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タンナルビンとフェロミアは併用禁忌?
公開. 更新. 投稿者:相互作用/薬物動態.この記事は約3分43秒で読めます.
6,657 ビュー. カテゴリ:止痢薬/整腸薬の併用禁忌
分類 | 商品名 | 一般名 | 併用禁忌 | |
止痢薬 | 腸運動抑制薬 | ロペミン | ロペラミド塩酸塩 | ー |
収斂薬 | タンニン酸アルブミン | タンニン酸アルブミン(タンナルビン) | 経口鉄剤を投与中の患者 | |
吸着薬 | アドソルビン | 天然ケイ酸アルミニウム | ー | |
整腸剤 | ビオフェルミン配合散 | ラクトミン、糖化菌 | ー | |
ビオフェルミン錠剤 | ビフィズス菌 | ー | ||
ラックビー | ビフィズス菌 | ー | ||
ビオスミン | ビフィズス菌、ラクトミン | ー | ||
レベニンS | ビフィズス菌、ラクトミン | ー | ||
ミヤBM | 酪酸菌 | ー | ||
ビオスリー | ラクトミン、酪酸菌、糖化菌 | ー | ||
ビオフェルミンR | 耐性乳酸菌 | ー | ||
ラックビーR | 耐性乳酸菌 | ー | ||
乳糖分解酵素薬 | ガランターゼ | β-ガラクトシダーゼ(アスペルギルス) | ー | |
ミルラクト | β-ガラクトシダーゼ(ペニシリニウム)) | ー | ||
消化管ガス駆除薬 | ガスコン | ジメチコン | ー |
タンナルビンの併用禁忌
タンニン酸アルブミン(タンナルビン)と鉄剤は併用禁忌である。
タンニン酸アルブミンの添付文書の「併用禁忌」には、以下のように書かれている。
薬剤名等
経口鉄剤
硫酸鉄(フェロ・グラデュメット等)
溶性ピロリン酸第二鉄(インクレミンシロップ等)
フマル酸第一鉄(フェルム・カプセル等)
クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア等)臨床症状・措置方法
併用により相互に作用が減弱することがあるので併用をしないこと。機序・危険因子
鉄と結合し、タンニン酸鉄となり、タンニン酸による収れん作用が減弱する。
と、書かれている。
しかし、フェロミアの添付文書をみても、併用禁忌という項目は無い。
併用注意に、
タンニン酸を含有する食品
臨床症状・措置方法 鉄の吸収を阻害するおそれがある。
機序・危険因子 in vitro試験において、タンニン酸と高分子鉄キレートを形成することが報告されている。
と、書かれている。
タンニンなので、お茶と同じ扱い。
一方の添付文書では「併用注意」、もう一方の添付文書では「併用禁忌」という、見逃しがちな併用禁忌事例である。
お互いの効果を打ち消し合ってしまうということで、効果が期待できないということはあるが、さほど患者に健康被害が生じるようなものではないので、スルーしたとしても、重大な悪影響は及ぼさない。
フェロミアでは、タンニン酸を含有する食品やタンニンアルブミン製剤との併用により吸収が阻害されたという実際の症例の報告は無いため、併用禁忌とはなっていない。
ただし、服用に際し、緑茶、コーヒーなどのタンニン酸を含有する飲料を摂取した場合、タンニン酸と鉄が高分子鉄キレートを形成することが報告されている。
in vitro試験において、クエン酸第一鉄ナトリウムとタンニン酸を混合し、分子量10000以下を限外ろ過した結果、4時間後で約45%、24時間後で約50%の高分子鉄キレートを形成したとの報告がある。
一方、鉄欠乏性貧血患者において、フェロミア錠について水と緑茶による服用を検討した結果、鉄吸収と貧血改善効果に影響しないとの報告もある。
また、他の製剤である硫酸第一鉄製剤では、鉄剤とタンニン酸または緑茶を同時服用したところ、鉄吸収率はタンニン酸で約1/2、緑茶で2/3に低下したとの臨床報告がある。
そもそもこのような吸収阻害は服薬時間さえずらせば問題ない。フェロミアとタンナルビンの服薬時間を2時間ほど空ければ吸収に影響はない。
フェロミアとタンナルビンが同じ処方箋上にあったとしても、時間をずらして飲むように指導さえすれば、疑義照会をする必要も無いというわけだ。
個人的には、タンナルビンと鉄剤の併用禁忌は併用注意に落としても良いと思う。
タンニンと渋味
タンニンは口に入れると強い渋味を感じさせる。これはタンニンが、舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して変性させることによると言われている。このようなタンニンによる粘膜の変性作用のことを「収斂作用」と呼ぶ。渋味は厳密には味覚の一種というよりも、このタンパク変性によって生じる痛みや触覚に近い感覚だと言われており、このため渋味のことを収斂味と呼ぶこともある。
タンニンが渋味を感じさせるためにはそのタンニンの水溶性が高く唾液に溶けることが必要である。逆に、縮合タンニンの重合度が増したことなどによって不溶化すると渋味を感じさせなくなる。渋柿を甘くするために干し柿にするのは、この効果を狙ってのことである。
タンニンの収斂作用は粘膜からの分泌を抑える働きがあるので、内服することによって止瀉作用や整腸作用があらわれる。このためタンニンを含む植物には薬用植物として用いられるものが多い。
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