2025年6月22日更新.2,505記事.

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ジンタスとノベルジンの違いとは?低亜鉛血症治療薬の比較

ジンタスとノベルジンの違いとは?

2024年1月26日、新たな低亜鉛血症治療薬「ジンタス(Jintaz)」が製造販売承認を取得しました。この薬は、すでに市場に出ている「ノベルジン(Nobelzin)」と同様に亜鉛を補充する医薬品ですが、成分や用法、剤形、薬価などにいくつかの違いがあります。

成分の違い

・ジンタスの成分:ヒスチジン亜鉛水和物(Zinc Histidine Hydrate)
・ノベルジンの成分:酢酸亜鉛水和物(Zinc Acetate Hydrate)

どちらも体内で利用される亜鉛イオンを供給する薬剤ですが、配合されている亜鉛化合物が異なります。ジンタスはヒスチジンと亜鉛を結合させた製剤で、より緩やかな放出や吸収特性を示す可能性があります。

用法・用量の違い

●ジンタス:
適応症:低亜鉛血症
用法用量:1日1回服用
備考:アドヒアランス向上を期待

●ノベルジン:
適応症:低亜鉛血症/ウィルソン病
用法用量:1日2回(~3回)投与
備考:ウィルソン病にも適応あり

ジンタスの大きな特徴は「1日1回の服用」で済む点です。これは服薬アドヒアランス(服薬遵守率)を高める点で大きな利点とされ、製造販売承認時の企業側プレスリリースでも強調されています。

錠剤サイズの比較

錠剤の大きさは服用のしやすさに直結します。

製剤名25mg錠径50mg錠径
ノベルジン6.5mm8.5mm
ジンタス9.0mm17.0mm(短径7.0mm)

特にジンタス50mg錠は長径17.0mmとかなり大きく、嚥下困難を伴う患者には注意が必要です。ノベルジンの方が小型で、患者によっては飲みやすいと感じられることもあるでしょう。

薬価の比較(2024年4月時点)

製剤名用量薬価(1錠)1日2回投与の場合の薬価備考
ノベルジン錠25mg201.1円402.2円
ノベルジン錠50mg321.6円643.2円
ジンタス錠50mg232.9円232.9~465.8円(1日1~2錠)安め

ジンタスはウィルソン病の適応がない分、薬価が抑えられていると見られます。また、1日1回の服用で済むため、同じ投与量でも実質的にノベルジンよりコストが安くなる可能性があります。

市場背景と今後の動向

ノベルジンは長年、低亜鉛血症やウィルソン病の第一選択薬として使用されてきましたが、その高薬価が課題でした。現在はジェネリック医薬品(GE)も発売され、先発品のシェアは縮小傾向にあります。さらに、プロマック(ポラプレジンク)などの胃薬が代用的に処方されるケースや、サプリメントでの亜鉛補充も増えてきています。

そうした中で、「ノベルジンより安く、1日1回で済む」という特徴を持つジンタスは、低亜鉛血症領域において今後一定のシェアを獲得する可能性があります。

処方提案の視点から

◎ ジンタスを選ぶべき症例:
・服薬アドヒアランスが懸念される患者
・高薬価がネックとなる症例
・嚥下に問題がない、または大きな錠剤でも服用可能な患者

◎ ノベルジンを選ぶべき症例:
・ウィルソン病の診断がある場合
・錠剤サイズが重要で小型錠が望ましい場合
・ジェネリックやAG製剤でコスト重視の処方が求められる場合

サプリメントやOTCとの比較

処方薬以外でも、亜鉛を含むサプリメントや一般用医薬品(OTC)は多く販売されています。これらは保険適用がないため自己負担にはなりますが、コスト面ではジンタスやノベルジンよりも安価です。ただし、亜鉛の吸収性や含有量、品質の信頼性にはばらつきがあるため、医療的な管理が必要な患者では医療用製剤が推奨されます。

まとめ

ジンタスはヒスチジン亜鉛水和物を主成分とする新しい低亜鉛血症治療薬で、1日1回服用可能。

ノベルジンとの最大の違いは、用法(1回 vs 2回)、錠剤サイズ、薬価、適応症の有無(ウィルソン病)。

処方場面では、患者のアドヒアランス、コスト意識、嚥下能力を考慮して使い分けが望まれる。

新たに登場したジンタスは、ノベルジンに代わる選択肢として、今後の臨床現場において注目される存在になるでしょう。

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