
・気管支平滑筋収縮
・血管拡張
・白血球遊走
など、アレルギー反応全般に強く関わる。
ヒスタミンの作用が “主役” と思われがちだが、
実際にはPAFの血管透過性増強作用はヒスタミンの1万倍とも言われる。
■ IgE がなくてもアレルギーが起こる?
・IgE欠損マウス
・ヒスタミン合成酵素欠損マウス
でもアナフィラキシー様反応が起こることがある。
これは IgG誘導性PAF反応 が存在するためとされる。
■ ルパフィンはこのPAF受容体を拮抗する
ルパタジンは、
・ピペリジン構造(H1拮抗)
・ルチジニル構造(PAF拮抗)
を併せ持ち、
即時型+遅延型アレルギー症状の両方に効く
という特徴を持つ。
特に、
・血管透過性亢進
・白血球遊走
・気管支収縮
といった多角的なアレルギー症状への効果が期待できるため、
蕁麻疹に対する実臨床レベルの満足度が高いとされる。
3剤を臨床でどう使い分けるべきか?
では、構造が似ていて代謝産物も同じなのに、
どう区別すればいいのか?
以下に、臨床的な使い分けをまとめる。
■ クラリチン(眠気なし / 相互作用少)
第一選択になりやすい万能型
・眠気ほぼなし
・運転可能
・相互作用が少ない
・小児から高齢者まで使いやすい
■ デザレックス(眠気最少 / 作用発現がやや速い)
眠気NGの患者の最適解
・最も眠気が出にくい抗ヒスタミン薬の1つ
・即効性が高い(活性体そのもの)
・CYP代謝をあまり受けない
■ ルパフィン(PAF拮抗で蕁麻疹に強い)
皮膚症状・蕁麻疹に特に強い “二刀流”
・蕁麻疹での満足度が高い
・PAF拮抗作用で炎症・血管透過性を強く抑える
・ただし ⇒ 眠気あり(運転禁止)
・CYP3A4で代謝 → 相互作用や禁忌に注意
・グレープフルーツジュース禁止
まとめ ― 代謝でデスロラタジンになる3剤は「似て非なる薬」
3剤は構造的に似ており、代謝面では共通性があるものの、
臨床的には完全に別物と考えた方がよい。
■ 共通点
・ルパタジンもロラタジンもデスロラタジンに代謝される
・構造骨格が似ている
■ 決定的な違い
| 特徴 | ルパフィン | デザレックス | クラリチン |
|---|---|---|---|
| 眠気 | あり(運転禁止) | 最少 | ほぼなし |
| 相互作用 | 多い(特にGFJ) | 極めて少ない | 少ない |
| 代謝 | CYP3A4で代謝(GFJ影響大) | 代謝受けにくい | CYP3A4・2D6 |
| PAF拮抗 | あり | なし | なし |
| 強み | 蕁麻疹・皮膚症状に強い | 眠気なし・即効性 | バランス良く安全 |







