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なぜ低カリウム血症だとジギタリス中毒になりやすいのか?
公開. 更新. 投稿者:心不全/肺高血圧症.この記事は約2分27秒で読めます.
28,072 ビュー. カテゴリ:ジギタリス製剤の作用機序
強心剤の代名詞ともいえるジギタリス製剤の作用機序について。
まず、なぜジギタリス製剤で心収縮力が増大するのか?
通常ヒトの細胞内にはカリウムが多く、ナトリウムが少ない。細胞外(血管内)にはナトリウムが多く、カリウムが少ない。
このバランスを調整しているポンプがあります。
ジギタリス製剤は、ナトリウムとカリウムのバランスを調整しているポンプ(Na+-K+ ATPase)の働きを阻害します。
心筋細胞内Na+はMg2+の存在下に作動するNa+-K+ ATPaseによって細胞外K+と交換され細胞外へ排出されます。
ジギタリスはこのNa+-K+交換系を阻害することで強心作用を発揮します。
上昇した細胞内Na+はK+の代わりにCa2+と交換されることで細胞外に排出され,代わりにCa2+が細胞内に流入することによって心収縮力が増大します。
Na+-K+ ATPaseの働きはジギタリスによって阻害されているため、他のポンプ、Na/Ca交換チャネル(Ca1分子を細胞外へ、Na2分子を細胞内へ交換輸送している)がバランスを取って、細胞内のナトリウムが過剰にならないように機能をストップします。
それにより細胞内カルシウム濃度が上昇します。
心筋細胞はカルシウムによって収縮力を増すので、ジギタリスは細胞内カルシウムを上昇させることによって強心剤として働くわけです。
ジギタリス中毒と高カリウム血症
ジギタリスが効きすぎてしまったらどうなるか?
Na+-K+ ATPaseの働きを阻害しているジギタリスが効きすぎれば、細胞外にカリウムが過剰となる高カリウム血症になります。
細胞外液のカリウムイオンの濃度が基準値以上に高い状態(高カリウム血症)になると、細胞内外のカリウム濃度差が減少して電位差が縮小する状態に陥ります。
この電位差が-60mV近くにまでなった場合、少しの刺激によってナトリウムの流入が起こるようになります。そうすると、刺激伝導系からの信号に関わらず不規則に心筋が収縮するようになり、結果的に不整脈、心室細動、さらには心停止といった状態に陥ります。
低カリウム血症とジギタリス中毒
それで、「なぜ低カリウム血症だとジギタリス中毒になりやすいのか?」についてですが、低カリウム血症の場合、細胞外液のカリウムが少ないので、Na+-K+ ATPaseの働きを弱める方向にバランスがとられます。
もともと弱めているNa+-K+ ATPaseの働きを、ジゴキシンによってさらに阻害してしまえば、Na+-K+ ATPaseの働きが完全停止してしまい、逆に高カリウム血症の方向に行ってしまいジギタリス中毒に陥るという流れ。
また、 マグネシウムが不足するとNa+/K+ATPaseは正常に働くことができなくなるためジギタリス中毒が誘発されることがある。
高カルシウム血症もあると、ジギタリスの作用増強につながりジギタリス中毒を悪化させる。
そのため、低カリウム血症、低マグネシウム血症、高カルシウム血症がジギタリス中毒の危険因子となっている。
ちなみに、高カリウム血症のときにカルチコールというカルシウム製剤が使われることがある。
カルチコールは心筋膜の安定化作用があり、閾膜電位を下げることによって高カリウム血症の中毒作用に抗して心室細動を予防する。
しかし、ジギタリス中毒による高カリウム血症の場合は、高カルシウム血症がリスク因子となるため、カルチコールは使われない。
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