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ノベルジンは食後?食前?
公開. 更新. 投稿者:栄養/口腔ケア.この記事は約9分2秒で読めます.
5,138 ビュー. カテゴリ:ノベルジンの用法
亜鉛欠乏症の適応追加となったノベルジンの用法について。
今まではウィルソン病の適応しか無く、ノベルジンのウィルソン病に対する用法は、以下のようになっていた。
・ウィルソン病(肝レンズ核変性症)
成人には、亜鉛として、通常1回50mgを1日3回経口投与する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日250mg(1回50mgを1日5回投与)とする。
6歳以上の小児には、亜鉛として、通常1回25mgを1日3回経口投与する。
1歳以上6歳未満の小児には、亜鉛として、通常1回25mgを1日2回経口投与する。
なお、いずれの場合も、食前1時間以上又は食後2時間以上あけて投与すること。
空腹時投与です。
「食物と同時摂取した場合、本剤の効果が遅延するおそれがある。」ためとのこと。
ウィルソン病(肝レンズ核変性症ともよばれる)は、常染色体劣性遺伝の先天性銅過剰症です。肝臓での銅代謝障害により、取り込まれた銅が胆汁酸に排泄されず肝機能障害を起こし、さらに銅が全身の臓器に沈着して精神・神経症状や腎機能障害などを引き起こします。早期に診断され適切な治療を続けた場合は予後良好ですが、未治療や治療中断では致死的です。
しかし、ノベルジンの低亜鉛血症に対する用法は以下のようになっている。
・低亜鉛血症
通常、成人及び体重30kg以上の小児では、亜鉛として、1回25~50mgを開始用量とし1日2回経口投与する。通常、体重30kg未満の小児では、亜鉛として、1回25mgを開始用量とし1日1回経口投与する。血清亜鉛濃度や患者の状態により適宜増減するが、最大投与量は成人及び体重30kg以上の小児では1日150mg(1回50mgを1日3回)、体重30kg未満の小児では75mg(1回25mgを1日3回)とする。
なお、いずれの場合も、食後に投与すること。
食後でよい。
同じ薬で適応症によって用法が異なることは珍しくないが、空腹時と食後で分かれているのは珍しい。
酢酸亜鉛を投与すると小腸粘膜細胞にメタロチオネインが誘導されます。食事由来の銅はこのメタロチオネインと強く結合するため、銅の吸収が阻害されますが、酢酸亜鉛を食事と一緒に服用した場合、この作用が遅延する可能性があります。そんとあめ、ウィルソン病に対してはより効果を期待して、「食前1時間以上または食後2時間以上空けて経口投与」と用法が厳密に設定されているのです。一方、酢酸亜鉛を低亜鉛血症に用いる場合は、悪心・嘔吐など消化器系の副作用を回避するため「食後投与」となっています。
低亜鉛血症に対して、1日の服用回数は1日2回、多くて3回であるが、
ウィルソン病に対しては1日3回、多くて5回と、服用頻度が多い。
それだけ、短時間に亜鉛を補給する必要のある病態であるということで、薬効が遅延することが予後の悪化につながりかねないということです。
1日5回投与で空腹時投与って、、、食事の時間を決めていないと、かなりタイミングが難しいだろう。
亜鉛欠乏症に初めての治療薬?
ノベルジンというウィルソン病の薬があります。
ウィルソン病は、体内に銅が蓄積することにより、脳・肝臓・腎臓・眼などが冒される病気です。
日本において出生3万~4万人に1人の割合で発症する遺伝性(先天性)銅代謝異常症です。難病です。
ノベルジンの成分は酢酸亜鉛水和物。
つまり、亜鉛です。
亜鉛薬は食事中の銅吸収阻害をするために、ウィルソン病の銅吸収を妨げる薬として使用されています。
このノベルジンに、新しい適応症が2017年3月に追加されました。
「低亜鉛血症」です。
つまり、低亜鉛血症による味覚障害にも使えるようになったというわけだ。
プロマック使えばいいじゃん。
などと言う人は、プロマックの効能効果を確認すること。「胃潰瘍」の適応しかありません。
ノベルジン錠は25㎎と50㎎があって、1回25~50㎎、1日2回。最大1日150㎎投与できます。
プロマックD錠75㎎に含まれる亜鉛含有量は約17㎎ということなので、1日2回で34㎎補給できます。
厚生労働省『日本人の食事摂取基準2015年版』によると、亜鉛の摂取目安推奨量は成人男性で12mg/日、成人女性では9mg/日とされています。
食品に含まれる亜鉛含有量は以下の通り
牡蠣 13.2㎎/100g
たらこ 3.1㎎/100g
ほたて貝 2.7㎎/100g
うなぎ 1.4㎎/100g
豚レバー 6.9㎎/100g
牛・肩ロース 5.6㎎/100g
鶏レバー 3.3㎎/100g
卵黄 4.2㎎/100g
カシューナッツ 5.4㎎/100g
アーモンド 4.4㎎/100g
納豆 1.9㎎/100g
豆腐 0.6㎎/100g
プロセスチーズ 3.2㎎/100g
精白米 0.6㎎/100g
そば 0.4㎎/100g
食パン 0.8㎎/100g
亜鉛は牛肉や豚肉をはじめとした肉類や魚介類全般に多く含まれます。
魚介類の中でも特に牡蠣は100gあたりの亜鉛の含有量が非常に多く、亜鉛摂取の代表的な食品といえます。牡蠣の可食部分はおおよそですが15gほどで、亜鉛を約2.0mg含んでいます。成人男性の亜鉛の1日所要量は10mgですので、牡蠣を5個食べると1日所要量を満たすことができます。また、チーズ類も亜鉛を多く含み、プロセスチーズは100gあたり3.2㎎(スライスチーズ1枚約20g中0.6㎎)の亜鉛を含有します。
ゴマやナッツ類にも亜鉛は含まれますが、一度に摂れる量が多くないため、亜鉛の摂取目的としてはあまり効率的ではありません。穀物や豆類にも含まれますが、亜鉛の吸収を妨げるフィチン酸も含まれるため、肉類や魚介類には劣るようです。インスタント食品などに使用される食品添加物のポリリン酸も亜鉛の吸収を妨げるため、摂り過ぎには注意が必要になります。
亜鉛は動物性タンパク質やビタミンC、牛乳などに含まれる乳糖などと一緒に摂取することで吸収率が良くなります。
ノベルジンを飲むまでも無いような気がする。というかサプリメントで良いと思う。
しかもノベルジンは薬価が高い。
ノベルジン錠25mg 269.5円/錠
ノベルジン錠50mg 422.3円/錠
プロマックD錠75 32円/錠
亜鉛を取り過ぎれば、今度は銅が欠乏するという悪循環に陥るのではないかという心配もある。
プロマックで銅欠乏症?
プロマックの副作用に「銅欠乏症」というのがある。
銅欠乏症
頻度不明 本剤は亜鉛を含有するため,亜鉛により銅の吸収が阻害され銅欠乏症を起こすことがある。栄養状態不良の患者で銅欠乏に伴う汎血球減少や貧血が報告されているため,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
亜鉛にって銅の吸収が阻害されるが、その発症機序として、亜鉛の大量長期服用(一般的に50mg/日以上)により、金属結合性蛋白であるメタロチオネインが腸管細胞内で誘導され、金属と結合することによりその金属の消化管からの吸収が抑制されると考えられている。
メタロチオネインは亜鉛よりも銅に対して親和性が強いため、消化管からの銅の吸収が抑制され、銅欠乏症が発症する。
亜鉛が腸管細胞で金属結合性タンパク質であるメタロチオネインの生成を誘導します。
メタロチオネインは金属キレート作用をもち、食物に含まれる銅および消化液中に分泌された内因性の銅と腸管粘膜上皮細胞で結合し糞便中に排泄させるため、銅の吸収と門脈循環中への移行を阻害します。また、亜鉛は肝臓など他の臓器でもメタロチオネインを誘導して銅の濃度を下げると考えられています。
メタロチオネインは体内で必須微量元素の恒常性維持や重金属元素の解毒を行います。
メタロチオネインはいくつかの型に分けられますが、肝臓、腎臓、膵臓、心臓などはほとんどの組織に分布している型の金属との親和性は、亜鉛(Zn)<カドミウム(Cd)<銅(Cu)<水銀(Hg)、銀(Ag)の順となっています。
銅欠乏症による貧血は、銅を含む糖蛋白であるセルロプラスミンが低下するため、2価鉄が3価鉄へ変換されず、トランスフェリンと結合できなくなり、鉄輸送障害が生じるためと考えられる。
亜鉛の役割
亜鉛は生命活動の維持に必須の微量金属元素の一つであり、蛋白質の立体構造を維持する役割を担う。
また、多様な酵素の活性補因子であり、これまでに300を超える亜鉛酵素、亜鉛要求性酵素(亜鉛と結合して初めて酵素活性が現れる酵素)が単離されている。
亜鉛の生理作用として、①胎児の発育②皮膚およびその付属器官の新陳代謝③生殖機能④味覚および嗅覚の維持⑤精神神経作用・行動への影響⑦免疫機能維持、などが知られている。
亜鉛は体内に約2g含まれます。
亜鉛は蛋白合成(アミノ酸代謝)に係る酵素のはたらきに必要なため、不足すると蛋白合成が低下し、免疫機能の低下にもつながります。
亜鉛は性ホルモンの生成に深く関与し、生殖機能維持に欠かせないミネラルとされています。男性では、前立腺に亜鉛が多く存在しており、精子の形成と男性ホルモン分泌を促す効果があるといわれています。
偏食で亜鉛不足?
亜鉛は食品を加工する過程で失われやすいため、インスタント食品や加工食品に偏った食事では不足しがちである。
また、薬剤や食品添加物(ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸などの重合リン酸塩類)のキレート作用による吸収障害もある。
亜鉛欠乏症の症状
亜鉛欠乏症の症状としては、皮膚炎と味覚障害・味覚異常がよく知られているが、そのほかにも褥瘡の発症・治癒遅延、嗅覚障害、食欲不振・減退、食事拒否、下痢、アフタ性口内炎、舌炎様症状、口腔咽頭症状、舌痛、口唇痛、精神症状、発育遅延、性的発達遅延、貧血、全身倦怠感など様々な症状を呈する。
中でも舌炎様症状、口腔咽頭症状の訴えは、舌や口内が「荒れた」「ザラつく」「染みる」「ヒリヒリする」「口内が苦い」「渇く感じがする」など多彩である。
また食欲不振・減退および倦怠感も頻繁に見られるが、一般臨床の場で亜鉛欠乏とは気付かれず、不適切な治療を受けることが多い。
特に高齢者の「食欲が出ない」「食事がまずい」などの訴えを、高齢者だから仕方ないと考えて積極的に治療をしないケースも少なくない。
亜鉛欠乏症 | 症状 |
---|---|
皮膚炎 | コラーゲンの合成には亜鉛が必要です。亜鉛が不足すると創傷治癒遅延や皮膚の乾燥が起こります。 |
味覚障害 | 舌の表面には味覚を感じる味蕾があります。味蕾細胞は約1カ月ごとにターンオーバーしますが、細胞再生に亜鉛が使われます。亜鉛が不足すると味蕾の再生がうまく行われず、味覚異常が起こります。 |
慢性下痢 | 亜鉛不足により腸内環境が乱れ、腸の働きが低下し水分の吸収がうまく行われなくなる結果、下痢になると考えられています。 |
汎血球減少 | 血球も細胞分裂によって増えますが、亜鉛が不足すると細胞分裂がうまく行えなくなります。 |
免疫機能障害 | 亜鉛は免疫細胞が活性化するための情報伝達物質として働きます。亜鉛不足により免疫細胞同士の情報伝達がうまく行われなくなります。 |
神経感覚障害 | 亜鉛不足により無欲化、記憶障害、情緒不安定、行動異常などが起こることがあります。 |
認知機能障害 | 亜鉛は記憶に重要な役割を果たしている海馬に多く存在することが知られています。アルツハイマー病では海馬の亜鉛量が少ないことがわかっています。 |
成長遅延 | 細胞分裂が活発な乳幼児期は、亜鉛の需要が高くなっています。亜鉛が不足すると細胞分裂が十分に行われず、成長障害が起こる可能性があります。 |
性腺発育障害 | 亜鉛は性ホルモンの分泌にも関与しています。亜鉛不足により性ホルモンの分泌が減少し、性成熟が遅れる可能性があります。 |
亜鉛を補給するには?
亜鉛の補給には、カキや牛肉など亜鉛を多く含む食品やサプリメントのほか、医薬品がある。
わが国では亜鉛欠乏症の適応での製品が市販されていないため、試薬である硫酸亜鉛などが投与されることもあるが、消化器症状の副作用が多く、服用を続けにくい。
そこで、亜鉛とLカルシノンからなる胃潰瘍治療薬のポラプレジンク(プロマック)が、亜鉛補給目的で積極的に使われている。
保険適応外であるものの、2011年9月26日に社会保険診療報酬支払基金が公表した「添付文書の適応外であっても保険審査上は原則として認める事例のリスト」に、味覚障害に対するポラプレジンクが追加された。
現代人は亜鉛不足?
亜鉛が不足する原因の1つは、食事の取り方にあります。
最近の食事で多いのは、ファストフード、麺類、丼物などのように、早くできてすぐ食べられるものです。
これらの料理は脂肪や穀類が多い、肉・魚などタンパク質源が少ないのが特徴です。
また、ダイエットのようにエネルギーを減らすために全体の食事量を減らすと、必要な栄養素がすべて少なくなります。
朝食抜きなど食事を取らないことも、3回のうち1回取るべき栄養素が欠けるわけですから、必然的に亜鉛不足になります。
亜鉛で背が伸びる?
低身長症の原因の一つとして、亜鉛欠乏があります。
子供の身長を伸ばすために特に重要な栄養素として、タンパク質、カルシウム、亜鉛、マグネシウムが知られています。
亜鉛には様々な生体での働きがありますが、その一つに成長を促す作用があります。
成長ホルモンの分泌を促し、インスリン様成長因子(IGF)の働きを補助することが確認されています。
プロマックは亜鉛含有製剤で、低身長症に用いられることもあるという。
プロマックの明確な効果は認められてはおりませんが、低身長症への処方は数多く報告されています。低身長症の原因の一つとして、亜鉛欠乏があります。
子供の身長を伸ばすために特に重要な栄養素として、タンパク質、カルシウム、亜鉛、マグネシウムが知られています。
亜鉛には様々な生体での働きがありますが、その一つに成長を促す作用があります。
成長ホルモンの分泌を促し、インスリン様成長因子(IGF)の働きを補助することが確認されています。
以上のことから、プロマックや硫酸亜鉛が処方されるケースがあります。
しかしいずれも保険適応外使用になります。
細胞分裂に関与する亜鉛は色々使えますね。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。