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ウブレチドは怖い薬か?
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約4分35秒で読めます.
8,830 ビュー. カテゴリ:ウブレチド1日1回以外の用法はダメ?
ウブレチド(ジスチグミン)の用量は、「手術後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難」に対しては1日5mgとなっている1)。
これは2010年3月1日に添付文書が改訂された際に変更となった。
以前は排尿困難に対しても1日3回の投与が可能でした。
1日投与量が多いほど、コリン作動性副作用の重篤症例(死亡例を含む)の推定発現率が高く、また1日5mg投与での死亡症例は認められていないため。
ジスチグミンは、可逆的かつ持続的なコリンエステラーゼ阻害作用を発揮する薬剤であり、排尿困難や重症筋無力症に有効な薬剤として、日本では1968年から臨床で広く使用されている。
しかし、その有用性の一方で、特に、排尿困難の治療で用いた場合に、死に至ることのある重篤な副作用「コリン作動性クリーゼ」(呼吸困難を伴い、人工呼吸を要するような、アセチルコリン過剰状態の急性悪化状態)の発現が認められていることが問題となっていた。
排尿障害治療におけるジスチグミンの有効率は、「有効」以上62.7%、「やや有効」以上72%であったが、この中での5mg投与はそれぞれ60.3%、68.9%と、有効性に関してはほとんど差がないことが判明した。
こうしたことから、安全性確保のため、排尿障害で使用する際の用量が1日5mg投与に限定されることになった。
重症筋無力症の患者以外で「1日1回」以外の処方が来たら疑義照会です。
ちなみに重症筋無力症に対する用法は、
「ジスチグミン臭化物として、通常成人1日5~20mgを1~4回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。」
ただ、重症筋無力症の患者は稀である。
ウブレチドはサリンの仲間?
泌尿器科でよく処方される薬にウブレチドという薬があります。
コリンエステラーゼ阻害薬という分類の薬です。
その名の通り、コリンエステラーゼを阻害してアセチルコリンが分解されるのを防いで、体内のアセチルコリンの量を増やすような薬です。
同じような働きで毒性を持った薬があります。
あの地下鉄サリン事件のサリンです。
怖いですね。
有機リン系農薬やサリンなどの毒ガスは、ジスチグミンと同様に不可逆的にChEを阻害します。
ウブレチドは最近まで1日5~20mgという用量設定だったので、1日3回という用法もありましたが、添付文書が改定されて1日5mgとなり1日1回での処方しかできなくなりました。
サリンは非可逆的コリンエステラーゼ阻害薬ですが、ウブレチドは可逆的にコリンエステラーゼを阻害します。
コリン作動性クリーゼ
ジスチグミンは、コリンエステラーゼを阻害してアセチルコリンの分解を抑制することにより、アセチルコリンの作用を増強させるコリンエステラーゼ阻害剤である。
膀胱平滑筋のムスカリン受容体に対するアセチルコリンの作用を増強させ、膀胱平滑筋の収縮を強めて尿の排出力を高める働きがある。
こうした作用を期待して、主に泌尿器科領域で、神経因性膀胱による排尿障害などに頻用されている。
しかし、ジスチグミンによってコリンエステラーゼが必要以上に阻害されると、アセチルコリンが過剰になってしまう。
急激に悪化すると重篤な呼吸困難を起こして人工呼吸が必要となる。
これがコリン作動性クリーゼである。
コリン作動性クリーゼには、ほかにも痙攣や意識障害、縮瞳などの症状があり、早急に医療機関で集中治療を行わなくてはならない。
コリン作動性クリーゼを予防するためには、腹痛、下痢、嘔吐、悪心、徐脈、発汗、流涎、喀痰排泄といった初期症状の段階で医療機関を受診し、治療を受けることが肝心である。
ウブレチドの下痢は怖い?
前立腺肥大症治療薬のα受容体遮断薬を投与すると、副交感神経が相対的優位になり、蠕動運動が亢進し、下痢が誘発される。
ジスチグミンは、持続的なコリンエステラーゼ阻害薬であり、アセチルコリンが分解されずに過剰になり、副交感神経が優位となって蠕動運動が激しくなり、急性の下痢が起こることがある。
重症化するとコリン作動性クリーゼという状態になり死亡することもある。
また、抗がん剤のイリノテカン塩塩酸水和物(カンプト、トポテシン他)もコリンエステラーゼ阻害作用があり、激しい下痢を起こす。
コリンエステラーゼ阻害薬の特徴
ネオスチグミン臭化物は、コリンエステラーゼを可逆的に阻害することで、アセチルコリンの分解を抑制し、副交感神経を刺激し、消化管運動や胃酸分泌を亢進させます。
重症筋無力症治療薬。
抗コリンエステラーゼ阻害薬。
神経筋接合部のコリンエステラーゼ活性を可逆的に阻害してアセチルコリンの分解を抑制し、間接的にアセチルコリンの作用を増強する。
現在、重症筋無力症の標準的治療は、胸腺摘出とプレドニゾロン投与による免疫療法であり、抗コリンエステラーゼ阻害薬は補助的な使用に限定される。
副作用出現を見逃さないためには、拮抗薬の硫酸アトロピンは併用しないほうが安全である。
参考書籍
1)ウブレチド 添付文書
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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