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PPIとH2ブロッカーの違いは?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約3分59秒で読めます.
6,519 ビュー. カテゴリ:PPIとH2ブロッカー
胃酸分泌を促す主たる物質は、①アセチルコリン②ガストリン③ヒスタミン、の3種類である。
①のアセチルコリンは、味覚や嗅覚などを介した、中枢からの刺激によって分泌される。
②のガストリンは、胃内に食物が入るという物理的、化学的刺激によって分泌される。
③のヒスタミンは、夜間や空腹時に分泌されるほか、アセチルコリンやガストリンによっても分泌が促進される。
PPIは、胃酸分泌の最終段階に関与する壁細胞のプロトンポンプを不活性化するため、①~③のすべての物質を介した胃酸分泌を抑える。
一方のH2ブロッカーは、ヒスタミンに拮抗することで、③を介した胃酸分泌を抑える。
一般にPPIは、H2ブロッカーに比べて効果の発現が遅いが、胃内pHの低下を抑制する効果が高く、消化性潰瘍を速やかに治癒させる。
このことから、PPIは消化性潰瘍を治癒する際の第1選択薬とされている。
PPIは、それ自体は阻害作用を持たないプロドラッグだが、弱塩基性物質のため、生体内で唯一強酸性環境にある胃腺の壁細胞の酸分泌側管腔に高濃度に蓄積し、活性化(プロとネーション)を受けてSH基修飾能を持つスルフェナミド体に変化する。
このスルフェナミド体がプロトンポンプを不可逆的に阻害する。
プロトンポンプ阻害薬(PPI) | H2受容体拮抗薬(H₂RA) | |
---|---|---|
主な使用目的 | ・初期治療の第一選択 ・NSAIDsまたは低用量アスピリン投与時の消化性潰瘍再発抑制(オメプラール以外) | ・初期治療でPPIが使用できない場合に選択 ・維持療法の第一選択 |
酸抑制作用 | ・強力 | ・PPIに劣る |
効果発現 | ・十分な効果発現まで時間がかかる ・作用は数日間続く | ・服用後2~3時間で十分な効果を発現する ・作用持続時間は短い |
投与制限 | ・原則、胃潰瘍は8週まで、十二指腸潰瘍は6週まで | ・制限なし |
昼夜の作用の違い | ・昼間に強く作用(食事によって活性化するプロトンポンプを阻害するため) | ・夜間に強く作用(食事の影響を受けない基礎酸分泌に作用するため) |
防御因子増強薬との併用 | ・上乗せ効果なし(単独投与が推奨されている) | ・ラニチジンとテプレノン、シメチジンとエカベトなど、一部の組み合わせで潰瘍治癒の上乗せ効果がある |
代謝・排泄 | ・肝代謝(遺伝子多型により効果に個人差あり) | 腎排泄(腎機能低下時に減量が必要) |
H2ブロッカーのほうが早く効く?
ヒスタミン、ガストリン、アセチルコリンの3種類全てに働くPPIのほうがH2ブロッカーより強力に酸分泌を抑制します。
しかし、効果の発現はH2ブロッカーのほうが早いです。
これはPPIの服用始めには、酸分泌の活発なプロトンポンプにしか作用しないこと、壁細胞内でプロトンポンプのリニューアルが起こり、新しいプロトポンプからの酸分泌が起こることなど、さまざまな要因によって効果発現が遅延するためです。
プロトンポンプとは?
エネルギーを消費して(能動的に)、細胞の中のプロトン(H+)を細胞外に汲み出す膜タンパク質(酵素)。
胃、腎臓、結腸に存在し、胃では胃酸の分泌を担っています。
PPI
プロトンポンプ阻害薬は、胃酸分泌の最終過程で働く酵素(プロトンポンプ)の働きを抑えることにより、強力に胃酸の分泌を抑え潰瘍や炎症を改善する薬です。
酸分泌抑制薬の第一選択薬である。
胃壁細胞のH+分泌の最終段階にあたるプロトンポンプ(H+、K+-ATPase)を特異的に阻害し、非常に強力な酸分泌抑制効果を示す。
H2ブロッカーより胃酸抑制効果が強力である。
治癒率も有意に高く、特に穿孔する危険性の高い深掘れ潰瘍、吐下血を来たした出血性潰瘍、H2ブロッカー抵抗性潰瘍などでは第一選択薬となる。
胃酸の分泌には、ヒスタミン、ガストリン、アセチルコリンという3種類の物質が関与しています。
このうちのヒスタミンが受容体にくっつくのをブロックするのがガスターなどのH2ブロッカーです。
ヒスタミン、ガストリン、アセチルコリンが各受容体に結合すると、最終的にプロトンポンプが活性化されて酸の分泌が起きますが、このプロトンポンプを不活化するのがPPIです。
経口薬は1日1回服用であり、服薬コンプライアンスが得られやすいという利点もある。
H2ブロッカー
名前の通り、H2受容体と拮抗する薬。
胃粘膜壁細胞のヒスタミンH2受容体に拮抗して働き、胃酸の分泌を抑制する。
強力な酸分泌抑制作用を有する。
潰瘍治癒に関する明確な臨床試験データと長年の臨床使用実績が評価されている。
特にヘリコバクター・ピロリ菌陰性潰瘍例で選択されている。
単剤投与で十分な有用性認められている。
治療中止後の再発率は低くないので、再発予防のためには維持療法が必要である。
PPIのほうが強力に胃酸分泌を抑制するが、効果の発現はH2ブロッカーのほうが早い。
保険請求上、PPIの長期処方には制限が設けられているので、H2ブロッカーのほうが長期的に使いやすい。
PPI登場後も引き続き潰瘍治療薬として頻用されている。
胃壁細胞のH2受容体に拮抗することで胃酸分泌を抑制する。
PPIに次ぐ強力な酸分泌抑制効果をもつ。
経口薬・注射薬がそろっており、安全性も良好で用いやすい。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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