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調剤専用の薬
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤, 漢方薬/生薬.この記事は約3分56秒で読めます.
11,057 ビュー. カテゴリ:ブシ末の用途
最近、漢方薬の処方に追加して「ブシ末」を組み合わせてくる医師が多い。
鎮痛効果の増強を期待して追加しているようだ。
附子末の効能効果で、
「漢方処方の調剤に用いる。」
となっているものと、
「強心、鎮痛、利尿」
などの効能効果が記載されているものがあるので、違いを見てみる。
うちの近隣の医療機関からよく処方されるのは、加工ブシ末「三和生薬」とブシ末(調剤用)「ツムラ」ですが、
加工ブシ末「三和生薬」の効能効果は、「強心、鎮痛、利尿」となっており、ブシ末(調剤用)「ツムラ」の効能効果は「漢方処方の調剤に用いる。」となっている。
他のメーカーのものも調べたが、三和生薬のもの以外は調剤用のようだ。
「漢方処方の調剤に用いる。」となっているものは、単独で処方することはできないわけで、他の漢方薬と混合して調剤するような書き方で処方されてくる。
一方、効能効果が記載されている加工ブシ末「三和生薬」は、単独での処方が可能なのか?と思いきや、用法用量の項目に、「通常、成人1日0.5~1.5gを他剤と配合して服用する。」と記載されており、結局他の製剤と組み合わせて服用しなければならないわけで、単独での処方はできない。
でも、加工ブシ末「三和生薬」には0.5gの分包品があるので、それをそのまま他の漢方薬と一緒に渡して飲んでもらうことも多い。
なにせ、ブシ末の調剤というのは通常業務に支障をきたすレベルに面倒な作業である。
まず、他の漢方製剤と混合するには、袋に入った漢方薬をハサミで切ってバラさなければならない。
そして、分包後には、ブシ末独特の臭いと色が残った分包機を念入りに掃除しなければならない。
あまりメジャーな処方として定着しないことを祈るばかりなのです。
アコニンサン錠
ブシの錠剤タイプとして、アコニンサン錠というのもある。
この薬の適応症は、「鎮痛、強心、利尿」となっており、もちろん調剤用ではない。錠剤だし。
アコニンサン錠9錠(1日量)は、加工ブシ末1.5gに相当する。
生薬だけ処方はダメ?
ブシ末だけでなく、生薬単味での処方は禁止されているものがほとんど。
効能効果や用法用量に、「漢方処方の調剤に用いる。」と記載されている。
ダイオウ末なんかは、単剤で処方されてくることも多いが、保険請求上は他の適応症のある薬に混ぜて調剤すべき。
カマなどの処方と混ぜる必要があるだろう。
調剤用パンビタン末は調剤専用?
薬品名に「調剤用」とくっついている薬がある。
調剤用パンビタン末とか、アスベリンシロップ調剤用とか。
生薬とか漢方薬にも調剤用と付いている薬がある。
この「調剤用」って何だろう。
調剤にしか使えないのか?
医薬品名 | 効能効果 |
---|---|
調剤用 パンビタン末 | 本剤に含まれるビタミン類の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給 (消耗性疾患、妊産婦、授乳婦など) |
アスベリンシロップ「調剤用」2% | 下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難 感冒、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症 |
日本薬局方 ブシ末(調剤用)「ツムラ」 | 漢方処方の調剤に用いる。 |
ツムラの生薬コウジン末(調剤用) | 漢方処方の調剤に用いる。 |
オースギ四苓湯細粒(調剤用) | のどが渇いて水を飲んでも尿量が少なく、はき気、嘔吐、腹痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:暑気あたり、急性胃腸炎、むくみ |
調剤用パンビタン末もアスベリンシロップ調剤用も普通に病名の効能効果が書かれている。
生薬は調剤用にしか効能効果が無いが、漢方薬は(調剤用)とついていても普通に病名の効能効果が書かれている。
JPSの漢方薬には(調剤用)と付いている。
ツムラ、ジュンコウ、マツウラの漢方薬には(医療用)と書かれている。
マツウラの生薬には(調剤用)と書かれていたり、(医療用)と書かれていたり。
オースギの漢方薬では、オースギ四苓湯細粒(調剤用)にしか(調剤用)と付いていない。
オースギ四苓湯細粒の用法用量には以下のように書かれている。
成人1回1.0g、15歳未満7歳以上1回成人の2/3量、7歳未満4歳以上1回成人の1/2量、4歳未満2歳以上1回成人の1/3量、2歳未満1回成人の1/4量、いずれも1日3回食前または食間に水または白湯にて経口投与する。
漢方薬でこのような小児薬用量が書かれているものを見たことが無い。
しかも、小児への適応を持ちながら、「小児等に対する安全性は確立していない。[使用経験が少ない]」と書かれているし。
もしかしたら、包装からバラして調剤できるものが(調剤用)?と思ったが、他の漢方薬にもバラ包装はある。
結局(調剤用)の意味と縛りについては、よくわかりませんが、なにか昔の名残りなのであろう。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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