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ステロイドはなるべく薄く塗る?
公開. 更新. 投稿者: 5,109 ビュー. カテゴリ:アトピー性皮膚炎/ステロイド外用薬.この記事は約4分52秒で読めます.
目次
ステロイドは“なるべく薄く”塗る?実は「たっぷり十分量」が治療の近道

外用ステロイドは、湿疹・アトピー性皮膚炎などの治療に欠かせない薬です。しかし実際の現場では、塗る量が少なすぎて炎症が長引いてしまうケースが今でも非常に多く見られます。
「副作用が怖いから少しだけ塗る」
「薄く延ばせば安心」
「ひとまず部分的に少量だけ…」
このような誤解や不安によって十分な量が塗られないと、むしろ症状が悪化し、治療期間も延びることがわかっています。
ステロイド外用薬は「薄くではなく、十分量をのせる」が正解である理由を、最新のガイドライン・適切な塗り方・安全性の根拠まで含めて勉強していきます。
ステロイドは薄く塗るべき?
多くの医療者も信じている“誤解”
ステロイド外用薬は長年「副作用のイメージ」が強く、患者だけでなく医療従事者の中にも、次のような誤解が残っています。
・できるだけ少なく
・薄く塗り広げる
・急に止めると怖いから少量だけ続ける
さらに、過去には外用の保険請求が最大3gまでしか認められなかった時代もあり、「必要量を出せない」時期がありました。その影響が今も残っているため、処方量自体が少なすぎる場合も多く、十分量を塗れない患者が今も多いのです。
ステロイドは“たっぷり”塗るべき理由
少量塗布は、抗生物質の少量投与と同じ
炎症をしっかり抑えないまま少しずつ塗ると、湿疹は慢性化し、
・黒ずみ(炎症後色素沈着)
・皮膚が厚くゴワゴワする苔癬化
・痒みの慢性化
を引き起こします。
これを、ステロイドの副作用と誤解されることもありますが、実際は治療が不十分だから起きている症状です。
「少量の抗生物質をずっと飲んで耐性菌を作る」 のと同じように、
炎症を抑える量が不足すると治りにくくなる。
逆に、短期間でしっかり炎症を抑える方が早く治り、副作用のリスクも低いのです。
塗布量の“ものさし”FTU(フィンガーチップユニット)
■ 1FTU = 外用薬0.5g
外用薬の塗る量はFTU(Finger Tip Unit)という単位が用いられます。
| FTU | 量 | 塗れる範囲 |
|---|---|---|
| 1FTU | 約0.5g | 大人の手のひら2枚分 |
■ FTUが守られていない現状
・医療者は知っていても説明していない
・説明されても患者が怖くて少量しか塗らない
・処方量が少ないため塗りたくても塗れない
つまり、FTUが普及しても実際に使える量が不足しているケースが多いのです。
部位別・年齢別:必要な塗布量の目安
■ 成人
部位:必要量の目安
・顔全体:2.5 FTU(約1.25g)
・片腕:3 FTU
・片脚:6 FTU
・胸腹部:7 FTU
・背中:7 FTU
・体全体:約20 FTU ≒ 10g
■ 小児(例:5歳)
部位:必要量の目安
・顔:1 FTU
・片腕:1.5 FTU
・片脚:3 FTU
デルモベート(ストロンゲスト)もたっぷり塗っていい?
■ 強いステロイド=危険、ではない
ステロイドはランクが強いほど効果が早く、短期間で終わらせやすいという利点があります。
急性炎症を短期間で鎮める → 早く治療終了
→ 副作用が少ない
■ 使用量の許容範囲は意外と広い
ある指標では、
薬剤ランク:1日最大推奨量
ストロンゲスト(例:デルモベート):成人10g / 小児5gまで
つまり、成人で10g/日(体全体に塗る量)でさえ許容範囲に入ります。
副作用は?安全性の根拠
日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」では、
ベリーストロングクラスで1日5〜10gを3ヶ月使用しても
不可逆的な副作用は生じない
と結論付けられています。
副腎抑制は一過性で可逆的であり、炎症の改善に合わせて減量すれば安全です。
正しい塗り方
擦らず「ペタペタと置くように」「厚くのせる」
×よくある間違い
・薄く延ばす
・強く擦る
・指先でこすり込む
〇正しい方法
・必要量を複数カ所に分けて置く
・撫でるように広げる
・擦り込まない
★ 痛み・かゆみを増やさないポイント
・刺激を与えない。摩擦はかゆみの原因になる。
塗るタイミング:お風呂上がりがベスト
お風呂後は保湿力が高い
・皮膚に水分が多い → 外用薬の伸びが良い
・ステロイドだけでなく保湿剤の効果も上がる
入浴できない時は?
・手と患部を洗う or ぬらす
・水分を補ってから外用薬
保湿剤もたっぷり塗る
ステロイドだけ多くしても、保湿不足だと治療は不十分です。
目安量
| 剤形 | 量(約0.5g) |
|---|---|
| 軟膏・クリーム | 指先〜第一関節 |
| ローション | 1円玉大 |
量の目安
・ティッシュが貼り付く程度
・皮膚がテカる程度
よくある疑問Q&A
Q.たっぷり塗ると副作用が出ませんか?
→ 短期間で終わらせた方が、安全性が高い。
Q.治ったように見えても塗り続けるの?
→ 少し続ける「プロアクティブ療法」が再発予防につながる。
Q.長く塗るほど危険?
→ 重要なのは量の調整と減量のタイミング。
まとめ:薄く塗るより、適量でしっかり治す
| 誤解 | 正解 |
|---|---|
| ステロイドは少量で使う | 十分量を短期間しっかり |
| 薄く塗れば安全 | 薄いと治療が長引き、副作用も増える |
| 強いステロイドは危険 | 強い薬ほど早く治り安全になることも |
最も重要なポイント
ステロイドは「薄く」ではなく「十分量を置くように塗る」。
短期間でしっかり炎症を抑えることが、最も安全な使い方。




