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気管支喘息にβ遮断薬は禁忌?
公開. 投稿者:不整脈.この記事は約4分1秒で読めます.
9,233 ビュー. カテゴリ:気管支喘息とβ遮断薬
気管支喘息患者にβ遮断薬は禁忌、だと思い込んでいました。
だって、チモプトールやミケランなどの目薬でも禁忌なんだもん。
飲み薬は言わずもがなでしょ、って。
気管支喘息に禁忌のβ遮断薬
β1非選択性、ISA(+):ミケラン、カルビスケン
β1非選択性、ISA(-):インデラル、ナディック、ハイパジール
αβ非選択性遮断薬ISA(-):アーチスト、ローガン、アロチノロール、トランデート
気管支喘息に禁忌じゃないβ遮断薬
β1選択性、ISA(+):アセタノール、セレクトール
β1選択性、ISA(-):セロケン、ロプレソール、テノーミン、メインテート、ケルロング
受容体非選択性の薬はβ2刺激作用も併せ持つため、禁忌ですが、β1受容体に選択性の高い薬は、気管支喘息やCOPDにも使えるわけです。
とくにメインテートはβ1受容体選択性は高いようです。
しかし、慎重投与ではあるので注意は必要。
「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者」という記載と、「気管支喘息,気管支痙れん,慢性閉塞性肺疾患のおそれのある患者」という記載で分かれており、喘息には禁忌だけどCOPDには禁忌じゃないみたいなものもある。
αβ遮断薬に分類されるカルベジロール(アーチスト)は、交感神経のβ1、β2受容体、α1受容体に作用し、心臓にあるβ1受容体だけでなく、気管支平滑筋のβ2受容体も遮断する。
アーチストのインタビューフォームによると、β1、β2受容体遮断の効力比は約7:1であり、β2受容体遮断作用は比較的弱いものの、気管支を収縮させ、喘息症状の誘発や悪化を引き起こす恐れがあることから、気管支喘息の患者への投与は、「禁忌」とされている。
これに対し、ビソプロロールやアテノロール(テノーミン)、ベタキソロール塩酸塩(ケルロング)などは、β1受容体への選択性が高いβ1選択性β遮断薬であり、気管支喘息、気管支痙攣の恐れがある患者には、禁忌ではなく「慎重投与」となっている。
メインテートのインタビューフォームには、慎重投与の理由として、通常用量ではほとんど問題とならないが、気管支平滑筋にもわずかながらβ1受容体があるためと記されている。
日本循環器学会・日本心不全学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)では、β遮断薬の有用性が高いと判断された気管支喘息合併の心不全患者に対して、β1選択性が高いβ遮断薬を積極的に中止すべき根拠はないとした上で、留意点として、β1選択性が高いβ遮断薬は忍容性が良好であるものの、完全には安全ではないので、個々の患者でリスクを評価した上で最小用量から慎重に投与するとしている。
β受容体のサブタイプ
β受容体にはβ1、β2、β3の3つのサブタイプがある。
それぞれ主に心臓、気道、脂肪細胞に存在し、β1は心機能促進性、β2は平滑筋弛緩性、β3は脂肪分解促進性に作用する。
LABAはβ2受容体に結合し、アデニル酸シクラーゼを活性化してcAMPを増加させる。
その結果、プロテインキナーゼAを活性化し、気管平滑筋を弛緩させる。
一方、高血圧や狭心症などに用いられるβ遮断薬は、β1受容体を遮断し、カテコールアミンの作用を競合的に抑制することで心拍出量やレニン産生・分泌などを低下させ、降圧作用や心負荷軽減作用を示す。
β遮断薬は、β1受容体への選択性やα遮断作用の有無、内因性交感神経刺激作用(ISA)などによって分類される。
β遮断薬でCOPDの予後改善?
従来、COPDに対するβ遮断薬の使用は回避される傾向にあった。
β2受容体の遮断により、気道収縮を悪化させる恐れがあると考えられていたためである。
しかし、現在までに、それを否定する内容の研究結果が数多く報告されている。
1998年に報告された観察研究では、急性心筋梗塞を発症したCOPD患者4万2000人において、β遮断薬を使用した群は使用しなかった群に比べて、死亡率が40%低いことが判明した。
また、高血圧を合併するCOPD患者を対象とした別の研究では、β遮断薬投与群はカルシウム拮抗薬投与群に比べて、有意に死亡率が低かったことも報告されている。
ガイドラインでも、COPDを有する高血圧患者へのβ遮断薬の使用に関して、「投与は可能であり、選択的β1遮断薬を使用する」と記載されている。
β1遮断薬がCOPDに有効な理由として、COPDが心血管疾患のリスク因子であることや、β1遮断薬がβ2受容体のアップレギュレーションを介してβ2刺激薬の効果を高める可能性が指摘されている。
参考書籍:日経DI2014.5
気管支喘息
気管支喘息は、個体的(遺伝的)因子に加えて環境因子によって引き起こされる気道の慢性炎症とそれに伴う可逆性の気道狭窄が病態の中心となる疾患である。
気道過敏性が亢進しており、種々の誘因によって気道狭窄が起こり、喘鳴や呼吸困難、咳嗽などの症状をくり返す。
気道炎症には好酸球をはじめTリンパ球、マスト細胞などの炎症細胞のほか、気道上皮細胞などの気道構成細胞や種々の液性因子が関与している。
したがって、喘息の治療は、気管支拡張薬だけでなく抗炎症薬が必須となる。
喘息の有病率は、近年増加しており、成人の5%程度と推定される。
有病率増加の原因として、住宅環境の変化からダニやカビが増加、猫などのペットの室内飼育の増加といったアレルゲンの増加のほか、大気汚染の増加、食品添加物やアレルゲンとなる食品の摂取増加が考えられている。
乳幼児期の細菌感染やウイルス感染、結核感染などが減少したためTh2タイプのアレルギー疾患の発症が増加したという説(衛生仮説)もある。
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