2025年12月2日更新.2,676記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ステロイドはなるべく薄く塗る?

ステロイドは“なるべく薄く”塗る?実は「たっぷり十分量」が治療の近道

外用ステロイドは、湿疹・アトピー性皮膚炎などの治療に欠かせない薬です。しかし実際の現場では、塗る量が少なすぎて炎症が長引いてしまうケースが今でも非常に多く見られます。

「副作用が怖いから少しだけ塗る」
「薄く延ばせば安心」
「ひとまず部分的に少量だけ…」

このような誤解や不安によって十分な量が塗られないと、むしろ症状が悪化し、治療期間も延びることがわかっています。
ステロイド外用薬は「薄くではなく、十分量をのせる」が正解である理由を、最新のガイドライン・適切な塗り方・安全性の根拠まで含めて勉強していきます。

ステロイドは薄く塗るべき?

多くの医療者も信じている“誤解”
ステロイド外用薬は長年「副作用のイメージ」が強く、患者だけでなく医療従事者の中にも、次のような誤解が残っています。

・できるだけ少なく
・薄く塗り広げる
・急に止めると怖いから少量だけ続ける

さらに、過去には外用の保険請求が最大3gまでしか認められなかった時代もあり、「必要量を出せない」時期がありました。その影響が今も残っているため、処方量自体が少なすぎる場合も多く、十分量を塗れない患者が今も多いのです。

ステロイドは“たっぷり”塗るべき理由

少量塗布は、抗生物質の少量投与と同じ
炎症をしっかり抑えないまま少しずつ塗ると、湿疹は慢性化し、
・黒ずみ(炎症後色素沈着)
・皮膚が厚くゴワゴワする苔癬化
・痒みの慢性化
を引き起こします。
これを、ステロイドの副作用と誤解されることもありますが、実際は治療が不十分だから起きている症状です。

「少量の抗生物質をずっと飲んで耐性菌を作る」 のと同じように、
炎症を抑える量が不足すると治りにくくなる。

逆に、短期間でしっかり炎症を抑える方が早く治り、副作用のリスクも低いのです。

塗布量の“ものさし”FTU(フィンガーチップユニット)

■ 1FTU = 外用薬0.5g
外用薬の塗る量はFTU(Finger Tip Unit)という単位が用いられます。

FTU塗れる範囲
1FTU約0.5g大人の手のひら2枚分

■ FTUが守られていない現状
・医療者は知っていても説明していない
・説明されても患者が怖くて少量しか塗らない
・処方量が少ないため塗りたくても塗れない

つまり、FTUが普及しても実際に使える量が不足しているケースが多いのです。

部位別・年齢別:必要な塗布量の目安

■ 成人
部位:必要量の目安
・顔全体:2.5 FTU(約1.25g)
・片腕:3 FTU
・片脚:6 FTU
・胸腹部:7 FTU
・背中:7 FTU
・体全体:約20 FTU ≒ 10g
■ 小児(例:5歳)
部位:必要量の目安
・顔:1 FTU
・片腕:1.5 FTU
・片脚:3 FTU

デルモベート(ストロンゲスト)もたっぷり塗っていい?

■ 強いステロイド=危険、ではない
ステロイドはランクが強いほど効果が早く、短期間で終わらせやすいという利点があります。

急性炎症を短期間で鎮める → 早く治療終了
→ 副作用が少ない

■ 使用量の許容範囲は意外と広い
ある指標では、

薬剤ランク:1日最大推奨量
ストロンゲスト(例:デルモベート):成人10g / 小児5gまで

つまり、成人で10g/日(体全体に塗る量)でさえ許容範囲に入ります。

副作用は?安全性の根拠

日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」では、

ベリーストロングクラスで1日5〜10gを3ヶ月使用しても
不可逆的な副作用は生じない

と結論付けられています。
副腎抑制は一過性で可逆的であり、炎症の改善に合わせて減量すれば安全です。

正しい塗り方

擦らず「ペタペタと置くように」「厚くのせる」

×よくある間違い
・薄く延ばす
・強く擦る
・指先でこすり込む

〇正しい方法
・必要量を複数カ所に分けて置く
・撫でるように広げる
・擦り込まない

★ 痛み・かゆみを増やさないポイント
・刺激を与えない。摩擦はかゆみの原因になる。

塗るタイミング:お風呂上がりがベスト

お風呂後は保湿力が高い
・皮膚に水分が多い → 外用薬の伸びが良い
・ステロイドだけでなく保湿剤の効果も上がる

入浴できない時は?
・手と患部を洗う or ぬらす
・水分を補ってから外用薬

保湿剤もたっぷり塗る

ステロイドだけ多くしても、保湿不足だと治療は不十分です。

目安量

剤形量(約0.5g)
軟膏・クリーム指先〜第一関節
ローション1円玉大

量の目安
・ティッシュが貼り付く程度
・皮膚がテカる程度

よくある疑問Q&A

Q.たっぷり塗ると副作用が出ませんか?
→ 短期間で終わらせた方が、安全性が高い。

Q.治ったように見えても塗り続けるの?
→ 少し続ける「プロアクティブ療法」が再発予防につながる。

Q.長く塗るほど危険?
→ 重要なのは量の調整と減量のタイミング。

まとめ:薄く塗るより、適量でしっかり治す

誤解正解
ステロイドは少量で使う十分量を短期間しっかり
薄く塗れば安全薄いと治療が長引き、副作用も増える
強いステロイドは危険強い薬ほど早く治り安全になることも

最も重要なポイント
ステロイドは「薄く」ではなく「十分量を置くように塗る」。
短期間でしっかり炎症を抑えることが、最も安全な使い方。

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