2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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前立腺肥大症治療薬の一覧

前立腺肥大症治療薬の一覧

分類商品名一般名
α1遮断薬第1世代ミニプレスプラゾシン
エブランチルウラピジル
バソメットテラゾシン
第2世代ハルナールタムスロシン
フリバスナフトピジル
ユリーフシロドシン
ホルモン系薬抗アンドロゲン薬プロスタールクロルマジノン酢酸エステル
パーセリンアリルエストレノール
5α還元酵素阻害薬アボルブデュタステリド
PDE5阻害薬ザルティアタダラフィル
その他アミノ酸製剤パラプロストL-グルタミン酸+L-アラニン+グリシン
植物製剤セルニルトンセルニチンポーレンエキス
エビプロスタットオオウメガサソウエキス+ハコヤナギエキス+セイヨウオキナグサエキス+スギナエキス+精製小麦胚芽油

前立腺肥大症治療薬の分類

排尿困難には、尿が出にくい閉塞症状と尿が近い畜尿症状があります。男性の排尿困難に対する治療の第一選択薬は、α₁遮断薬です。女性の閉塞症状には、非選択的α₁遮断薬のウラピジル(エブランチル)に保険適応があります。

前立腺肥大症とは、尿道を取り囲んでいる前立腺が大きくなって尿道が狭くなり、尿が出にくくなる病気です。
しかし、前立腺肥大症の症状には、「尿が出にくくなる」ばかりでなく、前立腺肥大症の患者の50~70%が過活動膀胱を合併するといわれており、残尿感により「トイレが近くなる」と自覚していることもある。そんな患者が「尿を出しやすくする」と聞いたら、「ただでさえトイレが近いのに…」といった誤解を生じうる。その場合は、頻尿の原因が残尿によるものだと理解していただくため、丁寧に説明する。

前立腺肥大症の患者の尿を出しやすくするためには、狭くなった尿道を広げる必要がある。
尿道の周りの筋肉の緊張をほぐすような形で尿道を広げるか、肥大した前立腺をまた小さくするという方法もある。前立腺を小さくする薬も、前立腺を小さくすることで尿道を広げているので、どちらも「尿道を広げる薬」ではありますが、前立腺肥大症という病名から「前立腺を小さくする薬」と言う方が効きそうな印象は与える。薬が効かなければ、最終的には、大きくなった前立腺を取り除く手術が行われる。

尿道を広げる薬

尿道を広げる薬にはα₁遮断薬とPDE5阻害薬がある。
昔からあるα₁遮断薬のほうが薬価も安く使用頻度は多い。

α₁遮断薬の説明をする前に畜尿と排尿に関わる筋肉の動きについて理解しておいた方が良い。ここは過活動膀胱の理解にもつながる。
尿をためるには、尿をためるための容器(膀胱)を広げて(筋弛緩)、容器の出口(尿道)を閉じる(筋収縮)する必要がある。
尿道回りの筋肉で、外尿道括約筋は随意筋であるため、自分の意志で動かして尿を出すことができる。それ以外の平滑筋は不随意筋であるため自分の意志では動かせない。

α₁受容体遮断薬の作用機序としては、前立腺および膀胱頸部(内尿道括約筋)に分布するα₁受容体を遮断して、前立腺および膀胱頸部の平滑筋を弛緩させ、その結果、尿道内圧が低下し、尿道抵抗を減少させるというもの。

また、前立腺肥大症に対する適応は無いが、ウブレチド、ベサコリン、ワゴスチグミンなどが排尿困難に使われる。ベサコリンはコリン作動薬で、ウブレチドやワゴスチグミンはコリンエステラーゼ阻害薬。アセチルコリンの働きはアセチルコリンと逆なのでアセチルコリン受容体(M₃ムスカリン受容体)を刺激する薬が尿道抵抗を減少させる。

しかし、α₁受容体は全身の様々な場所に存在するため、尿道以外に働く作用、副作用に注意する必要がある。主なものとして血管拡張による血圧低下、めまい・ふらつき・立ちくらみなどがある。

その血管拡張作用から高血圧にも適応があるα₁遮断薬がある。
高血圧のみに適応のあるもの:カルデナリン、デタントール
排尿障害のみに適応のあるもの:ハルナール、フリバス、ユリーフ
高血圧と排尿障害に適応のあるもの:エブランチル、バソメット、ミニプレス

泌尿器科からハルナール、内科からカルデナリンという処方が来たら要注意です。

前立腺は男性にしかなく、女性にはない。そのため前立腺肥大症治療薬は男性にしか処方されない。というわけではない。尿が出にくいという症状は女性でも神経因性膀胱などで生じうる。
前立腺に働く薬は女性には処方されないが、平滑筋に働く薬は女性でも効果があるので処方されることがある。しかし、効能効果の面で「前立腺肥大症に伴う排尿困難」にしか適応の無い薬は使えず、エブランチルのみが「神経因性膀胱に伴う排尿困難」に適応があるので、女性に使うことができる。

ホスホジエステラーゼ5阻害薬

PDE5(ホスホジエステラーゼ5)は、前立腺など下部尿路組織の血管に存在する酵素で、血管の収縮にかかわっている。

PDE5阻害薬は、PDE5を阻害することにより局所のcGMPの分解を阻害し、cGMP 濃度が上昇し平滑筋が弛緩する。尿道・前立腺・膀胱頸部の平滑筋が弛緩し、尿道抵抗の軽減および膀胱の過伸展の改善につながる。→尿の出が良くなる。

ホスホジエステラーゼ5は、主にペニスの海綿体、肺動脈、前立腺や膀胱などに豊富に存在しており、 ホスホジエステラーゼ5阻害薬による血管拡張効果は、これらの器官に限定され、副作用も全身性のものは少ないと考えられる。

ホスホジエステラーゼ5は、勃起の際の血管拡張にも関与しているので、勃起不全治療薬としても使われる。また、肺動脈の血液の流れが悪くなる肺高血圧症の治療薬としても使われる。

α₁受容体のサブタイプ

α₁受容体はα₁A、α₁B、α₁Dのサブタイプが知られており、前立腺組織にはα₁A受容体とα₁D受容体が、血管平滑筋にはα₁B受容体が多く発現している。
前立腺に存在するタイプはα₁A>α₁D>α₁Bの順となり、主にα₁Aが存在する。

そのため、α₁B受容体に比べてα₁A受容体やα₁D受容体への選択性が高い薬剤の方が血圧低下などの副作用が少ないと考えられている。
ユリーフ(シロドシン)は特にα1B受容体に比べてα1A受容体の選択性が高い。

前立腺肥大症の患者さんは、排尿困難(尿の出にくさ)がありますが、それに加えて頻尿などの膀胱刺激症状のある患者がいます。α₁D受容体は膀胱にも多く分布しているので、頻尿などの膀胱刺激症状のある患者さんにはフリバス(ナフトピジル)が適しています。

前立腺を小さくする薬

前立腺の肥大には、男性ホルモン(テストステロン)が関与しており、男性ホルモンを抑える抗アンドロゲン薬や5α還元酵素阻害薬が前立腺肥大症に使われる。

抗アンドロゲン薬も5α還元酵素阻害薬も同じような働きだが、血中テストステロンを低下させない5α還元酵素阻害薬は勃起不全や性欲減退といった副作用を生じにくいというメリットがあります。

男性ホルモンは男性型脱毛症にも影響しており、5α還元酵素阻害薬は脱毛症治療薬のプロペシア(フィナステリド)、ザガーロ(デュタステリド)としても使われています。

5α還元酵素(5αリダクターゼ)にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は皮膚、肝臓などに存在し、Ⅱ型は皮膚、肝臓、前立腺などに存在する。デュタステリドはⅠ型とⅡ型、フィナステリドはⅡ型に作用し、どちらも脱毛症、前立腺肥大症に効果があるが、日本におけるフィナステリドの適応症は脱毛症のみである。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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