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顔にステロイドを塗っちゃダメ?
公開. 投稿者:アトピー性皮膚炎/ステロイド外用薬.この記事は約3分17秒で読めます.
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顔面にはステロイド外用剤はなるべく使用しない。
用いる場合、可能な限り弱いものを短期間にとどめる。
強いステロイドを顔に塗ってはいけない、と言われます。
顔の皮膚は薄いため、副作用が出やすいからです。
一時的には血管が収縮して、肌が白く見えるので、美白効果を謳った化粧品にこっそり混ぜてある、なんてこともありました。
しかし、長期的に使っていると毛細血管が増えて赤ら顔になり、皮膚は薄くなって傷つきやすくなり、感染しやすくなるためニキビができたりと、悪いことばかりです。
デルモベートやジフラールなどは最強ランクのステロイドなので、顔に処方されることはまずありません。
頭部、顔部、腋窩、外陰部などでは毛孔を介しての経付属器吸収が多くなり、副作用も発現しやすくなるのでマイルド以下のステロイド外用剤が選択されます。
ステロイドの使用部位による吸収の違い
部位別には、皮膚が薄くて皮脂腺が多いところは経皮吸収率が高く、副作用が出やすいので弱めのものを選択します。
経皮吸収率が高い部位は、陰嚢、顔、首、頭皮などです。
逆に掌や足の裏、足首などは皮膚が厚く吸収の悪い部分です。
湿疹を繰り返し皮膚が厚くなっている患部にも強めのステロイドを勧めます。
経皮吸収性は外用剤を適用する部位によって異なります。
例えば、成人にヒドロコルチゾン(基剤:ワセリン)を適用した後の尿中排泄量を検討した試験では、前腕と比較して頭部、前額、下顎、腋窩、陰嚢の経皮吸収性が高く、手掌、足関節部、足底は低い傾向でした。前腕屈側の吸収量を1とした場合、前額ではその6倍、陰嚢では42倍と報告されています。
・ヒトにおけるヒドロコルチゾンの部位別経皮吸収比
①頭皮 3.5
②頬 13.0
③前頸 6.0
④腋窩 3.6
⑤背面 1.7
⑥前腕(外側) 1.1
⑦前腕(内側) 1.0(基準)
⑧手掌 0.83
⑨陰嚢 42.0
⑩足首 0.42
⑪足底 0.14
このような部位による経皮吸収性の違いは、角質層(角層)の層数(厚さ)や毛孔・汗孔の数・大きさなどが異なることに起因しています。特に、角質層の層数が少なくなるほど、皮膚バリア機能は低くなることから、まぶたの上(眼瞼)や口の周りなどのような部位では経皮吸収性が向上します。
足の裏はほかの部位と比べて薬物の吸収率が低いのですが、水分の吸収率は腹や背中と比べて10倍程度高いことが知られています。抗真菌剤の皮膚外用剤に液剤が多いのはこのためです。
皮膚外用剤の吸収は製剤の特性だけでなく、生体側の因子によっても影響を受けることがあります。
経皮吸収ではまず皮膚を透過することが重要であり、透過性は皮膚のバリアー能に大きく左右されます。皮膚のバリアー能は角層の厚さによって異なり、掌や足の裏では角層が厚いためバリアー能が高く、逆に顔や首では薄いためバリアー能が低くなっています。そのため、バリアー能が低く、外からのアレルゲンにより発症するアトピーなどが多発するのは皮膚が薄い部位です。
経皮吸収も角層の厚さにより異なるため、体の部位によって差があります。
顔にはミディアムクラス以下
顔面はその高い薬剤吸収率を考慮して、原則としてミディアムクラス以下のステロイド外用剤を使用します。
その場合でも1日2回の外用は1週間程度にとどめ、間欠投与に移行し、休薬期間を設けながら使用します。
近年はしばしばみられる成人患者の顔面の紅斑性病変の多くは掻破などを含むステロイド外用剤以外の要因に起因するものですが、局所の副作用の発生には注意が必要な部位であり、処方に当たっては十分な診察を行う必要があります。
なお、顔面はタクロリムス外用剤の高い適応がある部位であり、そのガイドラインに従って使用することも積極的に考慮しなくてはなりません。
ステロイド外用薬の顔への使用は1週間まで
ガイドラインでは、顔面での使用に関しては「高い薬剤吸収率を考慮して、原則としてミディアムクラス以下のステロイド外用剤を使用する。その場合でも1日2回の外用は1週間程度にとどめ、間欠的に移行し、休薬期間を設けながら使用する」と述べ、外用量は規定しないまでも外用期間に制限を定めています。
この制限はかなり厳しいものですが、タクロリムス軟膏の登場によってこの悩みも解消され、ガイドラインでもその使用を推奨しています。
あえて目安を挙げるとすると、ある報告では「13歳以上の患者で顔面への使用量が6ヶ月で60g未満の群は60g以上の群に比べ、頬部の血管拡張が有意に少なかった」と報告されています。
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