2024年12月2日更新.2,476記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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電解質バランスが乱れるとどうなるか?

高ミネラル血症と低ミネラル血症

副作用で、高カリウム血症、高カルシウム血症、高マグネシウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症などをみかけますが、全部ひとくくりにして、なんとなく細胞間のシグナル伝達に異常をきたすんだろうなあ、というイメージしか持っていないので、その違いについて勉強してみる。
電解質といえば、Na、K、Ca、Mg、Cl、Pなど。
体内に存在するミネラルの量としては、Ca、P、K、Mgの順に多い。

電解質異常の初期症状
高カリウム血症:手足の脱力感、吐き気、脈の乱れ
高カルシウム血症:だるさ、手足の脱力感、食欲不振、吐き気、腹痛
高マグネシウム血症:吐き気、口渇、皮膚の赤み、手足の脱力感、眠気、脈が遅くなる
低カリウム血症:手足の脱力感、のどの渇き、尿量増加、便秘、吐き気、脈の乱れ
低カルシウム血症:手指・くちびるのしびれ

初期症状をみても、同じような症状を呈するものが多いので、最終的には血液検査に委ねるしかない。
細胞間のシグナル伝達に異常をきたすと、手足のしびれとか不整脈とか、電解質バランス異常を是正しようとして、下痢や嘔吐などの症状をきたす。

低カリウム血症と高カリウム血症

カリウムというと、高血圧患者が積極的に摂取すべきミネラルとして有名ですが、ナトリウムとカリウムの関係についておさらい。
カリウムはナトリウムと拮抗して、細胞内外のイオンバランスを調整することで浸透圧を一定にする役割があります。
細胞内外のナトリウム-カリウムバランスを調節している機構が細胞膜に存在するナトリウム-カリウムポンプ、ナトリウムチャネル、カリウムチャネルです。

チャネルとポンプについておさらい。
イオンチャネルは滑り台、ポンプはそれに登る階段のようなもの。
階段を登るのにはエネルギーが必要なので、ポンプは能動輸送、滑り台は高さの差で自動的に降りるので、チャネルは受動輸送。

不整脈に用いられるアンカロンはカリウムチャネルブロッカー。

ナトリウムイオンやカリウムイオンのバランスを調整する体内のホルモンとして副腎皮質ホルモンがあります。
副腎皮質ホルモンのうちのミネラルコルチコイド。
ミネラルコルチコイドが過剰になると血圧を上昇させる方向に働き、カリウムが減少する。

低カリウム血症の副作用を起こす薬としては、利尿剤、漢方薬、ステロイドなど。
ステロイドホルモンやステロイドホルモン様作用を有する漢方薬、尿といっしょにミネラルを出す利尿剤で低カリウム血症が起こる理由がわかりました。

高カリウム血症はあまり聞きませんが、カリウム保持性利尿薬やNSAIDsの副作用で起こる可能性がある。
NSAIDsによりプロスタグランジン産生が抑制されレニン・アンジオテンシン分泌低下の結果、腎でのカリウム排泄能が低下し、高カリウム血症になる。

高カリウム血症と低カリウム血症の症状の違いに「のどの渇き、尿量増加、便秘」などがある。
カリウムが欠乏すると、腎臓での尿を濃くするはたらきが低下するため、尿量が増加し、口が渇いてきます。

低カリウム血症と高カリウム血症はどっちが危険か。

数値を使うとわかりやすいと思います。「カリウム」 の組織細胞内の濃度は約150mMあり、細胞外では約5mMと30倍の差があります。そして、川の流れのように 「細胞の中」 から 「外」 に流れ出しているのですが、これをポンプで 「中」 に汲み入れて、細胞の興奮性を抑制しています。
ところが、細胞の 「外」 の 「カリウム」 が増えてくると、「中」 から流れ出す 「カリウム」 が少なくなります。細胞の内外の濃度差が少なくなると、細胞の興奮性が過度に抑制されて、機能しなくなってしまいます。
最初にお話し致しました 「低カリウム血症」 での症状は、5mMの約半分になると出現するとされています。この時は、「カリウム」 を増やす事で対応が出来ますが、増えてしまった時には、減らすのが難しいので、「高カリウム血症」 の方が危険です。

兵庫県薬剤師会-医療における塩化カリウム

高カルシウム血症と低カルシウム血症

高カルシウム血症でも低カルシウム血症でも、症状に乏しいことが多い。
症状に乏しいため、症状が出たときには深刻な状態になっている可能性もあるので、注意。命にかかわる。

カルシウム製剤やビタミンD3製剤など、骨粗鬆症に使われる薬では高カルシウム血症の副作用に注意を要する。
低カルシウム血症の副作用といえばランマークかな。

腎臓病における低カルシウムと高カルシウムについては以下の記事参照
透析患者は低カルシウム?高カルシウム?

高マグネシウム血症と低マグネシウム血症

高マグネシウム血症は酸化マグネシウムの副作用として一時期クローズアップされましたが、基本的に腎機能が正常であれば心配いらないのかと。
マグネシウムを含有する胃腸薬や下剤で注意する。

低マグネシウム血症は血液検査ではわかりにくい。
マグネシウムは細胞の中に多く含まれるので、血液中には割合的に少ないからです。

低栄養状態の人やアルコールを大量に飲んでいる人、がんを患っている人などで「足がつりやすい」」と訴える場合は、低マグネシウム血症の可能性がある。

また、低マグネシウム血症の人が低カリウムを合併する場合も多い。
低カリウム血症の治療を進めてもカリウムがなかなか上がらないという場合、低マグネシウムも一緒に治さないといけないケースがある。

高リン血症と低リン血症

薬の副作用としての高リン血症や低リン血症というのは聞いたことがない。

また次の機会に勉強する。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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