2025年5月16日更新.2,475記事.

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貧血にメチコバール?

貧血とメチコバール

「メチコバール=神経痛の薬」というイメージを持っている人は多いかもしれませんが、実は悪性貧血の治療にも使われることがあります。ただし、錠剤と注射では効能効果が異なるため、注意が必要です。

悪性貧血とは、ビタミンB₁₂の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の一種で、主に胃粘膜の萎縮や胃全摘などによって「内因子」というビタミンB₁₂の吸収に必要な物質が不足することで起こります。

名前に「悪性」とついていますが、ビタミンB₁₂が発見される前は致死的な経過をたどっていたためにそう呼ばれているだけで、現在ではビタミンB₁₂の補充により治療可能な病気です。

メチコバールの適応の違いに注意

メチコバール錠(経口薬)の効能効果:
 →「末梢性神経障害」のみ。貧血の適応はないため、悪性貧血に使う場合は適応外処方になります。

メチコバール注射液の効能効果:
 →「末梢性神経障害」に加えて、「ビタミンB₁₂欠乏による巨赤芽球性貧血」にも適応があります。
 つまり、貧血目的に使いたい場合は、注射剤が第一選択です。

内因子が無くても、ビタミンB₁₂は受動的に腸管から1〜2%吸収されるため、大量投与すれば経口でも有効という考え方があります。

現在では、胃全摘後などの内因子欠乏例に対しても、メチコバールを1,000〜2,000μg/日程度服用することで、注射に匹敵する効果が得られるという報告もあり、注射が難しい患者に対しては経口投与が選択されることも増えてきました。

巨赤芽球性貧血の特徴

原因:ビタミンB₁₂または葉酸の欠乏
所見:骨髄で巨大かつ未熟な赤血球(巨赤芽球)がみられる
症状:貧血、舌炎、手足のしびれなどの神経症状も出現

特に胃全摘後の患者は、内因子が完全に欠乏するため、ビタミンB₁₂の吸収障害による貧血が必発とされており、長期的なモニタリングと補充療法が欠かせません。

・注射薬は正規の適応あり
・経口薬は大量投与すれば代用可能なケースも
・錠剤を使う場合は、適応外であること、吸収率の違いを理解したうえで、継続的なビタミンB₁₂モニタリングが必要

薬剤師としては、「貧血にメチコバールは効くの?」という質問に対して、「注射なら適応があります」「錠剤でも大量投与なら代替可能ですが、適応外です」と、根拠を持って答えられるようにしておきたいですね。

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