記事
チアジド系とループ利尿薬の併用?
公開. 更新. 投稿者:心不全/肺高血圧症.この記事は約3分0秒で読めます.
6,376 ビュー. カテゴリ:目次
利尿薬の併用意図は?
利尿薬にはいくつかの種類がある。
チアジド(サイアザイド)系利尿薬:フルイトラン
ループ利尿薬:ラシックス、ダイアート
カリウム保持性利尿薬:アルダクトンA、セララ
水利尿薬(バソプレシンV2受容体拮抗薬):サムスカ
炭酸脱水酵素阻害薬:アセタゾラミドもあるけど、利尿薬として用いられることは少ない。
これらの利尿薬が併用して処方されるケースもみられる。
併用されたら、むくみがひどいんだな、程度にしか思いませんでしたがちょっと詳しく勉強してみる。
利尿薬の作用機序
まず、尿の流れと利尿薬の作用機序から。
腎臓での尿産生は、まず糸球体で血液が濾過され原尿100L/日ができます。
それが、近位尿細管→ヘンレループ→遠位尿細管→集合管という流れで再吸収され、最終的に尿1~1.5L/日ができます。
つまり、原尿の99%が尿細管で吸収されます。
この水の吸収はナトリウム吸収によるものなので、その程度に応じてどの部位で水の再吸収の割合が多いかがわかります。
再吸収されるナトリウム%
近位尿細管:70%
ヘンレループ:20~30%
遠位尿細管:5~10%
集合管:1~3%
利尿薬は、サイアザイド系、ループ利尿薬、K保持性利尿薬の3つに大きく分類され、作用機序はそれぞれ異なりますが、Naイオンの血中への再吸収を抑制することで降圧作用を示すという機序は共通しています。
ループ利尿薬の作用機序:ヘンレループの上行脚でのNa+-K+-Cl-共役輸送体阻害
チアジド系利尿薬の作用機序:遠位尿細管でのNa+・Cl-共役輸送体阻害
カリウム保持性利尿薬:集合管でのミネラルコルチコイド受容体阻害
ループ利尿薬とチアジド系利尿薬の併用
ラシックスで利尿効果が弱い場合に、フルイトランが追加されることがある。
ループ利尿薬を長期間使用していると遠位尿細管の機能亢進が生じ,、Na再吸収が亢進して利尿作用が減弱する。
このようなループ利尿薬の抵抗性が生じた症例に対してサイアザイド系利尿薬を併用すると、遠位尿細管のNa+/Cl-共輸送体でのNa再吸収の亢進を阻害することで利尿作用が改善されることが知られている。
ループ利尿薬とカリウム保持性利尿薬の併用
よくみられる処方です。ラシックスとアルダクトンAとか。フルイトランとアルダクトンAとか。
利尿薬は尿を出す薬です。
いっしょにカリウムも排出します。
なので低カリウム血症になりやすい。
その低カリウム血症の予防のために併用されるのがカリウム保持性利尿薬。
カリウム保持性利尿薬は、遠位尿細管のNa-K交換機構を不活性化することで効果を発揮するので、Naは排出されKは保持されるというメカニズム。
水利尿薬とナトリウム排泄型利尿薬の併用
水利尿薬であるサムスカと、ループ利尿薬やチアジド系などナトリウム排泄型利尿薬の併用。
サムスカ自体そんな処方される薬ではないので、あまり見ないかも知れませんが。
サムスカは水だけ出すので、ナトリウムが排泄されない。
高ナトリウム血症予防のためにナトリウム排泄型の利尿薬を併用する必要がある。
ループ利尿薬
フロセミドとトリパミドは、腎ネフロンのヘンレのループ上行脚の太い部分にあるNa+-K+-2Cl-共輸送体の作用を阻害し、Na+とcl-の再吸収を抑制し、循環血液量を減らして利尿作用を現します。
ヘンレのループに作用することから「ループ利尿薬」と呼ばれ、チアジド系利尿薬に比して利尿作用は強いです。
チアジド系利尿薬
ベンゾチアジアジン環を有するチアジド系利尿薬とスルホンアミド基とベンゼン環をもつ非チアジド系利尿薬があります。
標的は腎臓の遠位曲尿細管にあるNa+-cl-共輸送体です。
Na+(ナトリウムイオン)とcl-(塩素イオン)の再吸収を抑制し、血液中の過剰なナトリウムや水分を尿として排池させ、血圧を低下させ
ます。
一方、Na+排泄とともにK+排泄を促進するため、低ナトリウム血症や低カリウム血症が現れることがありますので定期的な電解質検査が必要です。
また、チアジド系利尿薬は血中尿酸値や血糖値を上昇させることがあり、痛風や糖尿病の症状を悪化させるおそれがありますので慎重な投与が必要です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。