2024年12月2日更新.2,476記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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顔にステロイドを塗っちゃダメ?

顔にステロイドを塗っちゃダメ?

強いステロイドを顔に塗ってはいけない、と言われます。
顔の皮膚は薄いため、副作用が出やすいからです。

一時的には血管が収縮して、肌が白く見えるので、美白効果を謳った化粧品にこっそり混ぜてある、なんてこともありました。
しかし、長期的に使っていると毛細血管が増えて赤ら顔になり、皮膚は薄くなって傷つきやすくなり、感染しやすくなるためニキビができたりと、悪いことばかりです。

デルモベートやジフラールなどは最強ランクのステロイドなので、顔に処方されることはまずありません。
頭部、顔部、腋窩、外陰部などでは毛孔を介しての経付属器吸収が多くなり、副作用も発現しやすくなるのでマイルド以下のステロイド外用剤が選択されます。

ステロイドの使用部位による吸収の違い

部位別には、皮膚が薄くて皮脂腺が多いところは経皮吸収率が高く、副作用が出やすいので弱めのものを選択します。

経皮吸収率が高い部位は、陰嚢、顔、首、頭皮などです。
逆に掌や足の裏、足首などは皮膚が厚く吸収の悪い部分です。

湿疹を繰り返し皮膚が厚くなっている患部にも強めのステロイドを勧めます。

経皮吸収性は外用剤を適用する部位によって異なります。
例えば、成人にヒドロコルチゾン(基剤:ワセリン)を適用した後の尿中排泄量を検討した試験では、前腕と比較して頭部、前額、下顎、腋窩、陰嚢の経皮吸収性が高く、手掌、足関節部、足底は低い傾向でした。前腕屈側の吸収量を1とした場合、前額ではその6倍、陰嚢では42倍と報告されています。

・ヒトにおけるヒドロコルチゾンの部位別経皮吸収比
①頭皮 3.5
②頬 13.0
③前頸 6.0
④腋窩 3.6
⑤背面 1.7
⑥前腕(外側) 1.1
⑦前腕(内側) 1.0(基準)
⑧手掌 0.83
⑨陰嚢 42.0
⑩足首 0.42
⑪足底 0.14

このような部位による経皮吸収性の違いは、角質層(角層)の層数(厚さ)や毛孔・汗孔の数・大きさなどが異なることに起因しています。特に、角質層の層数が少なくなるほど、皮膚バリア機能は低くなることから、まぶたの上(眼瞼)や口の周りなどのような部位では経皮吸収性が向上します。

足の裏はほかの部位と比べて薬物の吸収率が低いのですが、水分の吸収率は腹や背中と比べて10倍程度高いことが知られています。抗真菌剤の皮膚外用剤に液剤が多いのはこのためです。

皮膚外用剤の吸収は製剤の特性だけでなく、生体側の因子によっても影響を受けることがあります。

経皮吸収ではまず皮膚を透過することが重要であり、透過性は皮膚のバリアー能に大きく左右されます。皮膚のバリアー能は角層の厚さによって異なり、掌や足の裏では角層が厚いためバリアー能が高く、逆に顔や首では薄いためバリアー能が低くなっています。そのため、バリアー能が低く、外からのアレルゲンにより発症するアトピーなどが多発するのは皮膚が薄い部位です。

経皮吸収も角層の厚さにより異なるため、体の部位によって差があります。

顔にはミディアムクラス以下

ガイドラインでは、顔面での使用に関しては「高い薬剤吸収率を考慮して、原則としてミディアムクラス以下のステロイド外用剤を使用する。その場合でも1日2回の外用は1週間程度にとどめ、間欠的に移行し、休薬期間を設けながら使用する」と述べ、外用量は規定しないまでも外用期間に制限を定めています。

この制限はかなり厳しいものですが、タクロリムス軟膏の登場によってこの悩みも解消され、ガイドラインでもその使用を推奨しています。

あえて目安を挙げるとすると、ある報告では「13歳以上の患者で顔面への使用量が6ヶ月で60g未満の群は60g以上の群に比べ、頬部の血管拡張が有意に少なかった」と報告されています。

ステロイドを目の周りに塗っちゃダメ?

ステロイドの全身投与やステロイド点眼剤による白内障や緑内障の誘発はよく知られている。

白内障は局所投与よりも全身投与によって、逆に緑内障は全身投与よりも局所投与によって高頻度に誘発される。

アトピー性皮膚炎では白内障がしばしば合併し、ステロイド外用薬の副作用であると容易に診断されることがある。

しかしアトピー性皮膚炎のおよそ10%に若年性の白内障が併発することが明らかにされたのは1936年のことであり、ステロイド外用剤がはじめて臨床応用されたのはその14年後の1952年であることを考慮しても、アトピー白内障は確固とした独立疾患として対処せねばならない。

一方、眼瞼へステロイドを外用している場合には緑内障の発生には十分に留意する必要がある。

ステロイド外用薬で白内障?

ステロイドを目の周りに塗るのはいけない、とよく言われます。
薬情にも目の中に塗ってはいけませんとか、目の周りの使用に対する注意書きが書かれています。

しかし、顔や目の周りに湿疹ができることもあり、使わざるを得ないケースもあります。
医師が目の周りに使っていい、ということであれば、薬剤師もそれに従いますが、「基本的には目の周りは避けて」という指導になるでしょう。

ステロイド白内障の原因はステロイドではなく、かゆみで目の周りをこすったり、叩いたりすること、でアトピー性白内障とも言われています。
だとしたら、ステロイドでかゆみを抑えたほうが良いという風にも言えます。

小児にステロイドの目薬が結膜炎で処方されることもあるので、闇雲にステロイドだから、と避ける必要は無いかと思いますが、ステロイド忌避の患者さんには要注意です。

経口、吸入ステロイドと白内障

副腎皮質ステロイドは、水晶体のたんぱく質を変性させ、白内障を来す。
水晶体の混濁は不可逆的で、進行すると視力が低下する。
局所投与や吸入でも起こる。
目安として、プレドニゾロンの換算量で10~15mg/日(成人)、1~3mg/kg(小児)、投与6か月後に発生頻度が増加するとされている。

吸入ステロイド薬では、成人でベクロメタゾンの総使用量が2gを超えると有意に白内障の発症が増加するという報告もある。
小児では、白内障の発症は少ないが、過去にステロイドの経口薬を服用している場合は注意が必要であるとされている。
また、眼軟膏などの局所投与との併用では、もっと早期に発症することもある。

白内障の原因はステロイドではない?

ステロイド外用剤が誕生した1950年代以前からアトピー性皮膚炎の患者の10%前後に白内障が合併することが知られていましたが、ステロイド外用剤発売以後もその割合は変わっていません。

また網膜剥離についても、アトピー性皮膚炎の患者さんを対象とした研究結果からステロイド外用剤が原因ではないと考えられています。

現在では、アトピー性皮膚炎の患者さんで白内障や網膜剥離が生じる原因は、かゆみを紛らわすために目の周囲をこすったりたたいたりすることによると考えられています。

ステロイドで緑内障?

ステロイドの服用により眼圧上昇の副作用がある。
塗り薬も同様に、吸収されれば眼圧上昇、緑内障のリスクがある。

副腎皮質ステロイドの眼瞼への塗布により眼圧上昇、緑内障が起こることがある。
眼圧上昇作用は用量依存性で、投与量や投与期間に相関する。抗炎症作用が強いベタメタゾンやデキサメタゾン、プレドニゾロンで起こりやすく、トリアムシノロンやフルオロメトロンでは起こりにくい。投与中止により眼圧は正常化するが、眼圧上昇が持続すると不可逆性の視細胞や視神経の変化が起こる。自覚症状に乏しく眼圧上昇があっても異常を訴えないことが多いので、眼瞼を避けるように塗布し、定期的な眼圧管理を行う。

塗り薬を使ったら手を洗う?

ステロイドによる目の副作用については、ステロイド点眼液や眼軟膏、あるいは目の周りにステロイド外用薬を塗るような場合だけでなく、使用部位に関わらず注意する必要がある。
それは、塗り薬を使うときにほとんどの患者は「手で塗る」からである。

「塗り薬を使った後は手を洗ってください。」
例えば子供にステロイドの塗り薬を使った後、そのままの手で生活して、目がかゆいからと目を掻いたとすると、眼疾患の副作用が危惧される。
なんてことは実際にはあまり考えられないのかも知れませんが、念のため手は洗った方が良い。

手に塗ってる人はどうすればいいかと聞かれたら、「顔には極力触れないようにしてください」と言うしかない。

顔に塗ってはいけない塗り薬

塗り薬の使用部位の指示について、ストロンゲストのステロイドはあまり顔に塗らないほうがいいだろう、とは思うが、それ以外あまり気にしたことは無い。

添付文書上、顔に塗ってはいけないと明記されている塗り薬には以下の物がある。

医薬品名添付文書の記載
ディビゲル1mg胸部、顔、外陰部及び粘膜には塗布しないこと。
ドボネックス軟膏50μg/g顔面には使用しないこと。
ドボベットゲル顔面の皮疹及び粘膜には使用しないこと。
ドボベットフォーム顔面の皮疹及び粘膜には使用しないこと。
ドボベット軟膏顔面の皮疹及び粘膜には使用しないこと。
ル・エストロジェル0.06%顔面、乳房、外陰部及び粘膜には塗布しないこと。

最強ランクのステロイド、デルモベート軟膏の添付文書にも、「皮膚萎縮、ステロイド潮紅などの局所的副作用が発現しやすいので、特に顔面、頸、陰部、間擦部位の皮疹への使用には、適応症、症状の程度を十分考慮すること。」と注意書きがあるだけで、顔への使用が禁止されているわけではない。

頭部に使うデルモベートスカルプローションでも同様の記載があるだけで、顔への使用を禁止しているわけではない(保険請求上は問題があるかもしれないが)。

ドボネックスやエストラジオールの塗り薬が顔に禁止となっているのは、顔は皮膚が薄く経皮吸収が良いので、効きすぎてしまう恐れがあるからである。しかし、それを言ったらどの塗り薬も同じである。
他のビタミンD3外用薬(ボンアルファ、オキサロール)のほうが安全とも言えないだろうが、ボンアルファやオキサロールは顔に禁止とはなっていない。

女性ホルモンの塗り薬は美肌効果を期待する患者もおり、顔に塗布することも考えられるため、添付文書上禁止されていることを強く伝える必要がある。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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