記事
ジンタスとノベルジンの違いとは?低亜鉛血症治療薬の比較
公開. 更新. 投稿者: 8,965 ビュー. カテゴリ:栄養/口腔ケア.この記事は約5分6秒で読めます.
目次
ジンタスとノベルジンの違いとは?

2024年1月26日、新たな低亜鉛血症治療薬「ジンタス(Jintaz)」が製造販売承認を取得しました。この薬は、すでに市場に出ている「ノベルジン(Nobelzin)」と同様に亜鉛を補充する医薬品ですが、成分や用法、剤形、薬価などにいくつかの違いがあります。
成分の違い
・ジンタスの成分:ヒスチジン亜鉛水和物(Zinc Histidine Hydrate)
・ノベルジンの成分:酢酸亜鉛水和物(Zinc Acetate Hydrate)
どちらも体内で利用される亜鉛イオンを供給する薬剤ですが、配合されている亜鉛化合物が異なります。ジンタスはヒスチジンと亜鉛を結合させた製剤で、より緩やかな放出や吸収特性を示す可能性があります。
用法・用量の違い
●ジンタス:
適応症:低亜鉛血症
用法用量:1日1回服用
備考:アドヒアランス向上を期待
●ノベルジン:
適応症:低亜鉛血症/ウィルソン病
用法用量:1日2回(~3回)投与
備考:ウィルソン病にも適応あり
ジンタスの大きな特徴は「1日1回の服用」で済む点です。これは服薬アドヒアランス(服薬遵守率)を高める点で大きな利点とされ、製造販売承認時の企業側プレスリリースでも強調されています。
錠剤サイズの比較
錠剤の大きさは服用のしやすさに直結します。
| 製剤名 | 25mg錠径 | 50mg錠径 |
|---|---|---|
| ノベルジン | 6.5mm | 8.5mm |
| ジンタス | 9.0mm | 17.0mm(短径7.0mm) |
特にジンタス50mg錠は長径17.0mmとかなり大きく、嚥下困難を伴う患者には注意が必要です。ノベルジンの方が小型で、患者によっては飲みやすいと感じられることもあるでしょう。
薬価の比較(2024年4月時点)
| 製剤名 | 用量 | 薬価(1錠) | 1日2回投与の場合の薬価 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ノベルジン錠 | 25mg | 201.1円 | 402.2円 | |
| ノベルジン錠 | 50mg | 321.6円 | 643.2円 | |
| ジンタス錠 | 50mg | 232.9円 | 232.9~465.8円(1日1~2錠) | 安め |
ジンタスはウィルソン病の適応がない分、薬価が抑えられていると見られます。また、1日1回の服用で済むため、同じ投与量でも実質的にノベルジンよりコストが安くなる可能性があります。
消化器系副作用の違い
ノベルジンとジンタスは、どちらも最終的には「亜鉛」を補充する薬ですが、亜鉛がどのような形で存在しているかが異なります。
- ノベルジン:酢酸亜鉛水和物
- ジンタス:ヒスチジン亜鉛水和物
この構造の違いは、悪心や嘔吐などの消化器系副作用にも関係すると考えられています。
ノベルジンは消化管内で亜鉛イオンが遊離しやすい
ノベルジンの有効成分である酢酸亜鉛は、亜鉛と酢酸からなる塩です。
消化管内では解離して、
酢酸亜鉛 → Zn²⁺(亜鉛イオン)+酢酸イオン
という形になります。
つまり、ノベルジンを服用すると消化管内に遊離した亜鉛イオン(Zn²⁺)が生じます。
亜鉛イオンには消化管への刺激作用があり、これが悪心、嘔吐、腹部不快感などの消化器症状に関係すると考えられています。
実際、亜鉛製剤では消化器症状が比較的よくみられる副作用の一つです。
ジンタスは「ヒスチジンと亜鉛の錯体」
一方、ジンタスの有効成分であるヒスチジン亜鉛水和物は、単純な亜鉛塩ではなく、アミノ酸であるヒスチジンと亜鉛が結合した錯体です。
イメージとしては、
ノベルジン:亜鉛がバラバラのZn²⁺になりやすい
のに対して、
ジンタス:ヒスチジンが亜鉛を抱えた状態を保ちやすい
という違いがあります。
ヒスチジン亜鉛は比較的安定した錯体であるため、酢酸亜鉛と比較して消化管内で解離する亜鉛イオンが少ないという特徴があります。
そのため、遊離した亜鉛イオンによる消化管への直接的な刺激を抑え、悪心や嘔吐などの消化器系副作用を減らすことが期待されています。
実際に消化器系副作用は少ない?
ジンタスの承認審査で用いられた国内第Ⅲ相試験(NPC-25-3試験)では、消化器関連症状の副作用発現割合は、
- ジンタス群:9.3%(10/107例)
- ノベルジン群:12.8%(14/109例)
でした。
数値としてはジンタス群のほうが低くなっています。
ただし、この結果だけから「ジンタスなら消化器系副作用が明確に少ない」と断定するのは避けたほうがよいでしょう。
PMDAの審査報告書でも、ヒスチジン亜鉛は酢酸亜鉛と比較して消化管で解離する亜鉛イオンが少ないことから、亜鉛イオンによる消化管障害などの副作用の低減が期待されるという位置付けになっています。
したがって、
「ジンタスは消化器系副作用が起こらない薬」ではなく、「構造上、遊離亜鉛イオンが少なく、消化器系副作用の軽減が期待できる薬」
と理解するのが適切でしょう。
「亜鉛は同じ」でも消化管内での姿が違う
ノベルジンとジンタスの活性本体は、どちらも亜鉛です。
しかし、
ノベルジン(酢酸亜鉛)
→ 消化管内でZn²⁺として解離しやすい
→ 遊離亜鉛イオンが消化管を刺激
ジンタス(ヒスチジン亜鉛)
→ ヒスチジンとの比較的安定した錯体
→ 消化管内で解離するZn²⁺が少ない
→ 消化管刺激の軽減が期待される
という違いがあります。
「同じ量の亜鉛を補充するなら何が違うのか?」という疑問に対して、亜鉛そのものではなく、亜鉛をどのような形で消化管に届けるかが違うと考えると、ノベルジンとジンタスの違いを理解しやすくなります。
市場背景と今後の動向
ノベルジンは長年、低亜鉛血症やウィルソン病の第一選択薬として使用されてきましたが、その高薬価が課題でした。現在はジェネリック医薬品(GE)も発売され、先発品のシェアは縮小傾向にあります。さらに、プロマック(ポラプレジンク)などの胃薬が代用的に処方されるケースや、サプリメントでの亜鉛補充も増えてきています。
そうした中で、「ノベルジンより安く、1日1回で済む」という特徴を持つジンタスは、低亜鉛血症領域において今後一定のシェアを獲得する可能性があります。
処方提案の視点から
◎ ジンタスを選ぶべき症例:
・服薬アドヒアランスが懸念される患者
・高薬価がネックとなる症例
・嚥下に問題がない、または大きな錠剤でも服用可能な患者
◎ ノベルジンを選ぶべき症例:
・ウィルソン病の診断がある場合
・錠剤サイズが重要で小型錠が望ましい場合
・ジェネリックやAG製剤でコスト重視の処方が求められる場合
サプリメントやOTCとの比較
処方薬以外でも、亜鉛を含むサプリメントや一般用医薬品(OTC)は多く販売されています。これらは保険適用がないため自己負担にはなりますが、コスト面ではジンタスやノベルジンよりも安価です。ただし、亜鉛の吸収性や含有量、品質の信頼性にはばらつきがあるため、医療的な管理が必要な患者では医療用製剤が推奨されます。
まとめ
ジンタスはヒスチジン亜鉛水和物を主成分とする新しい低亜鉛血症治療薬で、1日1回服用可能。
ノベルジンとの最大の違いは、用法(1回 vs 2回)、錠剤サイズ、薬価、適応症の有無(ウィルソン病)。
処方場面では、患者のアドヒアランス、コスト意識、嚥下能力を考慮して使い分けが望まれる。
新たに登場したジンタスは、ノベルジンに代わる選択肢として、今後の臨床現場において注目される存在になるでしょう。




2 件のコメント
ノルバスク錠、クレストール錠、サプリメントセサミンEPA内服中 ジンタスが開始になりますが
飲み合わせは大丈夫でしょうか
コメントありがとうございます。
大丈夫だと思いますが、調剤を受けた薬剤師、処方医にご確認ください。