2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ステロイドは毎日塗った方が良い?

かゆいときだけ塗る?

薬剤師

ステロイドの塗り薬は痒い時だけ塗ればいいんでしょ?

ステロイド外用薬が処方されている患者からよく聞かれる質問に「毎日塗り続けた方が良いんですか?」「痒い時だけ使えば良いんですか?」という質問がある。

この質問は正直、薬剤師には答えられないと思っている。

なぜなら、答えは「医師による」からである。病態によるとも言えますが、対応は医師によって異なることが多い。

あるいは「患者による」ともいえる。例えば、本人ではなく家族が塗る場合、子どものかゆみを治したい熱心な親に対しては「毎日塗ってあげて」となるが、高齢者の介護で面倒くさそうな家族に対しては「症状を訴えているときだけでよい」という対応をするかも知れない。
本人が塗る場合であれば、「できるだけ塗りたい」という患者なのか、「できるだけ塗りたくない」という患者なのかで対応が変わる。「痒くてしょうがないから塗りたい」という患者、「副作用が怖いから塗りたくない」という患者。

発症初期だから毎日使ってもらった方が良いだろう、痒がっているから毎日使ってもらった方が良いだろう、改善しているから毎日使わなくても良いだろう、そのような薬剤師の考えで「毎日塗ってください」「かゆい時だけ塗ってください」と指導すると、「医師と言っていることが違う」という状況が起きかねない。

なので、処方箋に記載されている用法を確認し「1日1回と書かれているので、1日1回使ってください」といった回答に終始し、痒い時だけ使う形でもいいのかどうかに関しては、「医師にご相談ください」としか言いようが無いのである。

プロアクティブ療法

最近では病変のない皮膚にも弱いランクのステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を塗布して再燃を予防する「プロアクティブ療法」の有用性が注目されている。
プロアクティブって聞くと、ニキビ予防のあの商品を思い浮かべますが、アクティブは動作中とか活動中といった意で、その前(プロ)がプロ・アクティブ、後(リ)がリ・アクティブ。

アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法は、湿疹病変が良くなっても、すぐにステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を止めずに、週に1、2回、それらの外用薬を再燃しやすい部位につける方法です。

保湿だけでも十分な気もしますが、見た目がキレイでも、炎症は続いているという考え方です。

近年の国内外のガイドラインでは、アトピー性皮膚炎の寛解導入後、保湿薬とともにステロイド外用薬などを一定の間隔で塗布するプロアクティブ療法が推奨されている。
一般にアトピー性皮膚炎治療では、急性期に抗炎症薬で炎症を抑え、寛解導入後は保湿薬の塗布を継続することが多いが、炎症が残存し、保湿薬だけでは寛解を維持し得ない場合がある。
そこで再び抗炎症薬を塗布するリアクティブ療法を実施することになるが、症状の悪化から再塗布までに1週間前後かかると考えられている。

一方、プロアクティブ療法は目に見えない炎症を抑えることで再燃を予防する。
アトピー性皮膚炎は、炎症が改善して一見正常に見えても組織学的には炎症細胞が残存している状態といえる。この潜在的な炎症がある間は、プロアクティブ療法を行うことで皮疹の再燃を予防できると考えられる。
システマティックレビューの結果、同療法の炎症再燃リスクは保湿薬のみの場合の0.4倍程度であり、また保湿薬とともに塗布することでステロイド外用薬の副作用を抑制でき、安全性の面からも理に適った治療法であるといえる。
プロアクティブ療法には食物アレルギーを改善する可能性もあり、アトピー性皮膚炎の寛解維持に有用な療法と考えられる。

ステロイドは良くなったらすぐに止める?

ステロイド外用薬の中止時期は、炎症症状の鎮静後ということになりますが、この認識において、患者さんと医師との間にズレがあります。

一般に患者さんはステロイドに対する不安があるため、赤みやかゆみが取れるとすぐに外用を止めてしまい、中止時期が早すぎることが多いようです。

医師や薬剤師から「良くなったらやめましょう」と言われることも一因のようですが、手のひらで触れてしっとり感を感じるまでは、赤みがなくても炎症があることを説明し、寛解導入されるまで外用を続けるよう指導します。

ステロイド外用薬の副作用を避ける使い方のポイントは、まず適切な強さのステロイド外用薬を適量塗ることである。
炎症が治まれば連日塗布の必要がなくなるので隔日塗布とし、その間は保湿剤を使用する。

症状再燃がなければ、徐々に塗布間隔を広げる。
ステロイド外用薬は2〜3日で分解されるため、2〜3日おきの使用であれば副作用は避けられる。

このように症状がなくても間欠的なステロイド外用薬の塗布を続ける方法をプロアクティブ療法、皮疹が消失したら保湿剤のみにし、再燃時にのみステロイド外用薬を塗布する方法をリアクティブ療法という。

軽症の場合はリアクティブ療法でも症状が抑えられるが、重症の場合は症状が再燃しやすいため、プロアクティブ療法で定期的にステロイド外用薬を使用したほうが予後がよい。

ステロイド外用薬の減量方法

ステロイド外用薬のランクを下げたり、減量したりする時期は、内服薬のテーパリング(少しずつ減らしていくこと)と同じく、主治医の指示どおりに行うことが非常に大切で、それによりステロイド外用薬の使用総量を減らすことが可能となる。

寛解導入時には、かゆみや炎症をすみやかに軽減するためにステロイド外用薬などを用いる。

軽症の場合はしばらく継続することで、なんら徴候や症状がない「寛解」状態となり、ステロイド外用薬を中止できる場合もある。

その場合でも、スキンケア指導などの教育を繰り返し行い、保湿剤による治療を継続する。

肌がつるつる・すべすべになった寛解導入後も、皮膚の下にまだ炎症が残って部分的に症状が持続していたり、頻回に再燃を繰り返したりする場合には、寛解「維持」療法を行う。

寛解維持療法では、ステロイドを減量しつつ、症状の拡大増悪を帽子するため、ステロイド外用薬を連日塗布から間欠塗布へ変更していく。

ステロイド外用薬の間欠塗布

間欠塗布とは、ステロイドを毎日塗るのではなく、1日おき、2日おきなどと間隔をあけて塗ることである。

たとえば、「ステロイド外用薬を週2日」という指示であれば、火曜日と土曜日はステロイド外用薬を塗り、火曜日と土曜日以外の日は保湿剤を塗るというように、ステロイド外用薬を塗る日と保湿剤を塗る日とを交互にする。

間欠塗布により、様子をみながらステロイド外用薬を減量でき、再燃の徴候が現れたら早期にステロイド外用薬を用いて重症化を回避できるため、ステロイド外用薬の総量を減らすことが可能となる。

週2日程度の間欠塗布を行っていて増悪がみられなければ、さらにだんだんとステロイド外用薬を塗布する日の間隔をあけ、それでも再燃しなければステロイド外用薬を中止することが可能となる場合もある。

しかし、減量や中止のタイミングは重症度や症状などで異なるため、医師の指示どおりスキンケアを行うことが重要となる。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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