2025年10月24日更新.2,662記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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セレコックスは胃にやさしい?

COX2阻害薬は胃にやさしい

セレコックス(セレコキシブ)は選択的COX2阻害のため消化管障害が少ないと言われており、処方頻度も多いのですが、実際はどうなのでしょうか?

NSAIDsの作用機序はシクロオキシゲナーゼ阻害によるプロスタグランジン産生抑制です。

シクロオキシゲナーゼにはCOX-1とCOX-2がありますが、COX-1は胃の粘膜を守る働きがあり、COX-2には炎症を促す働きがあります。
痛み止めとしての働きを期待するだけなら、COX-2だけに働いたほうが胃腸障害が少ないので良い、ということで開発されたのがCOX-2選択的阻害薬です。

COX-2に選択性の高い薬には、オステラック、ハイペン、モービック、セレコックス等があります。意外とボルタレンも選択性が高いらしいです。

COX-2発見後に開発された薬はコキシブ系と呼ばれますが、発見以前に開発され、後にCOX-2選択性が判明したエトドラクやメロキシカムなどはコキシブ系に含まれません。

COX-1COX-2
発現部位全身組織(常時発現)炎症部位(炎症反応により誘導)
作用生体恒常性の維持(胃酸分泌↓、止血、腎血流維持など)→生理的なPG合成痛みの増強→病的なPG合成
COX阻害痔胃腸粘膜・腎・肝の障害、血小板凝集抑制などが生じる抗炎症・鎮痛効果が現れる

胃腸障害は他のNSAIDsと変わらない

COX-2選択的阻害薬は、一般的に胃腸障害は少ないと言われていますが、様々な研究で従来のNSAIDsと差が無いことが明らかにされています。

添付文書の臨床成績でもセレコキシブと従来のNSAIDsとで消化管系副作用の発現頻度に差が無かったことが記されています。

セレコックスは持続性

セレコックスの用法は1日2回であり、ロキソニンやカロナールと比べて持続性の鎮痛薬である。

医薬品名半減期用法
ロキソニン約1時間15分1日3回
ボルタレン1.2時間1日3回
カロナール2.36時間投与間隔4〜6時間以上
セレコックス約5〜9時間1日2回
ハイペン6時間1日2回
トラマール約6.5時間1日4回

患者から「どのくらいの時間効きますか?」という質問も多い。
血中濃度=効果持続時間ではないが、一つの指標として伝えることはできる。

シクロオキシゲナーゼ(COX)の種類

COXには、主にCOX-1とCOX-2が存在し(COX-3は主に中枢神経系に存在するCOX-1のスプライシングバリアントであるが、不明な点が多い)、COX-1は全身の組織に存在し、常時PGsを合成しており、胃粘膜細胞の防御、止血等を行っています。

一方COX-2は、脳や腎臓以外の組織では通常は発現されておらず、炎症が発生するとその部分で発現される誘導型の酵素です。

また、COX-2はがん細胞においても高度に発現されている例が多くあることから、わが国で唯一発売されているCOX-2選択的阻害薬であるセレコキシブは、米国では抗がん剤としても使用されています。

インドメタシン等の非選択的なNSAIDsはCOX-1も阻害するために抗炎症以外の作用も示します。
特に消化管出血を引き起こすことから、胃腸薬が併用されます。

coxには、cox-1~COX-3の三種類がありますが、cox-1は定常的に産生されていて、胃粘膜保謹の役割はこの酵素が担っています。
またCOX-2は炎症部分で産生されていることから、実はこの活性化を阻害することが抗炎症作用の本質なのだと考えられています。
cox-1には作用せずCOX-2の活性化のみを阻害するような薬は、胃腸障害などの副作用がない「夢の解熱鎮痛薬」になることが期待されています。

シクロオキシゲナーゼ(COX)には三種類のアイソザイムが存在します。
そして、NSAIDsはcoxを阻害し、プロスタグランジン(PG)やトロンポキサンA2(TXA2)の産生を抑制することで、解熱や鎮痛、抗炎症などの作用を発揮します。

cox-1が全身の細胞に広く分布して恒常的に発現していることから「構成型シクロオキシゲナーゼ」と呼ばれるのに対して、COX-2は「誘導型シクロオキシゲナーゼ」と呼ばれ、一部の臓器を除いて通常は発現が低く、炎症時に産生されてPGE2やPGI2などの産生を冗進させることで、痛みの増強だけでなく血管拡張や血管透過性の充進といった炎症反応を進行させる作用をもつものです。
このことから、この酵素の活性を阻害することが解熱鎮痛や抗炎症作用の本質をなすと考えられています。

cox-1はPGE1を産生し、胃粘膜の血流を増加させることで粘膜保護に働きます。
汎用されるNSAIDsが胃炎や胃潰傷などの副作用をもつのはcox-1を阻害するためであり、COX-2のみに選択的な阻害薬は胃障害のない解熱鎮痛消炎薬になるものと期待されていました。
そして、ロコキシブやセレコキシブといった「コキシブ系薬剤」が開発され、従来のNSAIDsに比べて胃腸障害を減少させることが確認されたことから、米国での発売(1999年)を機に、現在までに世界100ヵ国以上で承認されるようになりました。

COX-2阻害薬の特徴

COX-1は胃粘膜、血小板などを含め多くの細胞に常に発現しているが、COX-2は炎症関連細胞などへの種々の刺激により発現が増す。
そのため、COX-2阻害薬は胃・十二指腸潰瘍の発症率を低下させ、消化管出血、穿孔及び閉塞などの発症率もある程度低下させる。
しかし、消化管潰瘍の危険因子を有する例では、プロスタグランジン(PG)製剤やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用が必要である。

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