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ミオピン使用中運転してもいい?
公開. 更新. 投稿者:眼/目薬/メガネ.この記事は約4分32秒で読めます.
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ミオピン使用中に運転してもいい?ミドリンとの違いや瞳孔のはたらき

「疲れ目にミオピンを処方されたけど、運転しても大丈夫?」
薬局ではこうした質問を受けることがあります。特にミドリンやアトロピンのように“瞳孔を広げる目薬”の影響を知っている患者さんほど慎重です。
ミオピンとミドリンの違い、運転の可否、眼科で使われる目薬の作用や副作用、そして「瞳孔」にまつわる話題も含めて勉強します。
ミオピンとはどんな目薬?
成分と作用機序
・一般名:ネオスチグミンメチル硫酸塩
・薬効分類:コリンエステラーゼ阻害薬
・作用:副交感神経を刺激 → 瞳孔括約筋や毛様体筋を収縮 → 瞳孔が小さくなる(縮瞳)
ミオピンは、「近くを見る作業(調節)で疲れた目を回復させる」目的で使われます。瞳孔を縮めて毛様体筋を収縮させることで、ピント調節機能を高めます。
ミドリンとの違いに注意
ミドリンP(一般名:トロピカミド)
・抗コリン薬
・副交感神経を遮断 → 瞳孔が広がる(散瞳)、毛様体筋は弛緩 → 近くが見えづらくなる
つまり、
比較項目 | ミオピン | ミドリン |
---|---|---|
成分 | ネオスチグミン | トロピカミド |
作用 | コリンエステラーゼ阻害 | 抗コリン作用 |
瞳孔 | 縮瞳(小さくなる) | 散瞳(大きくなる) |
ピント | 近くが見えやすくなる | 近くが見えにくくなる |
用途 | 疲れ目、調節緊張 | 眼底検査、疲れ目 |
運転への影響 | 基本的に問題なし | 5~6時間は運転不可 |
ミオピン使用中に運転しても大丈夫?
基本的には「運転OK」
ミオピンは視覚に対する副作用が少なく、運転の可否に関する制限は添付文書上も特にありません。
ただし注意が必要なケースも
・初めて使用するとき
・点眼直後のぼやけや違和感があるとき
・高濃度(1%)の処方で効果が強く出るとき
上記のような場合には、運転前の点眼は避けたほうが安全です。
散瞳薬使用中の運転は絶対NG
一方で、ミドリンPやアトロピンなどの散瞳薬は、使用後に車の運転をしてはいけません。
理由:
・瞳孔が大きく開く → 光がまぶしい(羞明)
・毛様体筋が弛緩 → 近くがぼやける(調節障害)
・効果が5〜6時間、長いと1日以上持続
眼底検査で使われる場合、医療機関側でも「車で来ないように」と注意喚起されます。
眼科に車で行けない?地方では悩ましい問題
特に地方では、車で来院する患者さんが多数を占めます。
眼底検査を予定されている場合、自分で車を運転して来られないために家族に送ってもらったり、タクシーを使ったりする必要が出てきます。
その結果、来院できる日が限定され、診療アクセスの障壁になることもあります。
瞳孔と自律神経:縮瞳と散瞳の生理的メカニズム
状況と瞳孔・関連神経
・明るい場所➡縮瞳・副交感神経
・暗い場所➡散瞳・交感神経
・近くを見るとき➡縮瞳・副交感神経
・遠くを見るとき➡散瞳・交感神経
薬剤がこの自律神経系に作用することで、瞳孔の大きさが変化します。
ベラドンナと美女の話──瞳孔を広げる美の象徴だった薬草
「ベラドンナ」は、学名Atropa belladonna(セイヨウハシリドコロ)というナス科の毒草です。
ベラドンナにはアトロピンが含まれており、瞳孔を大きく広げる(散瞳)作用があります。
ルネサンス期のイタリアでは、女性がベラドンナの抽出液を目にさして瞳孔を広げることで、黒目を大きく潤ませ、官能的に見せるという美容法が行われていました。
この習慣から、ベラドンナ(Bella Donna)=「美しい女性」という呼び名が定着しました。
現代では美容目的で散瞳薬を使うことは危険とされており、医療用以外では認められていません。
内服の抗コリン薬にも注意書き
目薬だけでなく、内服薬の抗コリン薬(例:ブスコパン、ポラキスなど)にも「視調節障害や眠気が出るため、運転等に注意」といった記載があります。
薬剤と添付文書の注意点
・ブスコパン:「運転等危険を伴う機械の操作に従事させないこと」
・ポラキス:「注意させること」程度に記載されている
眼への影響が軽度でも、自律神経に作用する薬剤は運転注意が基本です。
恋をすると瞳孔が開く?感情と散瞳の不思議な関係
瞳孔は、感情によっても変化します。
・恐怖や驚き、緊張 → 交感神経が働き、瞳孔が開く
・好きな人を見つめる → 瞳孔が開くという研究結果も
ただし、光の影響を受けやすいため、恋の証拠にはならないのが現実
まとめ:ミオピンは「運転OK」だけど誤解に注意
ミオピンは瞳孔を縮める目薬で、基本的には車の運転に支障はありません。
ただし、ミドリンのような散瞳薬と混同しやすいため、患者への説明はとても重要です。
また、瞳孔の生理や薬理を理解することで、単なる「目薬の副作用」にとどまらず、目と神経、感情、歴史とのつながりまで見えてきます。
薬剤師の指導ポイントまとめ
・ミオピンは基本的に運転可。初回使用時は慎重に。
・ミドリン・アトロピンは散瞳作用が強く、運転禁止。
・ベラドンナの話を交えて、「散瞳=視界が変わる」ことへの理解を促すとよい。
・内服抗コリン薬も運転注意の記載あり。