2024年3月18日更新.2,750記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ゴーストピル一覧

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ゴーストピル

薬の中には薬が溶け出した後の抜け殻が排泄されるものがあります。

この抜け殻のことをゴーストタブレットといいます。

実際にモノを見たことが無いので、卵の殻のようなものが便中に混ざっているくらいだろうと思っていましたが、ほとんど錠剤の形をしたまま排泄されるものもあるらしい。

便中に錠剤を見つけたら、これは効いてないのではないか?と疑うのも理解できます。

糞便中に製剤の残渣が見られる可能性のある薬

一般名商品名添付文書の記載
バルプロ酸ナトリウムセレニカR錠、デパケンR錠、バルデケンR錠、バルプロ酸ナトリウムSR錠、エピレナート徐放顆粒、セレニカR顆粒、バルプラム徐放顆粒本剤の白色の残渣が糞便中に排泄される。
塩酸メチルフェニデートコンサータ錠本剤の外皮は内部の不溶性の成分と一緒に糞便中に排泄されるが、正常なことであり心配する必要はないことを説明すること。
ニフェジピンニフェジピンCR錠「サワイ」「NP」「日医工」内核のフィルムコーティング剤のエチルセルロースは水に不溶のため、糞便中にまれに錠剤の形状を残したまま排出されることがある。
テオフィリンスロービッドカプセル・顆粒、セキロイド錠、テオスローL錠、テオフルマートL錠、テオロング錠・顆粒、テルダンL錠、ユニコン錠、ユニフィルLA錠本剤由来のエチルセルロースの透過性膜は、テオフィリン溶出後、未消化のまま排泄されるため、白色粒子が糞便中に見られることがある。
メサラジンペンタサ錠、アサコール錠本剤のコーティング剤のエチルセルロースは水に不溶のため、糞便中に白いものがみられることがある。
硫酸鉄フェロ・グラデュメット鉄放出後のプラスチック格子は,そのまま糞便中に排泄される.
塩化カリウムスローケー、エフズレンK錠、ケーサプライ錠本剤のゴーストタブレット(有効成分放出後の殻錠)が糞中に排泄されることがある。
塩酸オキシコドン水和物オキシコンチン錠本剤のマトリックス基剤(抜け殻)が人工肛門あるいは糞便中に排泄される場合があること,その場合本剤の成分は既に吸収されているため,臨床的に問題はないことを患者に説明すること。
パリペリドンインヴェガ錠本剤の外皮は内部の不溶性の成分と一緒に糞便中に排泄されるが、正常なことであり心配する必要はないことを説明すること。
フェキソフェナジン塩酸塩/塩酸プソイドエフェドリンディレグラ配合錠糞便中に、有効成分放出後の殻錠が排泄されることがある。

中には、ジェネリックでのみゴーストタブレットが見られる薬もあるので、あらぬ誤解を招きかねません。
決して不良品であるということではないので、ご注意を。

錠剤やカプセルの形状を残した物体が糞便中に排出される現象は、しばしば患者から報告される。
このような物体は、「ゴーストピル」または「ゴーストタブレット」と呼ばれている。
ゴーストピルは徐放化製剤に見られることが多い。
残渣が錠剤の形状をしている場合、有効性に不安を覚える患者は多いが、強い下痢を呈していない限り、糞便中に排出された残渣中に主薬は残っていないと考えられる。
ゴーストピルが排出される要因には、不明な点が多い。
ただし、下痢などで腸管通過時間が短い場合や、水無しで服用した場合などには、ゴーストピルが観察される可能性は高くなると考えられる。
特に、後発品によるゴーストピルの排出を経験すると、患者は後発品全般に対して不信感を抱く恐れもある。
ゴーストピルが排出される可能性がある薬剤については、交付時に患者に説明しておくとともに、多めの水で服用するよう指導した方がよい。

デパケンのゴーストピル

デパケンR錠では、糞便中に白い残渣が出現することが知られている。
これは、この錠剤が徐放構造を持っているためであり、残渣は主薬が消化管内で放出された後に出現する抜け殻にすぎない。
したがって、残渣が認められた場合でも、薬効には影響がないと考えられている。

デパケンR錠は、吸湿を防ぐために表面がシュガーコーティングされているが、その内側は、マトリックス構造を核とし、その外側を徐放性被膜で覆った二重構造になっている。

マトリックス構造部分は、水に不溶性で多孔質のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとバルプロ酸ナトリウムを混合打錠して成形されている。
いわば、スポンジの中に主剤であるバルプロ酸ナトリウムを吸収させた構造である。

徐放性皮膜は不溶性のエチルセルロースが主体であり、マトリックス構造中に含まれたバルプロ酸ナトリウムが、皮膜の微細な隙間から徐々に放出されることで、主剤の溶出が制御されている。

このマトリックス構造部分と皮膜は不溶性である。
そのため、主薬が放出されてしまった後も、これらは消化管内で崩壊せず、糞便中にそのまま排泄される。
これが、糞便中に認められる白色残渣の正体である。

実際、糞便中に錠剤の形状を保持したまま残渣が排泄された症例(13症例)について、回収した残渣の主薬残存率を測定した研究では、約10%残存していた1例を除き、残存率はすべて1~5%だったと報告されている。

ただし、重篤な下痢症状を伴っている患者では、主薬が十分吸収されないうちに排泄され、血中バルプロ酸濃度が十分に上昇していない可能性がある。
デパケンR錠は、主薬が100%溶出するのに9~10時間程度かかるように設計されているため、服用後10時間程度は消化管内に滞留させなければならない。
重篤な下痢がある場合には、一時的に普通錠を使用するか、徐放錠をかみ砕いて服用するなどの対策を講じる必要がある。

オキシコンチン錠のゴーストピル

オキシコンチン錠は、親水性のヒドロキシアルキルセルロースと主薬を練合して顆粒状にし、高級脂肪アルコールでコーティングして打錠したものである。
消化管内で錠剤に水分が浸透すると、ヒドロキシアルキルセルロースが水和化して主薬が溶解し、高級脂肪アルコールのマトリックスの空隙から徐々に主薬が放出され、マトリックスが残る。

アサコールのゴーストピル

アサコールの添付文書に、「便中に錠剤がみられる場合がある。」とある。

いわゆるゴーストピルというやつです。

ペンタサのゴーストピルについても、添付文書に「本剤のコーティング剤のエチルセルロースは水に不溶のため、糞便中に白いものがみられることがある。」
と書かれている。

成分はきちんと吸収されており、抜け殻が出てきているだけなので大丈夫。
と、言い切れるのか。

アサコールは、pH依存性徐放剤であり、pH7以上になる大腸に到達してからメサラジンを放出します。
インタビューフォームには、「pH6.4で溶出せず、pH7.2で溶出する。」と書かれている。

胃内のpHは、食前の空腹時にはpH1~1.5、食事をとってもpHは4~5なので、アサコールが胃内で溶けだすことはない。
PPIを飲んだらpHは5~6くらいまで上がりますが、それでもアサコールが溶け出すことはない。
アサコールと制酸剤は併用注意にも挙げられていない。

小腸のpHは弱酸性のpH5~6.5くらい。ここでもまだアサコールは溶け出さない。

大腸のpHは、一般的にアルカリ性でpH7以上となっている。ところが、潰瘍性大腸炎の患者の中には通常よりも低いpHとなっている患者もいるようだ。

潰瘍性大腸炎症例91例について直腸粘膜pH値を測定し, 粘膜の肉眼的所見, 生検組織像と対比し検討した. 活動期の直腸粘膜pH値は7.05±0.14 (mean±1SD) で対照群の7.31±0.17に比して有意に低値を示した (p<0.01). 直腸粘膜生検の組織学的炎症の程度と直腸粘膜pH値には有意な負の相関を認めた. 潰瘍性大腸炎では局所の prostaglandin の増加によるH+分泌の亢進や, 上皮細胞内の嫌気性代謝の亢進にもとづく乳酸の増加などにより, 粘膜のpH値が低下すると考えられる. 直腸粘膜pH値は潰瘍性大腸炎の活動性の客観的な指標のひとつと考えられた.

潰瘍性大腸炎の直腸粘膜pH値

アサコールの効果が不十分と感じている患者がいたら、もしかしたら大腸内pHが低くて溶け出す量が少ないのかもしれない。

インタビューフォームによると、アサコールの生物学的利用能は28%です。

なお、アサコール錠はpH7以上で溶解するメタクリル酸コポリマーSでコーティングされており、大腸選択的に放出されて大腸粘膜に直接作用することによって炎症を抑える薬剤であるため、体内への吸収は約28%にとどまる。

何はともあれ、ゴーストピルが出てくると不安感が募るので、全部が吸収されているわけではなく、28%程度の吸収で効果があることを伝えておこう。

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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2 件のコメント

  • まろ のコメント
         

    子供のころから胃腸が弱くほぼ毎日軟便もしくは水様便の体質です。
    加えてアレルギーもありディレグラ錠を昨年末から服用しています。
    数か月前たまたまトイレの中にほぼそのままの形状の薬が浮いているのを
    発見。
    その後気になって確認していたところほぼ毎日見つかりました。
    前日の夕食の食材(もやしやニラなど)が朝の排便でそのまま
    出てくることも良くあるので、薬も吸収されていないのではと
    不安でしたが安心しました。
    薬とは縁が切れない生活ですが他の薬を見たことは無いのでたぶん
    ゴーストタブレットなのだと思います。
    なかなか他の人に聞きにくい事なので大変参考になりました。
    ありがとうございました。

  • 匿名 のコメント
         

    ディレグラ長期服用??
    アレグラに代えられては?

コメント

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yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

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名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
SNS:X(旧ツイッター)
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